「教育」する共同体 ウズベキスタンにおける国民形成と地域社会教育

著者名
河野明日香
価格
定価 4,620円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0026-3
仕様
A5判 上製 252頁 C3037
発行年
2010年9月
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内容紹介

ソ連からの独立後にウズベキスタンで復活した,イスラームの伝統に則った地域共同体=マハッラ。若き女性研究者が現地社会に溶け込み,新国家建設に際してマハッラが果たす役割と課題を探る。

目次

 凡例
 ウズベキスタンおよび周辺諸国地図
 
序章 中央アジア地域教育研究の課題
 第1節 これまでの中央アジア地域教育研究とその課題
 第2節 中央アジアにおける地域社会教育研究への挑戦
  (1) 地域社会教育論とマハッラ
  (2) 開発と社会教育の接点
 第3節 本研究における「マハッラ」と研究目的
  (1) 「マハッラ」とはなにか?
  (2) 研究の目的と意義
  (3) 研究の方法と本書の構成
 
第1章 ウズベキスタンにおけるマハッラとその教育的側面の歴史的変遷
 第1節 ウズベキスタンにおけるマハッラの前史
  (1) 中央アジア,ウズベキスタンの都市構造とマハッラ
  (2) マハッラ役職者の教育的役割と人々の生活
  (3) 都市の教育的機関とマハッラ
 第2節 19世紀末から20世紀初頭のマハッラ
  (1) 民族別,宗教別,職業別に構成されたマハッラ
  (2) マハッラの共同施設における教育的活動
 第3節 帝政ロシア期におけるマハッラとロシア帝国のマハッラ政策
  (1) マハッラ内におけるノンフォーマル・エデュケーションと帝政ロシアによる近代教育拡充政策
  (2) 近代学校とマハッラ
 第4節 ソ連期におけるマハッラとソ連当局のマハッラ政策
  (1) ソビエト国家建設のためのマハッラ
  (2) ソ連期における学校教育の整備とマハッラ
  (3) ソ連期のマハッラにおける教育的活動と政治的プロパガンダ
 第5節 独立後のウズベキスタンにおけるマハッラとウズベキスタン政府のマハッラ復興政策40
  (1) 政府のマハッラ復興キャンペーン    2003年「マハッラの年」政策
  (2) マハッラ関連団体の設置目的と活動実態    マハッラ基金の創設
 小結
 
第2章 独立後におけるマハッラの構造と成人の学び
 第1節 国家によるマハッラの制度化
  (1) マハッラの制度化の歴史的展開
  (2) 独立後の国家によるマハッラの法的行政的整備
  (3) 現代のマハッラの構造と機能    マハッラ・家庭・学校・モスクの相互関係
 第2節 行政の末端機関としてのマハッラの諸活動
  (1) マハッラ運営委員会による住民管理システムと社会的弱者支援
  (2) 住民の学習権と地域社会における社会教育活動
 第3節 マハッラ住民による地域社会教育活動と女性支援
  (1) マハッラにおける女性支援
  (2) マハッラ内施設におけるスポーツ振興活動
 小結   マハッラにおける成人の学びをどうとらえるか  
 
第3章 マハッラにおける子どもの社会化と文化継承
 第1節 ウズベキスタンのマハッラにおける子どもの生活
  (1) 帝政ロシア期(1865~1917年まで)
  (2) ソ連期(1917~1991年)
  (3) 独立後(1991年~)
 第2節 子どもの成長儀礼とイスラーム
  (1) 割礼の儀式
  (2) 子どもの成長儀礼とマハッラ
 第3節 マハッラ内の祭礼・儀礼における社会性の習得
  (1) 婚礼,葬儀とマハッラ
  (2) ラマザンとマハッラ    タシケント市内の家庭におけるフィールドワークから
  (3) 宗教儀礼とマハッラ    2つのハイトにおけるケリン・サロムの観察から
 小結
 
第4章 学校教育におけるマハッラ
 第1節 ウズベキスタンの学校制度と独立後の教育改革
  (1) 旧11年制から12年制義務教育への転換
  (2) 「人材養成システムの国家プログラム」による教育改革
 第2節 学校教育におけるマハッラ導入の政治的社会的背景    「強い国家から強い市民社会へ」,社会基盤としてのマハッラ   
 第3節 学校教育におけるマハッラ像と理念
  (1) ウズベキスタンの国家スタンダード    ウズベキスタンの継続教育基準の国家システム
  (2) 「成熟した世代育成における家族,マハッラ,学校の連携」コンセプト
 第4節 学校教育におけるマハッラ導入実態とその意義
  (1) 授業におけるマハッラ
  (2) 学校行事におけるマハッラ    春の祭り「ナウルーズ」に関する行事
  (3) ウズベキスタンにおける「学社連携・融合」
 小結
 
第5章 マハッラと学校の連携による「市民」意識の育成
 第1節 独立後のウズベキスタンと若者の「市民」意識の育成
  (1) 独立後のウズベキスタンにおける「市民」
  (2) 教育政策における「市民」の位置づけ
 第2節 ウズベキスタンの学校教育における「市民」意識の育成
 第3節 マハッラによる「市民」意識の育成
  (1) 「追悼の日」の学校行事におけるマハッラと学校の連携
  (2) マハッラ内行事と「市民」意識の育成
 小結
 
第6章 諸機関の連携活動による青年教育    マハッラ・NGO・国際機関の事例から   
 第1節 ウズベキスタンにおけるNGO,青年団体の位置づけとその活動
  (1) ウズベキスタンにおけるNGO,青年団体とその動向
  (2) NANNOUzと他機関の連携事例
 第2節 諸機関とマハッラの連携活動
  (1) マハッラにおける青年教育
  (2) 国際NGO「SOS Children’s Village」とマハッラの連携活動
 第3節 ウズベキスタンの青年の地域社会観と諸機関の活動    複数大学における質問紙調査から   
  (1) 青年の地域への参加度と参加実態
  (2) 青年にとっての地域社会
 小結
  (1) 各機関のネットワーク化
  (2) 活動の公開性
  (3) 独自活動の減少と諸機関,青年との間における温度差
 
終章 ウズベキスタンにおけるマハッラの教育的役割
 第1節 諸機関における教育的役割の連関性
 第2節 「教育」する共同体
 結語    今後の展望と課題   
 
あとがき
資料(ウズベキスタンに関する基礎データ/年表)
主要参考文献
索引

著者紹介

河野明日香(かわの あすか)
筑波大学大学院人文社会科学研究科助教。
 
ウズベキスタン共和国タシケント国立教育大学研究員,筑波大学大学院人文社会科学研究科準研究員,日本学術振興会特別研究員PDを経て,2009年10月より現職。九州大学大学院人間環境学府博士後期課程修了,博士(教育学)。専門分野は社会教育学,中央アジア地域教育研究。

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