麻生太吉日記

麻生太吉(1857(安政4)年〜1933(昭和8)年)は筑豊で家業である農業に次いで炭鉱経営をスタートさせ、銀行業や鉄道業、電力業ほか地域の企業に経営者として幅広く関係し、貴族院議員としても活躍した、近代を代表する実業家である。太吉は企業経営者として円熟期を迎えた50歳から亡くなる直前まで26年間にわたり日記を残していて(1906〜1933年)、炭鉱業を中心とする企業者活動、中央・地方における政治活動および地域社会との関わりなど多方面にわたる記録を残している。本日記の編纂委員会は、石炭産業史、地域史研究、古文書解読の第一人者および麻生家関係者から構成されており、現時点の最高の執筆陣と呼んでもよいであろう。各巻には詳細な注釈が付せられるほか、解説や地図・家系図・写真などの資料も豊富に収録している。本日記の刊行が日本の近代史研究に大きな寄与をすることは間違いないであろう。
 
詳細な注釈
日記翻刻に対する注釈においては、太吉親族や筑豊の炭鉱経営者のみならず、中央政界の人士層、麻生商店従業員や家事使用人、地元の官吏やかかりつけ医に至るまで説明。地名については市郡町村名を、会社名についても所在地・代表者名・業務内容・沿革まで詳細に説明。
 
豊富な解説
各巻の巻頭および巻末に、太吉の企業活動を物語る書状や事業所などの写真を掲載するほか、貝島太助、安川敬一郎、伊藤傅右衛門、松永安左エ門らの太吉ゆかりの人物に解説を付し、麻生家家系図や筑豊地方の地図を収録するなど日記翻刻以外にも豊富な資料を収録。
 
   第一巻 1906(明治39)年〜1916(大正 5)年
 
   第二巻 1917(大正 6)年〜1922(大正11)年
 
   第三巻 1923(大正12)年〜1927(昭和 2)年
 
   第四巻 1928(昭和 3)年〜1931(昭和 6)年
 
   第五巻 1932(昭和 7)年〜1933(昭和 8)年・太吉年譜・参考文献・総索引
 
 
第一巻 第二巻 第三巻 第四巻 第五巻
 
推薦の辞
 『麻生太吉日記』全五巻が九州大学出版会から刊行されることを心から慶びたい。日本の工業化が始まる明治中期頃から1933年に没するまで企業家及び政治家として多彩な活動を精力的に続けた麻生は何よりも,日本有数の産炭地筑豊における著名な炭坑主であり,地元に多数存在した同業者のリーダーとしても大活躍した。第一次世界大戦後には石炭鉱業連合会の初代会長となり,日本の石炭産業を統率するに至った。麻生の活動は,石炭産業を超えて九州北部を中心とする鉄道,銀行,電力,港湾,セメント等の多方面に及び,そのために麻生家はしばしば地方財閥とされてきた。大地主でもあった麻生は,若き日にすでに地元の行政を担い,19世紀末からは衆議院及び貴族院の議員となり,国政にも参加した。このたび出版される日記から読者は,1906年から没年までの四半世紀余りにおける麻生のそうした多面的な活動を克明に読み取れるであろう。近年の日本近代史研究のうち,政治史の分野では政治家,官僚,軍人等の日記を駆使した研究が多数蓄積されているが,経営史や経済史の分野ではそうした業績はあまり多いとは言えない。そのような状況の中で,重要な企業家であった麻生の日記が公刊されることの学術的意義はきわめて大きい。日記の公開を許可された麻生家,及び資料の整理・解読等に多大の労力を投じられた関係各位に感謝の言葉を捧げるとともに,本書が大学の研究室や公共図書館等に備えられ,経営史,経済史,政治史等の研究に携わる人々に広く活用されることを希望してやまない。

国士舘大学教授、元経営史学会会長 阿部武司氏


 『麻生太吉日記』(全五巻)が刊行される。麻生太吉は,周知のことであろうが,麻生太郎元首相の曽祖父であり,また福岡県を拠点に事業展開をしている麻生グループの創業者である。麻生太吉は,筑豊の最有力炭鉱主であるとともに,本業である炭鉱業に止まらず,地方の名望家企業家として様々な事業に関わるとともに,衆議院議員,貴族院議員として政治活動にも関与し,また名望家として様々な活動を行った。このような多彩な活動の記録である日記の刊行は,石炭産業史にとどまらず,近代産業史,地域史にとっても研究の進展に資するところが大きい。
 日記は明治三十九年に始まり,昭和八年まで残されており(明治四十一年分は欠),そのすべてが刊行される。日記の内容は,当初は簡略であったが,大正三年以降は記述内容が増加し,大正十四年以降はさらに充実するという。太吉は家業の他に筑豊石炭鉱業組合総長,石炭鉱業連合会会長,九州水力電気社長など数々の役職を歴任しており,日記はそれらの活動についても詳しく触れており,石炭産業史,九州電気事業史,九州財界史,地域社会史などにとって貴重な情報源であり,興味は尽きない。
 企業家の日記や書簡は,伝記,社史,事業史などの公式記録からは知り得ないこと,経営思想や意思決定の根拠,人間関係の機微など生身の人間に触れることのできる生きた資料である。麻生太吉日記の刊行によって,麻生太吉の人間像が掘り下げられ,北部九州の産業史,地域史の研究が飛躍的に発展することを願っている。

九州大学名誉教授、元下関市立大学学長 荻野喜弘氏

学術図書刊行助成

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