人文科学 文学

遠藤周作とキリシタン

遠藤周作とキリシタン

下野孝文
定価 6,380円(税率10%時の消費税相当額を含む)
遠藤周作は、自作について書き、また語ることの多い作家であった。それは、創作意図、主題等へも及び、その言説が倣うべき一つの権威となり、研究へも作用する側面のあったことは否めない。本書は、そうした状況にとらわれない、作品と資料との関係を実証的に検討した成果を収める。 第一章から第六章までは、長崎を舞台とした切支丹物を主に、参考資料等からの作品への反映状況を検討した論考により構成した。それは、キリシタン時代から近現代までを背景に、創作活動の中核をなす期間に描かれた最初の切支丹物「最後の殉教者」(195...
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近代初期イギリス演劇選集

近代初期イギリス演劇選集

鹿児島近代初期英国演劇研究会 訳
定価 6,600円(税率10%時の消費税相当額を含む)
演劇の近代は16世紀ロンドンで幕を開けた。従来アマチュアや旅役者一座が担ってきた猥雑で豊穣な演劇文化の伝統は、常設の公衆劇場を拠点に活動する商業劇団へと継承された。新しい時代の劇作家や俳優たちが直面した課題は、「消費者としての観客」という、より多様で、無定形で、御しがたく、得体の知れない集団を相手に、ウケる芝居を継続的に生み出していくという、これまでにない難題だった。共同体的(コミュナル)な演劇から商業的(コマーシャル)な演劇へ。記号的な熱演からより自然な写実的演技へ。イギリス演劇はかつてない革...
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ノヴァーリスにおける統合的感官としての「眼」

ノヴァーリスにおける統合的感官としての「眼」

大澤遼可
定価 4,400円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ドイツ初期ロマン派の詩人ノヴァーリスによれば、世界は本来「精神の啓示」である。そのような世界とは静的かつ固定的な事物の寄せ集めではなく、本来的に「精神」と呼ぶほかない不可視の根源的な力と連関のうちにある。しかし現状においてその連関を認識することができないわれわれは、「精神の啓示」を読み取ることもまたできない。ノヴァーリスはそのような状況を「世界の意味」の喪失と呼ぶ。彼の詩学において一貫して目指されているのは、この失われた「世界の意味」の回復であり、それは世界と「精神」との根源的連関の回復によって...
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語りの断層

語りの断層

井上暁子
定価 5,720円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は、国境線が幾度も引き直され、民族・文化・言語の混成が進んだポーランド北部・西部国境地帯が、社会主義末期ポーランドからドイツ連邦共和国へ移住した人々の文学において、いかに表象されうるかを論じている。研究対象とするのは、1950年代半ばから60年代、旧ドイツ領にあたるポーランド北部・西部国境地帯に生まれ、ポーランド語を母語とする人々である。冷戦末期の1980年代ポーランドから西ドイツへ移住した彼らは、冷戦終結後、各人各様に移動と定住を繰り返しつつ、ドイツ語ないしポーランド語で創作に従事している...
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野生の文法(グラマー)

野生の文法(グラマー)

高橋 勤
定価 4,620円(税率10%時の消費税相当額を含む)
「野生のなかにこそ世界を保存する力がある」ソローの野生論「ウォーキング」のもっとも知られた一節である。ソローの野生論は、野生という概念を中心として文化の活力と健全性、そして人間の全き成長について論じたものであった。従来、自然詩人、シンプルライフの実践家とみなされたソローを「野生」という鍵概念に注目して読み直し、さらに環境活動家ジョン・ミューア、現代詩人ゲーリー・スナイダーに与えた影響を考察する。「わたくしが関心を抱くのは、思想(グラマー)としての「野生」の問題であり、その系譜学である。別の言い方...
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水の女[新装版]

水の女[新装版]

