有機分子の分子軌道計算と活用分子軌道法を用いた有機分子の性質と基本的反応の計算と活用

著者名
染川賢一
価格
定価 3,400 円 (税別)
ISBN
978-4-7985-0089-8
仕様
B5判 並製 218頁 C3043
発行年
2013年3月
その他
SCIGRESS MO Compact 限定版 および 解析例 付
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内容紹介

本書では,二原子分子から始めて有機分子の物理化学的性質,化学反応性,分子間相互作用および動的挙動などを段階的に,添付の分子軌道(MO)法のMOPAC計算ソフトを駆使して理解する。パソコン画面上で分子軌道(フロンティア軌道など)の空間的様子や,電子密度の偏り,活性化エネルギー,水素結合エネルギーなどの定量的な情報が得られるので,"分子を見て実感する"ことができる。目次に沿って説明する。
先ず原子や分子の理解の歴史の表を提示し,水素原子と原子軌道,そしてその結合による水素分子の分子軌道の数理的理解からはじめる。次に計算ソフトの機能と分子データの入力法を示し,最も簡単な二原子分子(安定なN2,常磁性のO2,極性なHClなど),有機分子のメタン,エタン,エチレン,アクリロニトリル,ブタジエン,ベンゼン(安定),アニリン,ピリジン,ピロール,シクロブタジエン(不安定),など約20種の基本的分子について構造最適化と出力データ(生成熱(HOF),イオン化エネルギー(IP),フロンティア軌道(HOMOとLUMO)など)の解読と実測値との比較そして利用法を記す。
またn-ブタンの結合軸回転による分子の動きの配座(回転異性体)解析,構造異性体間の熱安定性・反応性の違いの判断法,ブタジエンを例とした光吸収・励起と電子吸収スペクトルの解析,そして有機化学反応と試薬の分類法と,ノーベル化学賞の福井謙一教授のフロンティア軌道論とウッドワード・ホフマン(WH)則を解説する。さらに現代合成化学でもよく利用されているディールス・アルダー(DA)反応の動的(活性化エネルギーと遷移状態構造)解析(シミュレーション)の手順と,酢酸二量体や核酸塩基のアデニン-チミン(A-T)等の水素結合形成の手続き,そして得られるエネルギーと構造データの正確さの評価などを段階的に説明する。DA反応の立体選択性解析の計算例も示す。
また各章問題とその解答例で理解を確実にする。さらに3章から11章の分子軌道データを計算ソフトCD-Rに添付している。
本書の対象は有機化学の基礎を学習した化学系の高専高学年,大学2回生以上である。一方で国際化学オリンピックのシラバスにある1.原子軌道・分子軌道の基礎,2.熱力学,3.有機化学の中の反応,の扱いは,日本では不足している。それらの理解に本書は極めて有効である。さらに自在な分子描画とその反応等のシミュレーション試行は,いろいろな分野の有機化学現象の思考と展開に効果的であろう。有機化学に興味のある幅広い読者の活用も期待される。

目次

はじめに
 
1章 原子および分子の理解の歴史
 
  1.1 有機化学と有機量子化学
  1.2 水素原子のスペクトルとボーアの量子論まで
  演習問題
 
2章 水素原子とシュレーディンガー方程式
 
  2.1 シュレーディンガー方程式
  2.2 水素原子
  2.3 多電子原子
  演習問題
 
3章 二原子分子の分子軌道(MO)法と結合の性質
 
  3.1 水素分子の分子軌道と計算法の概略
  3.2 量子化学計算法の種類とMOPAC
  3.3 MOPACでの分子の入出力と水素分子の分子軌道データ
  3.4 分子の生成熱(Heat of Formation: HOF)等と反応性について
  3.5 等核二原子分子の分子軌道とN2およびO2分子の性質:酸素の磁性と反応性
  3.6 HF分子とHCl分子(極性分子):共有結合におけるイオン性
  3.7 フロンティア軌道(HOMOとLUMO)情報の活用
  演習問題
 
4章 アルカン(飽和炭化水素メタン,ブタンなど)の構造と性質
 
  4.1 メタンの表現
  4.2 エタンの構造と性質
  4.3 n-ブタンのコンフォーメーション(配座)解析
  演習問題
 
5章 エチレンなどπ結合のヒュッケル分子軌道法とMOPACによる取扱い
 
  5.1 原子軌道の重なりにより生成する結合の種類と定義
  5.2 ヒュッケル分子軌道(HMO)法によるπ結合の簡便な取扱い
  5.3 π結合の分子情報(結合次数と電子密度など)
  5.4 HMO法などソフトウェアの使用
  5.5 MOPACでのエチレンの取扱いと出力データ
  演習問題
 
