フィヒテの社会哲学

著者名
清水 満
価格
定価 7,800 円 (税別)
ISBN
978-4-7985-0111-6
仕様
A5判 上製 526頁 C3010
発行年
2013年9月
その他
第4回 九州大学出版会・学術図書刊行助成 対象作
2014年度日本フィヒテ協会フィヒテ賞受賞
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内容紹介

グローバル時代,多元的な世界の時代を迎え,カントの法哲学が復権され,ヘーゲルもまたネオ・プラグマティズムからのアプローチによって再発見されつつある。しかるに両者の中間にいたフィヒテは,ドイツ・ナショナリズムの悪しき煽動者,国粋的な国家主義による全体主義社会の思想家,ナチズムの起源の一人として,依然として闇に葬られたままである。その理由の一つは,フィヒテの社会哲学を総体的に見ようとせず,自分の政治的立場に都合のよい文言だけをつまみぐいして,フィヒテの思想だと述べてきた研究者たちの姿勢にもあるだろう。
本書は,初期の作品から晩年の講義草稿まで,フィヒテの社会哲学に関する文献を網羅して論じ,その全貌を示した本邦最初の研究である。これが示すのは,フィヒテは終始一貫して共和主義者であり,人民に対する「自由への教育」を通して「小社会」による闊達な討議・公共性形成を可能にし,最終的に国家を廃棄する意図をもっていたことだ。また,フィヒテがカント,ヘーゲルに劣らない体系的な社会哲学・法哲学を有していたこと,とりわけ「承認」「促し」「相互作用」などはカントやヘーゲルにない現代的な考え方であることも気づかされる。読者は読み終えたとき,フィヒテ理解を妨げていたこれまでの神話が破壊され,資本主義を前提とした今日の議会制民主主義がもつ病弊・欠陥をフィヒテが予見し,しかもオルタナティヴな社会構築に向けて数々の思索のヒントを与えてくれていたことをまざまざと実感するに違いない。そのときフィヒテが闇から甦る。

目次

序論
 
  一 「制限」の思想家フィヒテ
  二 近年の代表的な研究
  三 本書の目的と構成
 
    第一部 イエナ期フィヒテ哲学の基本理念
 
第一章 生における使命イエナ大学公開講義についての考察
 
  一 フィヒテの開始点としての『イエナ大学公開講義』(一七九四年)
  二 生の哲学者としてのフィヒテ
  三 『学者の使命についての講義』に見る「人間の使命」
 
第二章 フィヒテの「精神」概念
         『哲学における精神と字句の区別についての講義』についての考察
 
  一 カントの「精神」概念
  二 フィヒテの「精神」概念
  三 相互の活性化されたコミュニケーションとしての「精神」概念
 
第三章 イエナ期フィヒテの「社会」の思想
 
  一 国家の廃棄
  二 公共的な「小社会」という理念
  三 フィヒテの「身分」論
  四 制限の中の自由と相互作用
 
第一中間考察 「自由による自由の自己制限」
 
  一 『全知識学の基礎』における自我の三原則論
    (1) 事行という活動
    (2) 三つの原則
  二 『自然法の基礎』序論における権利概念
  三 『新方法による知識学』における自我の制限
    (1) 自己による自己制限を可能にするものとしての「純粋意志」
    (2) 制限の根拠としての叡知的なものと理性的存在者の国
 
    第二部 イエナ期フィヒテの社会哲学権利と国家
 
第一章 カントとの「継承と差異」
 
  一 カントの問題提起
  二 フィヒテの回答
  三 カント自身の回答
    (1) 『永遠平和のために』における権利概念
    (2) 『理論と実践』における権利概念
  四 適法性と道徳性の区別
    (1) カントにおける適法性と道徳性の区別
    (2) フィヒテにおける適法性と道徳性の区別
 
第二章 フィヒテの『自然法の基礎』における権利概念
 
  一 承認による個体の導出
  二 権利関係の前提としての身体と感性界の導出
  三 人格のもつ「本源的権利」
  四 フィヒテの所有権概念
  五 人格と物件の相互承認
 
第三章 フィヒテの「自然法」における国家論
 
  一 法律と権力、共通意志の形成
    (1) 公共体と法律の演繹
    (2) フィヒテの契約理論
  二 公共体と主権
    (1) 基本法・憲法と公共体
    (2) 監督官制度と人民主権
 
第四章 ヘーゲルのフィヒテ自然法への批判
 
  一 ヘーゲルの批判
  二 フィヒテの立場からの反批判の可能性
 
第五章 国家と経済『封鎖商業国家』論
 
  一 『自然法の基礎』における生存権・労働権の保障
  二 『封鎖商業国家』での権利保障
  三 「封鎖商業国家」という政策
    (1) 封鎖の必然性
    (2) 「封鎖商業国家」の思想的文脈
  四 カントとの対比
    (1) カントの国際関係論
    (2) フィヒテの国際関係論
 
