荷為替信用状・スタンドバイ信用状各論「国際競争力のある判決」を求めて

著者名
橋本喜一
価格
定価 4,500 円 (税別)
ISBN
978-4-7985-0163-5
仕様
A5判 上製 324頁 C3032
発行年
2015年8月
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内容紹介

国際取引上の債務者の支払いを第三者たる発行銀行の支払約束によって代置することを主目的とする荷為替信用状と、取引が正常に展開しない場合や予想された特定の危険が現実化した場合の保障手段として、発行銀行が危険の負担者の請求あり次第直ちに支払うとの約束であるスタンドバイ信用状(銀行保証状、スタンドバイ・クレジット)の法的構造について、ドイツ法を中心とする比較法的研究と、実際の法的紛争に関する法解釈論的研究を平行して行う、わが国で初めての総合的研究書。
欧米においては判例や学説を引用し、参照文献の該当ページまで詳細に指摘する真摯な態度が判決に表れている。一方わが国では、世界的な視野のなかにのみ存在すべき法的処理が、専門家の鑑定や専門委員の介入を求める申立を排した裁判官の独断のなかに沈溺する事例を目の当たりにすることも稀ではない。本書は、そんな現状に強く警鐘を鳴らし、「国際競争力のある判決」を求めるものである。

目次

 初出一覧
 
 凡 例
 
序 章
 
  第一節 荷為替信用状の現在地
  第二節 銀行保証状とスタンドバイ信用状の位置関係
    1  銀行保証状の現在地
    2  スタンドバイ信用状の現在地
  第三節 「荷為替信用状からスタンドバイ信用状へ」 

    第一部 荷為替信用状における法的諸問題

第一章 信用状における第二銀行の法律関係  指定銀行と非指定銀行をめぐる諸問題  
 
  第一節 指定銀行(第二銀行)の法的状況
    第一款 指定銀行(第二銀行)
    第二款 通知銀行をめぐるベーゼらの論争と指定銀行
    第三款 発行銀行と第二銀行との関係(委任の連鎖)
    第四款 発行依頼人と第二銀行との関係(履行補助者か復受任者か)
    第五款 受益者と第二銀行との関係(履行場所)
    第六款 第二銀行の「支払義務」の根拠と性質(ベーゼらの論争の明らかにしたもの)
  第二節 非指定銀行の法的状況
    第一款 非指定銀行と信用状
    第二款 非指定銀行による買取とわが裁判所(最高裁判決を含む誤解例)
  第三節 結びに代えて(通知銀行における保護義務の問題)
 
第二章 信用状通知銀行と信用状発行(変更)通知の遅延の責任
 
  第一節 事実関係の要約
  第二節 評釈
    第一款 判示理由と結論ともに反対
    第二款 通知銀行及びその余の第二銀行と受益者との関係
    第三款 発行依頼人の責任とする通説
    第四款 通知銀行の責任を認める見解とその当否
    第五款 おわりに(通知銀行はアメンドの通知を遅延していないこと)
 
第三章 荷為替信用状における偽造の抗弁
 
  第一節 問題の所在  偽造の迷路から出口へ  
  第二節 事例の設定  買取信用状であること  
  第三節 なぜ「明白な偽造」の場合に支払拒絶権と支払拒絶義務を生じるのか
  第四節 危険な主張
  第五節 「偽りの代理関係」の分析
    第一款 買取銀行Dの代理権の客観的限界
    第二款 買取銀行Dの代理権の主観的限界
  第六節 偽りの「善意の所持人」の分析
  第七節 関係銀行の正当な選択
  第八節 むすび
 
第四章 同一の船荷証券がレッド・クローズ信用状の償還と外国向け取立(Inkasso, Collection)に用いられた場合の正当な所持人の確定条件  併せていわゆる保証渡しをめぐる法律関係について  
 
  第一節 本章の目的
  第二節 判決が認定した事実関係の整理
  第三節 本件船荷証券所持の正当性
    第一款 レッド・クローズ信用状と訴外人の存在
    第二款 トラスト・レシートによるXの本件船荷証券所持の意味
  第四節 保証渡しの法律関係
    第一款 保証渡しの慣行
    第二款 船荷証券保証状の有効性
    第三款 緊急措置的保証渡し(保証渡しの限界)
  第五節 本件判決がXの所持の正当性を認めた根拠
  第六節 おわりに
 
