生命の倫理2 優生学の時代を越えて

著者名
山崎喜代子 編
価格
定価 3,300円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-87378-963-7
仕様
A5判 並製 352頁 C3012
発行年
2008年4月
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内容紹介

20世紀優生学は,科学が差別思想に取り込まれた早生の生命倫理学であった。本書は『生命の倫理――その規範を動かすもの――』に引き続き,優生学とその政策を,諸科学・各国優生学・女性・衛生安全思想といった多様な切り口で分析するものである。さらに優生学時代を確実に乗り越えた,精神医学・胎児診断・臨床試験倫理など現代医療倫理の構築を試みる。

目次

はしがき……………………………………………………………山崎喜代子
第一部 優生学を支えた科学の潮流
第一章 社会ダーウィニズムとは何だったのか
…………………北垣 徹
      ――十九世紀後半におけるフランスの事例――  
  はじめに
  一 社会ダーウィニズムをめぐる混乱
  二 社会ダーウィニズムについての先行研究
  三 「社会ダーウィニズム」という用語
  四 社会ダーウィニズムの諸類型
  五 社会ダーウィニズムからの離反
  むすびにかえて
第二章 米国優生学の開拓者 ダヴェンポートと遺伝学……山崎喜代子
  はじめに
  一 栄光への助走
  二 メンデル遺伝学との出会い
  三 実験進化ステーション設立へ
  四 優生学記録局設立へ
  五 ダヴェンポートを支えた繁殖育種学
  六 米国遺伝学の進歩に取り残されるダヴェンポート
  おわりに
第三章 人種主義に利用される科学…………………K・J・シャフナー
      ――米国における優生学――  
  はじめに
  一 十九世紀の「科学的」人種主義――人種の多元発生説と分類体系――  
  二 優生学とのつながりを持つ人種主義の団体
  三 出版物における人種主義
  四 人種主義「科学」の政治的勝利
  おわりに
第二部 優生学の時代とその社会
第四章 優生学時代の女性
……………………………K・J・シャフナー
  はじめに
  一 家庭を改善する――公衆衛生とコンテスト―― 
  二 「精神薄弱者」を鑑定し、管理する――フィールドワークと家族研究――  
  三 精神薄弱者の急激な流入をせき止める――移民制限法と知能テスト――  
  四 人種を改良する――母となることと結婚することを制限する――  
  おわりに
第五章 ナチズムにおける人間改良計画…………………………河島幸夫
      ――《レーベンスボルン》(生命の泉)を中心に――  
  はじめに
  一 進化論・社会ダーウィニズム・優生学
  二 ナチズムの世界観と人種思想
  三 《レーベンスボルン》の創設と活動(一九三五―一九三九年)
  四 戦時下のドイツ占領地域における《レーベンスボルン》(一九三九―一九四五年)
  五 《レーベンスボルン》の終幕
  おわりに
第六章 スウェーデンにおける福祉国家建設と優生政策………山本裕子
  はじめに
  一 スウェーデンと優生政策
  二 民主的福祉国家の形成と優生政策の蜜月
  おわりに
第七章 近代日本の衛生思想成立過程における優生思想………中馬充子
  はじめに
  一 近代的防疫行政と隔離――「不潔」の発見――  
  二 大日本私立衛生會の功罪――伝染病研究支援と「不具」の発見――  
  三 衛生思想と優生思想――民族強化の道程――  
  おわりに
第三部 優生学の時代を越えて
第八章 優生の論理と安全の論理
…………………………………堀口良一
  はじめに
  一 二十世紀――優生学の世紀――  
  二 優生学と福祉
  三 安全と優生
  おわりに
第九章 精神医学と生命倫理………………………………………新福尚隆
      ――ナチス精神医学と優生政策の反省――  
  はじめに
  一 技術の対象としての生命倫理、自明の生命倫理
  二 精神医学の歴史から学ぶもの
  三 「生命倫理学」と「生命への無条件の畏敬」
  おわりに
第十章 出生前診断・着床前診断と生命倫理……………………片桐英彦
      ―リスクの視点から考える倫理的な問題――  
  はじめに
  一 出生前診断・着床前診断
  二 出生前診断・着床前診断の問題点
  三 倫理的な問題とは何か
  おわりに
第十一章 診療と研究の境……………………………笹栗俊之・柴田智美
        ――臨床試験の倫理――  
  はじめに
  一 歴史的背景
  二 日本の現状と課題
  三 診療と研究の境
  おわりに

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