小黒康正
定価 2,750円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ヨーロッパ文学における「水の女」の系譜は、大小さまざまな流れから成り立つ。但し、その本流は、古代ギリシア神話を水源とし、キリスト教のもとで形を変えながら、中世やルネサンス期の民間伝承や民衆本を経て、近代ドイツのメールヒェンにて川幅を広げ、更にデンマークへと至り、世界文学という海原に流れ出る。こうした流れの中でドイツ文学の役割は大きい。セイレンの後裔たちは、明るい海原ではなく、奥深い森の湖沼に現れるようになると、文学において頻出する「他者」となり、同時に内面化された「他者」となる。つまり、「水の女...
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開戦前夜の日中学術交流

開戦前夜の日中学術交流

稲森雅子
定価 5,940円(税率10%時の消費税相当額を含む)
1920-30年、中国文学の若手研究者(中国学第二世代)が続々と北京へ留学した。当時、北京は忘れられた「古都」となっていたが、なお北京大学や清華大学など数多くの大学があり、学術研究の面では依然として中心地であった。その北京で、日本と中国の中国学研究者たちは、さかんに交流していた。しかし、このいわゆる「日中戦争前夜」の数年間の学術交流の実態は、これまで意識的あるいは無意識のうちに見過ごされてきた。本書は、近年偶然に発見された当時の資料等をもとに、北京において繰り広げられていた学術交流の具体的なあり...
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在明の別 残月抄

在明の別 残月抄

辛島正雄
定価 6,600円(税率10%時の消費税相当額を含む)
『在明の別』は平安最末期に成った王朝物語の傑作であるが、長らく散逸したものと見なされ、現存することが分かったのは戦後になってからである。藤原摂関家存亡の危機を救うため、春日の神の加護のもと人間界に降誕したヒロインが、たった一人で嫡男と姫君、男女二人分の役割を果たす奇跡の物語は、性の偽装をモチーフとする『とりかへばや』の流れを汲みつつも、さらに複雑精妙な物語世界を描き出す。しかし従来は、解釈困難な箇所の続出する「天下の孤本」を、十分な校訂が施されないまま読むほかなかった。本書では、そのように難解を...
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アーケイディア[新装版]

アーケイディア[新装版]

サー・フィリップ・シドニー/
礒部初枝・小塩トシ子・川井万里子・土岐知子・根岸愛子 共訳
定価 10,340円(税率10%時の消費税相当額を含む)
『ニュー・アーケイディア』(初版1590年)は、シドニーが女王への愛国的忠誠心からアランソン公との結婚に反対して女王の逆鱗にふれて宮廷から追放され、妹宅に蟄居中、不遇の憂さ晴らしに書き始められた遊びであったが、皮肉にも彼の代表作にして英国ルネッサンス・パストラルロマンスの最高峰として結実したのは幸福な歴史的逆説の一例であった。権力闘争に明け暮れる宮廷の醜い現実を熟知した廷臣詩人シドニーだからこそ、現実にはあり得ない夢の牧歌的理想郷(アーケイディア)を想定し、想像力の翼を思い切り羽ばたかせて飛翔す...
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ヘスペルス あるいは四十五の犬の郵便日[新装版]

ヘスペルス あるいは四十五の犬の郵便日[新装版]

ジャン・パウル/恒吉法海 訳
定価 10,340円(税率10%時の消費税相当額を含む)
『ヘスペルス』(1795年)はドイツの小説家ジャン・パウルの出世作である。「ヘスペルス」とは「慰謝」の「宵の明星」の意であるが、ジャン・パウルの筆名をドイツ人だからと言って、本名の「ヨーハン・パウル」に変えられないように、「希望」の「明けの明星」、「美」の「金星」も暗示していて、「ヘスペルス」と訳すしかない。 本作は最もジャン・パウルらしさの見られる語り手の奔放な脱線と物語の感傷性の併存する奇妙な混淆物である。 物語は『見えないロッジ』や『巨人』がそうであるように、フランス革命の影響を受けたドイ...
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