第五章 売買契約と一致しない信用状と売買契約の関係  海上売買における「保証書」と銀行保証状(Letter of Guarantee)  
 
  第一節 事 実
  第二節 判 旨
  第三節 評 釈
    第一款 判旨一の結論をめぐって
    第二款 判旨二の結論と理由はそのいずれにも反対
    第三款 判旨三の結論に賛成,理由に反対  銀行保証状の準拠法について  
 
第六章 「信用状付き荷為替手形」の信用状統一規則に依らない買取  併せて「外国向為替手形取引約定書」の問題点など  
 
  第一節 買取とnegotiationのギャップがもたらしたもの
  第二節 わが国裁判所の特異な解釈
  第三節 買取に伴う信用状の法的課題
    第一款 買取資格の問題
    第二款 「買取銀行」の権利保護義務
    第三款 非UCP型買取と売買説(担保的譲渡説)の不条理
    第四款 質権としての与信担保
    第五款 「買取銀行」のドキュメント検査義務
  第四節 「外国向為替手形取引約定書」による買戻特約
    第一款 はじめに
    第二款 UCP型買取の場合
    第三款 非UCP型買取の場合(ドキュメントの返還との同時履行の抗弁権など)
  第五節 まとめ
  第六節 おわりに
 
第七章 偽造証券と知りつつ支払った信用状発行銀行がその負担を顧客に付け回すことの法理  故伊沢孝平博士のマイナス遺産との闘い  
 
  第一節 問題の所在
  第二節 信用状における買取と銀行免責の構造
    第一款 第一型の買取信用状と第二型の買取信用状の区別
    第二款 買取は買取指定銀行でなされるべきこと
    第三款 検査銀行の代理権の限界としての偽造の抗弁(第一型の場合)
    第四款 銀行によるドキュメントの検査の免責事由と偽造の抗弁(「明白な偽造」)(第一型と第二型)
      第一目 外見上の検査と偽造の銀行免責基準
      第二目 偽造の抗弁の制限要件としての「明白性」と証拠制限
      第三目 小 括
  第三節 おわりに
 
第八章 買取信用状とドキュメントの買取(negotiation)の法律
 
  第一節 はじめに  問題の現状  
  第二節 negotiation creditの二つの型  第一型の買取信用状と第二型の買取信用状  
  第三節 発行銀行と確認銀行の義務の相違  支払義務と買取義務の帰属主体の相違  
  第四節 買取(negotiation)とはなにか
    第一款 問題の所在
    第二款 買取の態様
    第三款 買取の成立要件
    第四款 支払無担保文言と手形振出人の責任
  第五節 買取と取立(collection)との区別
  第六節 むすびに代えて(実務的に)
 
第九章 欧米なみの信用状判決への内憂と外患
 
  第一節 はじめに
    第一款 国際的な統一性から遺脱した信用状判決
    第二款 裁判所の誤解
    第三款 本章の目的
    第四款 本章の方法論
  第二節 本 論
    第一款 事実関係
    第二款 原告Xの請求の趣旨と請求原因事実
    第三款 被告Y銀行の主張
    第四款 Y銀行の主張の法的検討
    第五款 裁判所の判断
    第六款 Y銀行の法廷戦術と審理上の裁判所の問題点
  第三節 裁判所のその余の誤りについて

