エリザベス朝史劇と国家表象 演劇はイングランドをどう描いたか

著者名
佐野隆弥
価格
定価 6,380円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0148-2
仕様
A5判 上製 378頁 C3098
発行年
2015年2月
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内容紹介

ヘンリー8世からエリザベス1世そしてジェイムズ1世が統治した初期近代は、イングランドが近代的国家体制の構築に向かう時期に当たる。イングランド国教会の設立に代表される政治的・宗教的言説流通の中で、国家意識の急激な高まりは多くの年代記とイングランド史劇を中心とする歴史劇を生み出した。本書は、16世紀初頭から1642年の劇場閉鎖までの時期に創作された50編ばかりの全歴史劇を対象に、個別のイングランド史劇に描き込まれた国家表象(イングランド表象)の有りようを時系列に沿って網羅的に記述した、演劇史研究である。エリザベス朝史劇が初期近代イングランドに固有のテクストであり、その固有性・独自性の一端が各作品に描き込まれた国家表象の検証から解明可能であるとの問題意識のもと、史劇成立の要因における宗教改革をめぐる問題系の重要性を指摘する。本書は、エリザベス朝史劇に関する本邦初の包括的・体系的研究書である。

目次

 凡 例
 
序 章 
 
 第一節 本書の目的と方法
 第二節 イングランド史劇論批評史
 第三節 国家表象の視座とその位置づけ
 
第一章 歴史劇の祖型あるいは黎明期の歴史劇
  一六世紀初期・中期のインタールードとイングランド表象  

 
 第一節 『寛仁』・『騎士アルビオン』・『三階級の諷刺』  モラル・インタールード
 第二節 『ジョン王』と『国家』  新教・旧教からのプロパガンダ
 第三節 『ゴーボダック』  初の本格的歴史劇
 
第二章 セネカ流歴史劇と英雄劇的イングランド史劇
 
 第一節 セネカ流歴史劇
 第二節 『リカルドゥス・テルティウス』  アカデミズムのイングランド史劇
 第三節 『リチャード三世の真の悲劇』  女王一座のイングランド史劇
 第四節 『リチャード三世』  イングランド史劇なのか悲劇なのか
 第五節 『アーサーの悲運』と『ロクライン』  セネカ流歴史劇の変奏
 第六節 英雄劇的イングランド史劇
 第七節 『ヘンリー五世の名高き勝利』  発達途上のイングランド史劇
 第八節 『エドワード三世』  百年戦争を扱うイングランド史劇
 
第三章 王権と教皇権とイングランド
  『ジョン王の乱世』と『ジョン王』  

 
 第一節 『ジョン王の乱世』  正統王の統べるイングランド
 第二節 『ジョン王』  宙吊りのイングランド
 
第四章 弱き王たちの王国
  『ヘンリー六世』と『エドワード二世』におけるイングランド  

 
 第一節 『ヘンリー六世・第一部』  権力闘争による自己崩壊
 第二節 『ヘンリー六世・第二部』  民衆暴動とクーデター
 第三節 『ヘンリー六世・第三部』  薔薇戦争の不安定な動乱の世界
 第四節 『エドワード二世』  歴史的実体を欠くイングランド
 
第五章 一五九〇年代前半期における民衆暴動表象の展開
  反乱暴動劇を中心に  

 
 第一節 一五九〇年代における民衆暴動表象
 第二節 流通する貧農イデオロギーと起点としての『ヘンリー六世・第二部』
 第三節 民衆暴動表象における重心移動  『ジャック・ストロー』と『サー・トマス・モア』
 第四節 消える民衆暴動表象  『トマス・オヴ・ウッドストック』と『エドワード二世』
 第五節 パロディ化される民衆暴動表象  一五九〇年代後半期以降
 
第六章 一五九〇年代前半期のその他の歴史劇
  『エドワード一世』と『エドマンド剛勇王あるいは戦が皆を友人とす』  

 
 第一節 『エドワード一世』  イングランド表象(開幕部)と理想的国家像の構築
 第二節 『エドワード一世』  ウェールズ表象と民族意識
 第三節 『エドワード一世』  スコットランド表象と国家独立主義
 第四節 『エドワード一世』  スペイン表象と反スペイン感情
 第五節 『エドワード一世』  イングランド表象(終幕部)と理想的国家像の瓦解
 第六節 『エドマンド剛勇王あるいは戦が皆を友人とす』  アングロ・サクソン時代に取材した歴史劇
 
第七章 シェイクスピアの第二・四部作
  近代的国家表象を求めて  

 
 第一節 『リチャード二世』  国王の身体の二重性神話の瓦解
 第二節 『ヘンリー四世』  近代性をめぐるイングランド史劇
 第三節 『ヘンリー五世』  近代的国家表象の幻想とその解体
 
第八章 ロマンス化するイングランド史劇
  『サー・ジョン・オールドカスル・第一部』と『エドワード四世』  

 
 第一節 『サー・ジョン・オールドカスル・第一部』  伝記的イングランド史劇
 第二節 『エドワード四世』  センティメンタルなイングランド史劇
 
第九章 『ヘンリー八世』への道
  一七世紀初頭におけるイングランド史劇の展開  

 
 第一節 『ヘンリー八世』の創作をめぐって
 第二節 王朝の交替とイングランド史劇の変容
 第三節 『クロムウェル卿トマス』  盛者必衰の伝記劇
 第四節 劇作家の歴史認識をめぐって
 第五節 一七世紀初頭のイングランド史劇
 第六節 『私を見れば分かるはず』  『ヘンリー八世』に先行するヘンリー八世劇
 第七節 『ヘンリー八世』への水脈
 
第一〇章 ジェイムズ朝中・後期とチャールズ朝の歴史劇
 
 第一節 ジェイムズ朝中期の歴史劇
 第二節 『マーリンの誕生』  ブリトン対サクソンの歴史劇
 第三節 『ヘンリー八世』  国王の恒常的身体表象
 第四節 ジェイムズ朝後期とチャールズ朝のイングランド史劇
 第五節 『サフォーク公爵夫人』  メロドラマ的イングランド史劇
 第六節 『チェス・ゲーム』  イエズス会が主役の諷刺劇
 第七節 『ジョン王とマティルダ』  ジョン王の情欲をめぐるイングランド史劇
 第八節 『パーキン・ウォーベック』  イングランド史劇復活の試み
 
結 章
 
 歴史劇年表
 関連歴史年表
 あとがき
 参考文献
 索 引

著者紹介

佐野隆弥(さの たかや)
 
京都市生。博士(文学)(筑波大学)。福岡教育大学等を経て、現在筑波大学人文社会系教授。
 
共著書に
『エリザベス朝演劇と検閲』(英宝社、1996 年)、
『エリザベス朝の復讐悲劇』(英宝社、1997 年)、
『シェイクスピアを読み直す』(研究社、2001 年)、
『シェイクスピア 世紀を超えて』(研究社、2002 年)、
『シェイクスピアとその時代を読む』(研究社、2007 年)、
『シェイクスピアと演劇文化』(研究社、2012 年)など。

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