人文科学文学
生と死をめぐるディスクール
- 定価 2,000 円 (税別)
本書は、古今東西の文学や思想に見られる様々な死生観と、現在の生命倫理の諸相という二つの領域を総合的に関連づけながら考察することにより、生と死に向き合うために必要な心構えや勇気、そして覚悟を読み取ることをめざすものである。 第Ⅰ部では、第Ⅱ部以降の各章の理論的な背景として、まず第1章で「気づかい」を具体例にして倫理学におけるアプローチを紹介し、第2章では宗教学の観点から、古今東西の様々な死生観の分類と位置づけのための基盤となる枠組みを提示している。 第Ⅱ部...

ヘスペルス あるいは四十五の犬の郵便日[新装版]
- 定価 9,400 円 (税別)
『ヘスペルス』(1795年)はドイツの小説家ジャン・パウルの出世作である。「ヘスペルス」とは「慰謝」の「宵の明星」の意であるが、ジャン・パウルの筆名をドイツ人だからと言って、本名の「ヨーハン・パウル」に変えられないように、「希望」の「明けの明星」、「美」の「金星」も暗示していて、「ヘスペルス」と訳すしかない。 本作は最もジャン・パウルらしさの見られる語り手の奔放な脱線と物語の感傷性の併存する奇妙な混淆物である。 物語は『見えないロッジ』や『巨人』がそうであるように、フランス革命の影響を受けたドイ...

マーガレット・ドラブル文学を読む
- 定価 4,800 円 (税別)
マーガレット・ドラブルは現代イギリスを代表する作家・英文学研究者の一人で、1963年、20代の頃に『夏の鳥かご』(A Summer Bird-Cage ) で文壇デビューを果たした。以来、およそ半世紀にわたって19本の小説を発表してきたドラブルは、その創作活動のなかで徐々に作風を変化させていった。当初の作風は、ドラブルがケンブリッジ大学で師事した F. R. リーヴィスの影響を受け、J. オースティンや G. エリオットらの作風を受け継いだ、倫理意識を重視したリアリズム小説で...

日本の近代美術とドイツ
- 定価 4,000 円 (税別)
西洋の油絵技法を取り入れて誕生した日本の洋画には、常に西洋美術受容の問題がつきまとう。その際に研究対象となるのは、いつもフランスであってドイツではない。たしかに日本が受け入れたのはゴッホやセザンヌなどフランス近代絵画であった。しかし、実際にはそれらはリヒャルト・ムーターやユーリウス・マイアー=グレーフェなどドイツ人美術批評家の書物を通じてもたらされていた。近代日本の西洋美術受容において、実践面ではフランスが重視されていたが、その一方で美術を言葉で支える思想面ではドイツが重要な役割を演じていたので...

ジッドとその時代
- 定価 9,000 円 (税別)
本書は、書簡や日記をはじめとする豊富な未刊文献を駆使して、フランスの文豪アンドレ・ジッドが同時代人と結んだ多様な関係の具体相を鮮明に描き出し、稀代の文学的プロテウスの多面的肖像を活写する、実証研究の画期的成果である。ジッドがフランス文学史上固有の地位を主張しうるのは、ある文学的戦略を早くから選択し、以後ゆらぐことなくそれを実践し続けたからだ。すなわち、自己を禁忌とする逆説的なナルシシズムを育み、これに縛られ導かれて、ついには禁忌と執着とが混淆し、現実と虚構とが分別しがたい自伝空間を生きる、そして...

ヘルダー民謡集
- 定価 10,000 円 (税別)
本書『ヘルダー民謡集』は、ヘルダーが生涯を通じて関心を示しつづけた世界各地の民謡162篇に、彼の死後の1807年に刊行された改訂版『歌謡における諸民族の声』からの補遺15篇を加えたものである。これらはいずれも本邦初訳である。『民謡集』にはヘルダー自身がさまざまな書物から蒐集および翻訳した世界各地の民謡や伝承などが収められており、ゲーテの有名な「野ばら」や「魔王」の原点ともなった作品も含まれている。その内容は、恋愛から戦争に至るまで多岐に及び、およそ人間が直面する生の根源的な諸状況が、特に女性や子...

生意気盛り[新装版]
- 定価 9,400 円 (税別)
『生意気盛り』はドイツの作家ジャン・パウルの代表的作品の一つで、初版完結は1805年のことであった。話の筋は、ある富豪が遺言で一人の夢想家の青年を包括相続人に指定することから始まる。この青年が実務能力を備えたとき遺産を継承すると遺言は定めてあるが、青年は詩人気質を矯正できない。助っ人にこの青年の双子の弟、放浪のフルート奏者が登場する。弟は諷刺家で、兄と一緒に抒情と諷刺の二重小説を書こうと提案する。話は次第に兄の実務能力養成から外れ、弟が背後で見守る兄の一人旅、最後にはこの双子の兄弟のある娘への恋...

レヴァーナ あるいは教育論[新装版]
- 定価 7,400 円 (税別)
フランス革命、ナポレオンの時代に、ドイツの活路を終始考えていたドイツの作家ジャン・パウル(1763-1825)の教育論。初版は1806年。題名の「レヴァーナ」とは、古代ローマにおいて新生児認知の際に祈られた女神の名前である。ルソーの『エミール』に影響されながら、自らの家庭教師や作家としての知見を生かしたものであり、教育するものとして一方に全人類、民衆、時代を置き、他方に直接の師として親や教師を置いている。『エミール』の教師が全知で透明人間の如く子供の成長を見守り、支配する傾向があるのに対し、ジャ...

創造の技術
- 定価 4,500 円 (税別)
本書は古典模倣論の原理と英国におけるその展開を跡付ける試みである。1.キケロの模倣論とイデア論 (Orator):自然の模倣の結晶としてのアート(テクスト)が生まれる。次にモデルとしてそのアートを模倣する、即ちモデルを通じて更にイデアを見る。 しかし、モデルとなるアートに施された技術(技巧、芸術)を解きほぐしてイデア探求の秘密を知ることは容易ではない。模倣論が技術的になる理由の大半がここにあると思われる。2.16世紀アスカムからシュトゥルム、ハーヴェイとカーク、スタニハースト、シドニー、ハリント...

王政復古期シェイクスピア改作戯曲選集
- 定価 6,000 円 (税別)
1642年、シェイクスピアの没後30年足らずで勃発した内乱(清教徒革命)によってイギリスにおける商業演劇の伝統は断絶した。それから18年を経て、王政復古を機に再開した劇場では内乱期以前とはまったく異質な演劇が、まったく異質な嗜好を持った観客たちのために上演されるようになる。それまで存在しなかった職業的女優が舞台に登場するようになったのもこの時期のことだった。英文学史上最も悪名高いネイハム・テイトによるハッピーエンド版『リア王』に加え、コリー・シバーによる『リチャード三世』の改作版、ジョン・レイシ...