    第二部 銀行保証状とスタンドバイ信用状における法的諸問題

第一章 銀行保証状とスタンドバイ信用状(スタンドバイ・クレジット)の現代的課題
 
  第一節 はじめに   第四世代に移行した銀行保証状と現在における問題状況  
    第一款 銀行保証状というタイトル
    第二款 概念内容
    第三款 多段階銀行保証状  直接保証状,間接保証状と反対保証状  
    第四款 本章の課題
  第二節 基礎的法理の概要
    第一款 銀行保証状の独立抽象性
    第二款 主張責任の転換の問題  いわゆる「即時払い保証」との関連において  
    第三款 抽象性の限界としての権利濫用的請求
  第三節 権利濫用についての銀行保証状の解釈とスタンドバイ・クレジットの解釈
    第一款 総 説
    第二款 銀行保証状と権利濫用
    第三款 スタンドバイ・クレジットと権利濫用
  第四節 権利濫用的請求における(支払前の)関係当事者間の法律関係
    第一款 総 説
    第二款 発行依頼人と発行銀行との法律関係
    第三款 発行依頼人と受益者との法律関係
  第五節 発行依頼人の仮の権利保護
    第一款 総 説
    第二款 直接保証状と保全処分
      第一目 発行銀行を相手方とする仮処分
        I 支払禁止の仮処分
        II 償還禁止の仮処分
      第二目 発行銀行を相手方とする仮差押
      第三目 受益者を相手方とする仮処分
        I 根 拠
        II 国際裁判管轄
    第三款 多段階保証状と保全処分
      第一目 多段階保証状の法律関係
      第二目 第一銀行を相手方とする仮処分
      第三目 第一銀行を相手方とする仮差押
      第四目 第二銀行を相手方とする支払禁止仮処分
  第六節 むすび
 
第二章 銀行保証状(バンク・ギャランティ)の識別基準   ある高裁判決への否定的評論  
 
  第一節 銀行保証状に該当するか否かで争われた事例
  第二節 銀行保証状の基本的性質
  第三節 銀行保証状と保証契約の識別
  第四節 高裁判決の論理とその検討
 
第三章 外国向けドキュメンタリー取立における支払請求権の法的保障
 
  第一節 はじめに
    第一款 対象の特定
    第二款 問題点の指摘
  第二節 ドキュメンタリー取立の合意
  第三節 支払人の抗弁権の放棄
    第一款 買主の目的物検査権の放棄
    第二款 その他一切の抗弁権の放棄
  第四節 売主の取立権の限界としての権利濫用
    第一款 客観的要件(重大な事由)
    第二款 主観的要件(故意による良俗違反)
  第五節 おわりに
 
第四章 スタンドバイ信用状とディマンド・ギャランティ及び荷為替信用状における仮処分と仮差押  いわゆるノー・インジャンクション・ルールの構造  
 
  第一節 保全命令の禁止原則
  第二節 信用状の保全命令の構成
    第一款 被保全権利
    第二款 保全命令の主文
    第三款 申立人
  第三節 保全原因
    第一款 権利濫用の「重大性」「明白性」及び「即時性証拠の存在」
    第二款 「重大性」「明白性」「即時性証拠」の一義性
    第三款 信用状における仮処分命令と疎明
    第四款 疎明原則の下での証明の必要性
  第四節 各種の保全命令とその要件
    第一款 受益者を相手方とする支払請求禁止仮処分
      第一目 可否と条件
      第二目 小 括
    第二款 信用状発行銀行を相手方とする支払禁止仮処分
      第一目 可否と条件
      第二目 小 括
    第三款 支払銀行(第二銀行)を相手方とする仮処分
    第四款 確認銀行を相手方とする仮処分
      第一目 仮処分請求の可否
      第二目 準拠法
    第五款 仮差押
  第五節 まとめ
 
第五章 スタンドバイ信用状とディマンド・ギャランティ及び荷為替信用状における発行銀行の支払拒絶の抗弁について
 
  第一節 抗弁論総論  原則と例外  
    第一款 はじめに;構造上の問題
    第二款 許される抗弁と許されない抗弁とを分かつ根拠
    第三款 補償関係と対価関係上の抗弁が許される限界
  第二節 抗弁論各論
    第一款 内的抗弁(発行銀行の「給付約束自体で生じる抗弁」)
    第二款 補償関係に基づく抗弁
    第三款 対価関係に基づく抗弁
    第四款 間接的抗弁(発行銀行と受益者との特別な法的関係に基づく抗弁)
    第五款 権利濫用の抗弁
  第三節 おわりに
 
第六章 銀行保証状と荷為替信用状の発行依頼人の指定銀行に対する訴訟当事者適格   発行依頼人から指定銀行へと通じる道  
 
  第一節 現在の問題状況
    第一款 はじめに
    第二款 多数説の構成
    第三款 提起される問題
  第二節 発行依頼人と指定銀行間の契約関係を認める見解
    第一款 保護義務説について
    第二款 執行委任説について
  第三節 おわりに
 