6章 分子軌道データを用いた分子情報の活用と置換基の効果
 
  6.1 結合距離(R),イオン化エネルギー(IP)および生成熱(HOF)の計算の正確さ
  6.2 生成熱(HOF)の性格とブタジエンC4H6異性体の安定性比較などへの活用
  6.3 C4H6構造異性体の比較
  6.4 エチレンおよびブタジエンに対する置換基の効果
  演習問題
 
7章 π電子系の光吸収と電子吸収スペクトルのMO解析
 
  7.1 有機分子の光吸収と電子吸収スペクトル
  7.2 1,3-ブタジエンの励起エネルギーと電子吸収スペクトルのシミュレーション
  演習問題
 
8章 芳香族化合物および複素環化合物の性質と置換基効果
 
  8.1 ベンゼンおよび環状共役化合物の性質
  8.2 ヒュッケル則のHMO法による説明
  8.3 ベンゼンとナフタレンのMOPACでの解析
  8.4 反芳香族化合物の性質のMOPACによる説明
  8.5 芳香族性と反芳香族性の指標
  8.6 ニトロベンゼンとアニリンなどにおける置換基効果
  8.7 ピリジンとピロールなど複素環の性質
  8.8 核酸塩基の性質について
  演習問題
 
9章 有機化学反応の分類とイオン的反応の分子軌道法による理解
 
  9.1 有機反応の分類と軌道相互作用
  9.2 反応試薬の分類と反応性
  9.3 求核置換(SN)反応における両性求核試薬の反応の分子軌道法での理解
  演習問題
 
10章 フロンティア軌道論とウッドワード・ホフマン(WH)則
 
  10.1 フロンティア軌道論とペリ環状反応に対するWH則
  10.2 電子環状反応
  10.3 付加環化反応
  10.4 [4π+2π]付加のディールス・アルダー(DA)反応
  演習問題
 
11章 分子の接近による遷移状態および水素結合の解析
 
  11.1 分子の接近による変化の解析
  11.2 ブタジエンとエチレンとのディールス・アルダー(DA)反応の遷移状態解析
  11.3 シクロペンタジエンと無水マレイン酸のDA反応における立体選択性
  11.4 分子の接近による酢酸(CH3COOH)の水素結合による二量体の解析
  11.5 核酸塩基間水素結合(A-T,G-C)のMOPACでの解法
  演習問題
 
演習問題解答例
 
参考書
 
索引
 
付記  計算化学プログラムMOPACシリーズと添付ソフトMOCOMの使用について

著者紹介

染川賢一(そめかわ けんいち)
1960年 鹿児島県立宮之城高等学校卒業
1964年 鹿児島大学工学部応用化学科卒業
1966年 東京大学大学院工学系研究科修士課程合成化学専攻修了
同  年 鹿児島大学工学部応用化学科助手
1970年 同助教授
1984年 同教授
1991年 同工学部応用化学工学科教授
2007年 鹿児島大学名誉教授

推薦文

 時田澄男 埼玉大学名誉教授
 コンピュータケミストリの分野は,化学を学ぶ者にとって敷居の高い学問という感が否めない。本書は,その敷居を低くして,学部学生の方々が量子化学を理解し,分子軌道法を実際に体験するための格好のテキストである。著者の長年にわたる教育方法の工夫の集大成としての本書は,これから量子化学を学び,定量的な評価の下に有機反応を理解しようとする学生さんにとって,基礎学習だけでなく,論文作成等の応用面でも有益である。化学オリンピック等において,軌道概念の理解は必須のものとなっており,高校の生徒さんや先生方にとっても良い参考書と考える。またこの分野を勉強し直したい社会人にとっても有益であろう。計算化学ソフトのSCIGRESS MO Compact(富士通)の限定版と解析例およびマニュアルが付属しており,自習が容易な点も親切である。

その他

著者によるMO法活用例

Somekawa, Kenichi, Takehiko Ueda (2016) "Molecular simulation of enantioselective intermolecular [2+2] photocycloadditions by a chiral organocatalyst in solution" Tetrahedron, 72(44), pp.7021-7024.
染川賢一・満塩 勝・上田岳彦 (2016)「イソシアナートのウレタン化反応過程におけるエネルギー,立体変化および置換基効果の分子シミュレーション」,『Journal of Computer Chemistry, Japan』, 15(2), pp.32-40.

更新情報
正誤表(2013年4月10日発行初版用)
正誤表(2015年10月30日発行初版2刷用)

学術図書刊行助成

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