森林親和運動としての木育ものづくりの復権と森林化社会の実現

著者名
田口浩継
価格
定価 5,200 円 (税別)
ISBN
978-4-7985-0202-1
仕様
A5判 上製 288頁 C3036
発行年
2017年3月
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内容紹介

産業構造の変化や木の代替物の出現などにより、木の持つ価値や森林の果たす役割の大切さへの関心が失われ、森林と日本人との関係がかつてないほど遠のいてしまった時代を経て、現在は木や森林が我々の生活にもたらす豊かさが再認識されつつある。本書はそんな時代背景のなか、先進地熊本で実践されている「木育」を紹介するものである。

著者らは2007年に任意団体「熊本ものづくり塾」を設立し、さまざまな木育イベントを年間2万人に提供しているほか、木育を担う人材の養成講座を開催し、これまで1,600名余の木育推進員を輩出している。こうした活動を通じて、子どもから大人まで幅広い年代の人々を対象に、木を材料にして手と道具を使ったリアルなモノづくりの体験が広められている。

本書ではこれらの活動を通した中山間地域の森林の再生と現代社会における人間性回復を目指す取り組みが語られる。それは単なる消費者教育や森林保全という問題を越えて、都市に暮らす住民が主体的に関わる森林親和運動として位置付けられるものである。木に対する理解を深め、自分の暮らしと森林の近しい関係を楽しみながら学ぶ場として、この「木育」という森林親和運動が大量生産・大量消費というライフスタイルを見直す契機をもたらし、ひいては木材の利用増進にもつながることが期待される。

目次

序 章 森林に関する問題と関心
 
 第1節 森林問題と人間との関係回復
 第2節 森林と人間の関係性から見た問題構造
  2.1 生活・農業の完全依存期
  2.2 近代産業と戦後復興への活用期
  2.3 林業変動と生活との遊離期
  2.4 林業衰退と生活との隔離期
 第3節 森林化社会の概念
 第4節 森林化社会を目指す運動
  4.1 日本における森林保全運動
  4.2 森林親和運動
 第5節 研究の方法と本書の構成
 
 第1部 森林化社会と森林を取り巻く現状 
 
第1章 森林を取り巻く現状
 
 第1節 カネ・モノを優先した時期(1960年代中期〜1970年代)
  1.1 公社の設立と拡大造林
  1.2 林道網の拡充
  1.3 林業補助金制度の実態
 第2節 カネ・モノをめぐる役割対立期(1980年代)
  2.1 知床問題
  2.2 「森は海の恋人」運動
  2.3 「森林の公益的機能」への主張の転換
 第3節 ヒト・クラシへの着目期(1990年代〜現在)
  3.1 資源がありながら輸入に頼る構造的矛盾
  3.2 森林を守るヒトの視点の欠如
  3.3 生活技術の総合性の欠如
  3.4 自然と共生する力の欠如
 
第2章 木育活動の生成
 
 第1節 北海道木育推進プロジェクト
  1.1 木育の生成の経緯と理念
  1.2 北海道での木育の取組み
 第2節 林野庁の木育
  2.1 木育の生成の経緯と理念
  2.2 木育の位置づけと取組み
  2.3 林野庁における国産材の利用拡大のための木育以外の取組み
 第3節 木育の現状と整理
  3.1 北海道の木育と林野庁の木育の比較
  3.2 木育事業の推移と現状
  3.3 まとめ
 
第3章 木育活動の課題
 
 第1節 児童期の生活体験の不足
  1.1 はじめに
  1.2 調査および調査方法
  1.3 結果および考察
  1.4 おわりに
 第2節 ものづくり体験の不足
  2.1 はじめに
  2.2 熊本県におけるものづくり教育の状況
 第3節 森林環境教育の課題
  3.1 学校教育と森林環境教育
  3.2 児童の環境意識
  3.3 小学校学習指導要領との関連
  3.4 学校教育における課題
  3.5 社会教育における森林環境教育の課題
 