むすびに代えて
 
 参照文献
 
 索 引

著者紹介

橋本喜一(はしもと きいち)
1933年,高知県生まれ。
1956年,九州大学法学部卒業。
1963年,伊藤忠商事株式会社財務部外国為替課勤務・司法修習生を経て判事補。
判事(大阪地方裁判所,神戸地方裁判所など),追手門学院大学教授を経て
現在,弁護士(大阪弁護士会所属)。 法学博士(神戸大学)。

著 書
『荷為替信用状の二次的利用に関する研究』法曹会,1969年
『銀行保証状論 増補版』中央公論事業出版,2010年

訳 書
F. アイゼマン/R. A. シュッツェ『荷為替信用状の法理概論』九州大学出版会,1994年

主要論文
「銀行保証状Bankgarantieの法律関係(一)(二)(三)」 民商法雑誌79巻4号・5号・6号,1979年
「荷為替信用状における提供証券の審査に関する諸問題(一)(二)」 民商法雑誌103巻2号・3号,1990年
「信用状つき荷為替手形の非UCP型買取と外国向為替手形取引約定書の買戻特約は信用状法理と如何に接触するか」 追手門経営論集14巻2号,2008年
など。

書評

 銀行法務21 793号 「BOOK REVIEW」より     評者 神戸市外国語大学名誉教授 小原三佑嘉 氏
 
書評 銀行の取扱う荷為替信用状が、顧客の海陸空の各運送手段の利用を通しての輸出入の決済手段として、21世紀の今日までを大過なく使用されてきたのは、国際商業会議所(ICC)の信用状統一規則(UCP)をほとんどバイブルにも比すべきグローバルなルールとして世界が認め、遵守してきたからである。だが、現場の実務では、リスクを避け安全・安心のための厄介なドキュメンツの点検に手間暇がかかるといって、より簡易迅速な方法を求めて、いろいろな情報資料を求めてきたのも事実であろう。
 他方、似て非なるところのあるスタンドバイ信用状のほうは、売買や請負の契約が正当に展開しない場合において、発行者が受益者(違約の賠償権利者や預託債権者など)の請求があり次第直ちに(on first demand)支払う旨を約するもので、欧米の銀行では早くから発行されており、UCPの適用も可能である。しかし便利で簡易なものには、とかく高いリスクがつきものである。ともかく、安全と簡易迅速という要求は簡単には両立しないのが世の常であり、複雑な法的紛争のもとになってきた。
 本書は、これらの国際的な銀行の支払約束につき、内外の裁判例などが示している具体的な諸問題を手がかりに、主に法理的な考察を加えており、実務・法務家には喉から手が出るほど求められる本であろう。というのは、不遜を承知で言えば、信用状のことは銀行の実務家の頭が先行し、司法の頭はとかく遅れがちと言われるように、「時差」の存在することを知ったうえで、かかる現実を誤ることなく認識することは、すべての金融機関の実務家にとっても必須の課題だからである。
 著者は、大学卒業後伊藤忠商事本社で4年にわたって実際の外為実務を経験したのち法曹界に転じ、判事として主に民事事件を担当しつつ本誌を含む諸誌に多くの論文をあらわし、退官後も弁護士登録とともに大学での国際取引法の教授を経た畏友で同好の士である。著者の頭の中は欧米と比較した我が国の司法判断の現状(立ち遅れ)にいら立っておられるのではないかと思う。
 最後に、約20年前、本誌499号で紹介した、著者が翻訳したICC元法律部長 F. アイゼマン/R. A. シュッツェ『荷為替信用状の法理概論』(九州大学出版会)において、「国際競争力のある判決」というテーマが掲げられていたが、本書の「むすびに代えて」の項でも同じテーマのもとで種々の具体的な対応策が論じられている。20世紀の荷為替信用状については『荷為替信用状の法理概論』がそうであったように、本書も21世紀における荷為替信用状とスタンドバイ信用状の法理概論に該当するものともいえる。他に相当する類書も見当たらないことから、この際外為実務家はもちろんのこと専門外の民商事法務家の一読必携の図書としてお奨めする。

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