中国南方話劇運動研究(1889-1949)

著者名
間ふさ子
価格
定価 6,820円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0033-1
仕様
A5判 上製 332頁 C3074
発行年
2010年12月
ご注文
  • 紀伊國屋
  • amazon
  • 楽天ブックス
  • セブンネットショッピング

内容紹介

20世紀初頭に登場した中国の話劇は,台詞と動作・表情を表現の手段としてドラマを進行させ,具象的な舞台装置や衣装を用いる,「写実」を尊ぶ表演芸術である。新興の表演芸術である話劇は近代意識を表現し,「国語=共通語」で演じられるものだということがこれまでの学界の定説であった。しかし当時の中国においては,国語は知識人の共通語ではあっても民衆の共通語ではなく,国語話劇の他に民衆を対象とした方言話劇も存在していた。著者は中国南方(華南・東南・台湾)の方言話劇運動に着目し,使用言語の問題を中心にその発展の流れを概観し,その特徴と意義を明らかにする。

目次

 序文(岩佐昌暲)
 
序章
  中国南方話劇運動とは/二十世紀前半における中国南方話劇運動の背景/本書の構成
 
1 啓蒙・教化の時代(1889―1937)
 
第一章 初期話劇の頃

  春柳社/文明戯から「愛美劇」へ/『新青年』の主張/広東における演劇運動/
  台湾の近代演劇
 
第二章 広東における話劇の確立と人材養成機関
  采南歌/欧陽予倩の広東戯劇研究所/広東戯劇研究所がもたらしたもの/
  広東省教育庁の広東戯劇研究所/広東省立芸術専科学校
 
第三章 台湾新劇第一人  張維賢の演劇活動  
  星光演劇研究会/築地小劇場での修業/民烽演劇研究会から民烽劇団へ/
  新劇祭での台湾語劇/張維賢のめざしたもの/二つのアプローチ
 
2 戦時下の南方話劇(1937―1945)
 
第四章 戦時東南文芸運動における話劇活動

  プロレタリア演劇から国防演劇へ/東南地区の抗戦文芸運動/「東南文芸運動」の提唱/
  浙江の概況/福建の概況/「宣伝」・「動員」/福建における演劇と教育の結合の試み/
  温州の場合
 
第五章 東京から東南へ  抗日話劇の課題  
  一九三〇年代の中国人留学生の演劇活動/『復活』合同公演/日本人・台湾人との交流/
  董辛名と抗日救亡演劇活動/課題(一)  言語不通の問題/課題(二)  内容の問題/
  課題(三)  社会的要因/課題(四)  演劇人の意識の問題
 
第六章 「方言無罪」  趙如琳の広東語話劇  
  西南劇展/『油漆未乾』/西南劇展での批評/使用言語についての論議/趙如琳という存在
 
第七章 日本語で演じられた抵抗  戦時統制下の台湾演劇  
  一九三七年以前の台湾演劇/日中戦争期の台湾演劇/使用言語の実情/
  双葉会から厚生演劇研究会へ/楊逵脚色の『吼えろ支那』/台湾演劇人の抵抗
 
3 戦後初期の台湾演劇(1945―1949)
 
第八章 「言語の解放」
  台湾語演劇の復権  
  戦後初期の演劇管理/使用言語の選択/戦後初の台湾語話劇/
  聖烽演劇研究会の『壁』公演とその禁演/人劇座の失敗と聖烽の成功/『壁』の脚本/
  『壁』公演の意義
 
第九章 東南から台湾へ  実験小劇団の多言語演劇  
  実験小劇団/実験小劇団の二言語併用/実験小劇団の多言語混用/『台北酒家』/
  台湾話文創作をめぐる論議/台湾語による創作について/中断させられた演劇活動
 
第十章 民主のテーマの登場  「呉鳳」像の再解釈  
  呉鳳伝説の形成と変容/プロットの変更あるいは潤色/
  日本植民地期の呉鳳劇における呉鳳の形象/陳大禹作『呉鳳』の特色(一)  神格化を廃す/
  陳大禹作『呉鳳』の特色(二)  合理的な展開/融和の社会を求めて/権力者の横暴の暗示
 
終章 「多様的統一」の模索  南方の『白毛女』  
  南方話劇の流れ/方言使用の動機・目的/民衆の自己表現手段としての方言/
  中原劇芸社の活動/『白毛女』公演/三つの上演団体/中国共産党のバックアップ/
  観客からの反響/音楽論争/上演意図の齟齬/「多様的統一」をめざして/まとめ
 
 主要参考文献
 あとがき
 索引(人名/劇目/事項)

著者紹介

間ふさ子(あいだ ふさこ)
1979年九州大学文学部卒業後,2005年3月まで貿易会社勤務。
2001年九州大学大学院比較社会文化学府修士課程入学。
2003年同博士後期課程入学,2005年3月同博士課程退学。
2005年4 月福岡大学人文学部東アジア地域言語学科の教員となり,
現在,同准教授。博士(比較社会文化)。
共著書:『中国現代文学と九州』(九州大学出版会,2005年)
共訳書:藍博洲『幌馬車の歌』(草風館,2006 年),
尾崎秀樹『旧植民地文学的研究』(人間出版社,2004 年),
胡昶・古泉『満映  国策映画の諸相』(パンドラ,1999 年)ほか。

学術図書刊行助成

お勧めBOOKS

若者言葉の研究

若者言葉の研究

生きている言語は常に変化し続けています。現代日本語も「生きている言語」であり、「…

詳細へ

犯罪の証明なき有罪判決

犯罪の証明なき有罪判決

冤罪はなぜ起こるのか。刑事訴訟法は明文で、「犯罪の証明があった」ときにのみ、有罪…

詳細へ

賦霊の自然哲学

賦霊の自然哲学

物理学者フェヒナー、進化生物学者ヘッケル、そして発生生物学者ドリーシュ。本書はこ…

詳細へ

帝国陸海軍の戦後史

帝国陸海軍の戦後史

近代日本のなかで主要な政治勢力の一翼を担った帝国陸海軍は、太平洋戦争の敗戦ととも…

詳細へ

構造振動学の基礎

構造振動学の基礎

本書の目的は,建物・橋梁・車両・船舶・航空機・ロケットなど軽量構造物の振動現象を…

詳細へ

九州大学出版会

〒819-0385
福岡県福岡市西区元岡744
九州大学パブリック4号館302号室
電話:092-836-8256
FAX:092-836-8236
E-mail : info@kup.or.jp

このページの上部へ