自己決定論のゆくえ 哲学・法学・医学の現場から

シリーズ名
熊本大学生命倫理論集2
著者名
高橋隆雄・八幡英幸 編
価格
定価 4,180円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-87378-970-5
仕様
A5判 上製 320頁 C3312
発行年
2008年4月
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内容紹介

自己決定概念は,患者の自律やインフォームド・コンセント,プライバシー概念等の基礎にあり,生命倫理において核となる重要な概念である。しかし,その歴
史的由来について,またその概念の意味するところについて,これまで本巻のように主題的に扱われることはほとんどなかった。ここでの諸論考は,「自己決定
権」や「自律」概念の理解にも大いに役立つはずである。

目次

第I部 哲学の歴史の中で問い直す
第1章 自己決定と行為の選択
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・岡部 勉
      ――不合理・愚かさ・弱さと自己決定――  
        アリストテレスの問題/合理性の要求/価値と目的の生成/
        選択と思慮・思案/不合理・愚かさ・弱さ
第2章 「自己決定」の系譜と展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小柳正弘
        はじめに――自己が自己のことを決定すること/「私」の自己決
        定の系譜と展開/「私たち」の自己決定の系譜/「自己決定」
        のこれから――展望と課題――  
第3章 道徳法則・自律・自己決定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・八幡英幸
      ――カントと生命倫理学,その隔たりから――  
        はじめに/カント倫理学の基本構造――定言命法を中心に――/
        生命倫理原則とその特質――カントとの比較を中心に――/生命
        倫理原則の背景にあるもの/カントと生命倫理学,その隔たり
        から/

第II部 自己決定の本質
第4章 自己決定権と自律的行為の多様性
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・信原幸弘
        自己決定権/直観的な意思決定システム/理性的な意思決定シ
        ステム/
第5章 賭けとしての自己決定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高橋隆雄
        はじめに/自己決定と賭け/医療の場での賭けと手続的正義/
        賭けと自由/おわりに
第6章 医療における自己決定論の盲点・・・・・・・・・・・・・・北村俊則・北村總子
      ――精神科医療のなかで――  
        精神科医療における患者の自己決定と強制医療/衝動制御困難
        と治療同意判断能力/今後に向けて

第III部 自己決定と法
第7章 法的観点から見た,自己決定
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・稲葉一人
        はじめに/自己決定における,「決定」するものとは/自己決定
        に関する「人格的利益説」と「一般的行為自由説」/自己決定の
        説明・同意原則との関係/自己決定と自己責任との関係/事前の
        意思の尊重の制度がない/一般臨床-判例に見るインフォームド・
        コンセント――診療における情報の開示の基準――/研究分野――  
        倫理指針やガイドラインに見る,自己決定とインフォームド・コン
        セント―/まとめ
第8章 プライバシ―ーと自己決定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・奥田純一郎
      ――ヒト胚試料の法的地位を手がかりに――  
        はじめに/問題状況――ヒト胚試料を用いた研究の何が問題なの
        か?――/プライバシーと自己決定の関連性/ヒト胚試料とプラ
        イバシー/結びに代えて

第IV部 自己決定を支える徳・教育
第9章 医療現場で自己決定を実現するために
    必要な10の徳
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・浅井 篤
        はじめに/どうしたら医療現場で自己決定が実現されるのか――  
        関係者に求められる徳――/我々はどうしたら有徳な存在になれる
        のか
第10章 Self-determination and informed choice・・・・・・・・・・・・・・・Darryl Macer
        Empowerment of citizens/Global calls for ethics education/
        Bioethical maturity/Empowering citizens to be decision-makers/
        Conclusions
 [抄訳] 自己決定とインフォームド・チョイス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・加藤佐和 訳

第V部 専門職と自律
第11章 専門職の自律性
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・田中朋弘
      ――医師とその専門職集団の関係について―― 
        はじめに/医師の「自律性」をめぐる三つの事例/専門職の自律
        性/個人の規範と集団の規範/結び
第12章 看護という組織における自律・・・・森田敏子・前田ひとみ・岩本テルヨ
      ――患者・看護師にとっての自律とは――  
        はじめに/看護という組織における自律――看護の自律を阻害して
        きたもの――/看護学教育における自律――看護の専門職業人とし
        ての教育と倫理――/看護という組織の自律への模索――アドボカ
        シーは新しい看護の役割に成り得るか――/おわりに

第VI部 アメリカとドイツの生命倫理と自己決定
第13章 アメリカ生命倫理における自己決定概念の系譜
・・・・・・香川知晶
      ―人格の尊重,自律,プライバシーの権利――  
        はじめに――バイオエシックスのハプニング性――/バイオエシック
        ス生成期の問題意識――キャラハン,そしてカスの場合――/バイ
        オエシックスの成立――人体実験の問題と自己決定の概念――/
        バイオエシックスの展開――クインラン事件とプライバシーの権利――  
第14章 ドイツの医療倫理と自己決定・・・・・・・・・・・・・・・・・・トビアス・バウアー
      ――ドイツにおける臨死介助議論を中心に――  
        はじめに/ドイツの憲法における自己決定権/臨死介助の諸形式
        による自己決定/ドイツの臨死介助論議における自己決定/おわ
        りに

その他

熊本大学生命倫理論集
日本の生命倫理 自己決定論のゆくえ 生命という価値 医療の本質と変容
学術図書刊行助成

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