  第2部 森林親和運動としての木育
 
第4章 森林親和運動としての木育の生成と展開
 
 第1節 正統的周辺参加論による木育のモデル化
  1.1 正統的周辺参加論
  1.2 正統的周辺参加論の木育への導入
 第2節 熊本ものづくり塾
  2.1 はじめに
  2.2 熊本ものづくり塾の生成
  2.3 熊本ものづくり塾の主な活動内容
  2.4 主な構成員
  2.5 活動・運営が拡大した要因
  2.6 まとめ
 第3節 くまもとものづくりフェア(子どもの木育)
  3.1 はじめに
  3.2 熊本県におけるものづくり教育の状況
  3.3 生活農業論を導入した木育
  3.4 くまもとものづくりフェアの立ち上げ
  3.5 2010年度からの連携体制
  3.6 まとめ
 第4節 木育推進員養成講座(大人の木育)
  4.1 はじめに
  4.2 木育推進員養成講座の概要(一般市民を対象)
  4.3 くまもと県産木材アドバイザー養成研修(木材・林業関係者を対象)
 第5節 少年自然の家を活用した木育(森林の中での木育)
  5.1 はじめに
  5.2 小学校における木育の必要性
  5.3 少年自然の家を活用した木育カリキュラムの開発
 
第5章 森林親和運動としての木育の成果
 
 第1節 くまもとものづくりフェアなどの成果
  1.1 はじめに
  1.2 調査対象者
  1.3 調査の内容
  1.4 考察
 第2節 子どもを対象とした木育の成果
  2.1 小学生を対象とした木育
  2.2 中学生を対象とした木育
 第3節 木育推進員養成講座の成果
  3.1 社会人を対象とした木育講座
  3.2 大学生を対象とした木育講義
 
第6章 木育運動推進のための資源
 
 第1節 木育用教材の開発
  1.1 はじめに
  1.2 開発の手順
  1.3 掲載内容と活用法
  1.4 テキストの配布と活用
  1.5 おわりに
 第2節 木育用製作題材の開発
  2.1 はじめに
  2.2 製作題材の選定の観点
  2.3 開発した製作題材
 第3節 木育カリキュラムの開発
  3.1 木育推進員養成講座(大人の木育)
  3.2 子どもの木育のカリキュラム開発
  3.3 大人を対象とした木育のカリキュラム開発
 
  第3部 森林化社会における木育の現代的意義
 
第7章 生活農業論を導入した木育
 
 第1節 林業を取り巻く消費者の現状
 第2節 木育への生活農業論の導入
 第3節 生活農業論を導入することによる成果
 
第8章 都市部の住民を対象とした木育
 
 第1節 運動の社会学的位置づけ
 第2節 都市部の住民を対象としたことによる成果
 第3節 対象を高齢者に広げることによる効果
  3.1 長洲町における木育活動
  3.2 介護予防拠点施設でのものづくり教室
  3.3 ものづくりの指導の効果
  3.4 木育の介護予防への効果
 
第9章 木育運動推進のための資源の獲得と拡充
 
 第1節 木育運動推進のための資源
 第2節 先導的担い手の獲得と拡充
 第3節 物的資源の獲得と拡充
 第4節 人的ネットワークの獲得と拡充
 
終 章 森林化社会への展望
 
 第1節 本書の総括
 第2節 森林化社会の展望
 第3節 本書の残された課題
 
 謝 辞
 資 料
 索 引
 
コラム1 里山と私たちのくらし・安全
コラム2 「木を見て森を見ず」でない視点を
コラム3 木材を利用する意義について
コラム4 原体験の大切さ
コラム5 ものづくりが育む「生きる力」
コラム6 ものづくり教育の現代的意義
コラム7 ものづくりの後の掃除で生きる力を育てる
コラム8 木材の特徴を活かした使い方
コラム9 多様な視点で解決策を導く力を

著者紹介

田口浩継(たぐち ひろつぐ)

1983年,鹿児島大学教育学部卒業。
熊本県内の中学校に勤務の後,熊本大学教育学部助手などを経て
2012年より,同大学教育学部教授。博士(公共政策学)。
専門は,技術科教育学・ものづくり教育,授業開発・教授法の研究。

木育と技術科教育やものづくり教育は共通する部分が多く,木育という
言葉が生まれる前から木育に取り組み,2003年度は熊本県伝統工芸館が
主催する伝統工芸師養成木工芸講座を受講。木材や森林に関する知識だけ
でなく,木工の技の習得に努めている。

木育アドバイザリーボードメンバー(林野庁委嘱:活木活木森ネットワーク,
日本グッド・トイ委員会,電通,木づかい子育てネットワーク)。熊本もの
づくり塾・顧問として,年間2万人にものづくりの場を提供,木育を広める
人材育成講座で8年間に約1,600名の木育推進員を養成。その他,日本産業
技術教育学会理事,技術・家庭学習指導要領作成協力者(文部科学省),
東京書籍「技術・家庭科教科書」監修代表などを歴任。

著書に,『新技術科教育総論』(2009年,日本産業技術教育学会,共同執筆),
暮らしの視点からの地方再生』(2015年,九州大学出版会,共同執筆)ほか。

学術図書刊行助成

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