内容紹介
生きている言語は常に変化し続けています。現代日本語も「生きている言語」であり、「変化」を続けていると考えられます。では、この「変化」とは何でしょうか。これまで現代日本語の若者言葉に見られる現象は「乱れている」と言われてきました。文化庁の「国語に関する世論調査(平成19年)」でも、「今の国語は乱れていると思うか」という問いに対し、「乱れていると思う」という回答は79.5%に上りました。
しかし、本当に若者言葉は「乱れ」ているのでしょうか。もしそうだとしたら、どのように「乱れ」ているのでしょうか。言葉を扱う学問である言語学の先行研究を見ると、現代日本語の若者言葉は語彙など部分的な研究はあっても、流行語や俗語として考察されたものが多く、「言語変化」という枠組みでは研究されていませんでした。
そこで、1990年代後半から2000年代の若者言葉について、従来のルールでは説明がつかない斬新な用例を取り上げ、言語学的な分析を行いました。また、2010年代の若者言葉も収集・分析することで、どのように変化が進んでいったのか、その変遷についても社会言語学的視点を中心に、現代日本語における語彙・意味・文法・用法の「変化」について考察しました。様々な新しい用法や語彙を収集し、分析を進めていくうちに、若者言葉には言葉遊び・隠語としての機能のほかに、ある一定のルールが存在することが分かってきました。
日本語は変化し続けており、今後も変わり続けるでしょう。その中でも、若者言葉がどのような要因によって、どのように作られ、どの程度残るのかは分かりません。しかし、新造語はランダムに作られているようでいて、その実、ある法則に則っています。今後の若者言葉も、これまでと同様に新しい語彙が生まれ、その新しい語彙や用法は一定のルールに沿ったものとなるでしょう。
エネルギー溢れる若者たちが、言語変化の最先端で生み出し続ける「若者言葉」の世界を、言語学の窓から覗いてみませんか。