ヘルス・コミュニケーション 改訂版 これからの医療者の必須技術

著者名
ピーター・G. ノートハウス,ローレル・L. ノートハウス/萩原明人 訳
価格
定価 4,180円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0016-4
仕様
A5判 並製 360頁 C3047
発行年
2010年5月
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内容紹介

 本書はHealth Communication, Strategies for Health Professionals, 第3版の全訳である。米国やわが国では,本書の初版および第2版の出版以来,医療は大きく変化してきた。初版が出版された1980年代の中頃,米国での医療に関する議論の多くは診断群別包括支払制度(DRG)や医療費抑制の方法に関するものだった。1990年代初頭以降は,DRGは当然のものとして受け入れられ,議論の中心は伸び続ける医療費の抑制策へと移っていった。米国政府によって新たにまとめられた医療改革の方策が失敗に終わった後は,議論の中心はマネジド・ケアの役割やそのメリット・デメリットに移っている。わが国でも,米国と同様,DPCの導入や,医療費の抑制に関する様々な取り組みが行われている。
 以上のように,米国やわが国で,医療は劇的に変化したが,効果的なコミュニケーションこそが医療のあらゆる局面で最も大切だという事実は変わっていない。むしろ,医療コミュニケーションの重要性は増しているようにすら見受けられる。
 本書は医療現場で生起するコミュニケーションについて解説し,医療従事者が,患者,家族あるいは他の医療従事者とのコミュニケーションを改善するうえで役立つ,理論に基づいた技法を伝授することを目的に書かれている。第3版では,新たに,第9章「異文化間コミュニケーションと医療」が追加され,異文化コミュニケーションに関する諸問題が論じられている。また,従来からある1~8章についても,最新の研究知見を大幅に取り込み,内容が補強されている。本書は医療系大学における医療コミュニケーション学の教科書や,患者や同僚とのコミュニケーション問題に関心のある医師,看護職,その他の医療者一般にとっての有益な実用書・研修用教材になると思われる。

目次

 原著第2版訳者まえがき
 原著第3版訳者まえがき
 序文
 謝辞
 
第1章 ヘルス・コミュニケーション序論
 
  1. コミュニケーションの定義
      コミュニケーション
      ヒューマン・コミュニケーション
      ヘルス・コミュニケーション
  2. ヒューマン・コミュニケーションに関する基本的前提
      ヒューマン・コミュニケーションはプロセスである
      ヒューマン・コミュニケーションは相互交流的である
      ヒューマン・コミュニケーションは多面的である
  3. コミュニケーション・モデル
      Shannon-Weaverモデル
      SMCRモデル
      Learyモデル
  4. 健康関連モデル
      治療モデル
      健康信念モデル
      Kingの相互作用モデル
  5. ヘルス・コミュニケーション・モデル
      人間関係
      交流
      環境
  6. 要約
 

第2章 医療の場におけるコミュニケーションの関連要因
 
  1. 共感
     共感の概念的枠組み
     医療の場における共感の適用
  2. 支配
     医療の場における支配の適用
  3. 信頼
     信頼の概念的枠組み
     医療の場における信頼の適用
  4. 自己開示
     自己開示の概念的枠組み
     医療の場における自己開示の適用
  5. 確認
     確認の概念的枠組み
     医療の場における確認の適用
  6. 要約
 
第3章 医療の人間関係におけるコミュニケーション
 
  1. 医療者と患者の関係
     役割の不確かさ
     責任をめぐる争い
     力の差
     意味合いの違い
  2. 医療者と医療者の関係
     役割ストレス
     医療者間の理解の不足
     自治権をめぐる争い
  3. 医療者と家族の関係
     医療者との限られた接触
     情報の入手
  4. 患者と家族の関係
     家族員の役割の崩壊
     コミュニケーションの中断
  5. 要約
 
第4章 医療の場での非言語コミュニケーション
 
  1. 医療における非言語コミュニケーションの重要性
     非言語コミュニケーションに対する患者の注意深さ
     医療者の非言語コミュニケーションに対する注意
  2. 非言語コミュニケーションの特性
     非言語コミュニケーションの定義
     非言語コミュニケーションの目的
     非言語コミュニケーションに関する誤った通説
  3.  非言語コミュニケーションの種類
     非言語コミュニケーションの動作的側面
     非言語コミュニケーションの距離的側面
     非言語コミュニケーションのパラ言語的側面
     接触:特殊な非言語コミュニケーション
     環境的および身体的要素
  4. 要約
 
第5章 医療の場における面接
 
  1. 面接の定義
  2. 医療の場における面接の形式
     情報の共有を目的とする面接
     治療を目的とする面接
  3. 面接の段階
     準備段階
     開始段階
     調査段階
     終了段階
  4. 面接におけるコミュニケーション技法
     質問
     沈黙
     言い直し
     反映
     明確化
     解釈
  5. 要約
 
第6章 医療における小集団のコミュニケーション
 
  1. 小集団コミュニケーションの定義
  2. 医療集団の種類
  3. 小集団の構成要素
     目標
     規範
     結束
     リーダー行動
     メンバー行動
     治療的要素
  4. 小集団の段階
     適応段階
     対立段階
     結束段階
     稼働段階
     終了段階
  5. 要約
 
第7章 医療の場における対立とコミュニケーション
 
  1. 対立の定義
  2. 対立の種類
     内容の対立
     人間関係の対立
  3. 対立に関する理論的アプローチ
     ゲーム理論
     対立解決理論
  4. 対立に臨む様式
     回避
     競争
     順応
     妥協
     協同
  5. 対立解決へのコミュニケーション・アプローチ
     識別
     細分化
     顔を立てること
  6. 要約
 
第8章 倫理とヘルス・コミュニケーション
 
  1. 生命医学倫理の特性
     生命医学倫理の定義
     ヒポクラテスの伝承と善行
     パターナリズム(父権主義)
     自律
     公正
  2. インフォームド・コンセント:コミュニケーションの問題
     法的根拠
     履行と改良
  3. 正直と真実の告白:コミュニケーションの責任
     概観
     真実の告白への4つのアプローチ
  4. 倫理委員会:倫理的決定のプロセス
     背景
     機能
     原理に基づく解決法対事例に基づく解決法
     倫理委員会におけるコミュニケーション
  5. 要約
 
第9章 異文化間コミュニケーションと医療
 
  1. 異文化間コミュニケーションの定義
  2. 関連する概念
     自民族中心主義
     偏見
  3. 文化の2つの大きな特徴
     個人主義対集団主義
     環境
  4. 異文化間コミュニケーションの要素
     認識
     言語コミュニケーション
     非言語コミュニケーション
  5. 効果的な異文化間コミュニケーションの方法
     対人関係に及ぼす文化の相互交流的な影響
     文化に配慮した治療
     文化的な資源
  6. 要約
 
 参考文献
 索引

著者紹介

<訳者>
萩原明人(はぎはら あきひと)
九州大学大学院医学研究院教授。

学術図書刊行助成

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