英語文学テクストの語学的研究法

著者名
菊池繁夫・上利政彦 編
価格
定価 5,280円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0176-5
仕様
A5判 並製 368頁 C3082
発行年
2016年4月
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内容紹介

従来、文学テクストは文学系の研究者が論じ、言語学者は自然言語にのみ関心を示してきました。そのためこれまでは、英語文学作品を語学的に論じようとする研究者に向けた網羅的な手引書がありませんでした。本書は、そもそも言語から成り立っている文学作品を言語学・文献学・文体論といった「語学的」見地から論じようとする、若き研究者のための語学的文学論ガイドです。

内容的には、特に論文執筆に役立つように、優れた論文(書籍化されたものも含みます)の解題に焦点を当てているのが大きな特徴です。第1部「文学テクストを語学的に読むとは」では文学テクスト研究を通時的・共時的視点から概観しています。歴史的にはイギリスも含むヨーロッパで発達してきた文献学がこの語学的文学論に貢献してきました。20世紀半ばからは一部の言語学者が文学論に参加し始めました。第2部「文学テクストを語学的に読む:論文解題」では、英米・日本で書かれた代表的な論文を、日英の研究者がそれぞれ英語と日本語で詳細に紹介することによって、論文執筆の参考に供する形になっています。第3部「文学テクストの語学的研究の試み」では分析のサンプルとして、実際の論文4点を収めています。第4部「歴史辞書を読む」では、語学的文学研究に必要な辞書について、その情報の読み取り方を論じています。特に現代以前の作品を読む時には必須の辞書の紹介がなされています。
チョーサーやシェイクスピア、ミルトン、ワーズワース、ディケンズ、ジョイス、ヘミングウェイをはじめとする英語文学作品を高いレベルで論じるための指針を示した、革新的な入門書となっています。

目次

まえがき  編者

    第1部 文学テクストを語学的に読むとは

語学的文学論の通時的および共時的広がり  菊池繁夫

    第2部 文学テクストを語学的に読む: 論文解題

イギリスの3人の学者による論文解題について  菊池繁夫

The best of the bunch: Ten articles on literary stylistics  Geoffrey Leech

A sample of memorable articles on stylistics and text analysis from the past fi fty years:
A personal selection and commentary
  Michael Toolan

Articles relating to stylistics and translation  Jean Boase-Beier

日本の論文でテクストを読む  菊池繁夫

    第3部 文学テクストの語学的研究の試み

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』と2人の歩くキャンドル  菊池繁夫

詩語の継承と排除  マロリーの用語に関して    上利政彦

モデルとテクスト  『トテル詩選集』翻訳詩から    上利政彦

文学テクストの重層性  『失楽園』最終部について    上利政彦

    第4部 歴史辞書を読む

語学研究における辞書の役割  初期の英語辞書を中心にして    和田 章

 索 引

著者紹介

(* は編者)

菊池繁夫*(きくち しげお)
関西外国語大学教授.近代英語協会会長.Harvard 大学(言語学科)Fulbright 客員研究員(Fulbright Program 1998-1999)
専門:英語文体論,文学語用論
主要業績:Essays on English Literary Discourse: Medieval and Modern (The Philologia Association, 2007); Katie Wales『英語文体論辞典』(共訳,三省堂,2000)

上利政彦*(あがり まさひこ)
佐賀大学名誉教授.Cambridge 大学 Robinson College Bye-Fellow(1977- )
専門:ミルトンとルネサンス文芸論
主要業績:Formula, Rhetoric and the Word  Studies in Milton’s Epic Style (Peter Lang, 1996); Inversion in Milton’s Poetry (Peter Lang, 2001);『 トテル詩選集 歌とソネット 1557』(訳,九州大学出版会,2010); Archaism in Tottel’s Songes and Sonettes(渓水社,2011)

和田 章(わだ あきら)
山口大学名誉教授
専門:英語学
主要業績:中島文雄・忍足欣四郎(共編)『岩波新英和辞典』(編集協力,岩波書店,1981); ‘Some specimens of divided usage in Thomas Deloney’s English’. In: Imahayashi, O, Nakao, Y and Ogura, M(eds)Aspects of the History of English Language and Literature (Peter Lang, 2010)

Geffrey Leech ( -2014)
Lancaster 大学 Linguistics and English Language 学科 Research Professor Emeritus, British Academy フェロー,Academia Europaea 会員,British National Corpus の創始者のひとり
専門:English grammar, semantics, pragmatics, corpus linguistics, stylistics
主要業績:Style in Fiction (M Shortと共著, Longman, 1981); A Comprehensive Grammar of the English Language (R Quirk, S Greenbaum, J Svartvikと共著, Longman, 1985)

Michael Toolan
Birmingham 大学 English Language and Applied Linguistics 学科教授.Journal of Literary Semantics 編集長
専門:stylistics, narrative studies, critical discourse analysis
主要業績:Narrative: A Critical Linguistic Introduction (Routledge, 2001); Total Speech: An Integrational Linguistic Approach to Language (Duke University Press, 1996)

Jean Boase-Beier
East Anglia 大学 Literature, Drama and Creative Writing 学科 Emeritus Professor.同大学の MA in Literary Translation を創設.Visible Poets series(Arc Publications)の編集委員
専門:translation, style and poetry(特にHolocaust poetry の翻訳)
主要業績:A Critical Introduction to Translation Studies (Bloomsbury, 2011); Translating the Poetry of the Holocaust (Bloomsbury, 2015)

書評

 文体論研究』第63号(2017年3月) 評者:鈴木章能(長崎大学教授)

その他

 訂 正(2016年4月15日初版発行分)








312頁13行目

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