    第三部 中期フィヒテの社会哲学「国民」と「国家」
 
第一章 後期思想への重要な媒介としての『道徳論の体系』
 
  一 『道徳論の体系』における他なる理性的存在者の演繹
  二 「使命」と一つの理性
  三 フィヒテの「社会」概念
    (1) 理性的存在者の相互作用
    (2) 教会
    (3) 国家
    (4) 学識者の共同体
 
第二章 身分と相互作用
         『道徳論の体系』における義務論と『フリーメイソンの哲学』の考察
 
  一 『道徳論の体系』における義務論
  二 法的状態の内面的動機としての義務
  三 身分の相互作用と相互尊敬の義務
  四 フィヒテとフリーメイソン
  五 『フリーメイソンの哲学』における「小社会」論
    (1) 分業の疎外克服としての「小社会」
    (2) 階級・身分の相互作用・相互表現の場としての「小社会」
 
第三章 個体を生かす類『現代の根本特徴』における「絶対国家」論
 
  一 生き生きとした相互対話
  二 個と全体の一致前提としての『道徳論の体系』
  三 『現代の根本特徴』における「絶対国家」論
    (1) 理念としての「絶対国家」
    (2) 市民的自由と政治的自由
    (3) 目的としての文化
    (4) 活気ある相互作用と市民自治
 
第四章 フィヒテの世界市民主義的愛国心『愛国者とその反対』
 
  一 時代の激流の中で
  二 『愛国者とその反対』の基本論点
    (1) 世界市民主義(コスモポリタニズム)と愛国心
    (2) ドイツ的なもの=普遍性の優位
    (3) 戦争状態
    (4) 国民教育と国民の独立
 
第五章 『ドイツ国民に告ぐ』におけるフィヒテの社会哲学
 
  一 アビザデー論文への批判
  二 フィヒテとユダヤ人
  三 ゲルナーの「民族」概念
  四 歴史的文脈から見る「ドイツ国民」概念
  五 フィヒテの国民教育論
    (1) 絆を結びなおすための教育
    (2) 知識階級と民衆との相互作用「民衆の中へ(ヴィ・ナロード)」
    (3) 共同体としての学校
    (4) 国家による「人間の安全保障」としての公教育
  六 フィヒテの「都市の論理」
    (1) 規範としての中世自由自治都市
    (2) プラーニッツの「中世自由都市」論
  七 形而上学的存在としての「ドイツ国民」
    (1) 皮相な合理主義に抗して
    (2) 神的生命の体現としての「国民」
  八 ドイツ国民の共和国と人民主権
    (1) フィヒテの共和制志向
    (2) 人民主権にもとづく「国民」概念
    (3) 時代への影響
    (4) 補遺草稿断片『二二世紀のドイツ人の共和国』について
 
第二中間考察 『一八一〇年の意識の事実』における共同性と個体
 
  一 普遍的な思惟における個体化
  二 他者の実効性の産物の知覚=「べきでない」
  三 究極目的からの規定
  四 個体の重視
 
    第四部 後期フィヒテの社会哲学
 
第一章 監督官制度と主権の根拠『一八一二年の法論』についての考察
 
  一 フィヒテは監督官制度を否定したのか?
  二 法の構成は神の世界統治である
  三 監督官制度の可能性
    (1) 憲法創造の可視化
    (2) 政治的判断力
 
第二章 フィヒテの戦争論
         『国家論』(一八一三年)第二章「真の戦争の概念について」の考察
 
  一 戦争についてのこれまでのフィヒテの見解
  二 二つの戦争演説
  三 「真の戦争の概念について」における国家観と自由の概念
    (1) 財産をもつ者たちの道具的国家
    (2) 「真の戦争」の目的
    (3) 「自由と権利の共和国(ライヒ)」という理念=自由こそ神なり
 
第三章 「自由への教育」
         『国家論』(一八一三年)第三章「理性の国の設置」についての考察
 
  一 教育としての権利概念
  二 教師集団の統治
  三 「自由への教育」
    (1) 賢者の支配
    (2) ありうる批判への回答
    (3) 「自由への教育」
    (4) 根源的な自由の権利『一八一二年の法論』から
 
第四章 『国家論』における宗教と国家
 
  一 フィヒテは神政政治を主張したのか?
  二 「旧世界」の権威宗教と国家
  三 「新世界」のキリスト教と国家
  四 キリスト教国家による「自由への教育」
  五 『現代の根本特徴』におけるキリスト教と国家の関係
  六 理性の宗教
 
結語(エピローグ)
 
 あとがき
 
 文献
 
 主要人名索引/事項索引

著者紹介

清水 満(しみず みつる) 

1955年対馬に生まれ育つ。
公務員ののち,1982年鹿児島大学法文学部(倫理学専攻)卒。
1988-1989年ドイツ・エッセン大学にプロモベントとして留学。
1991 年九州大学大学院文学研究科(倫理学専攻)博士課程単位取得退学。
2011 年北九州市立大学社会システム研究科(思想文化領域)博士後期課程早期修了。博士(学術)。
予備校講師。九州女子大学,筑紫女学園大学非常勤講師。
日本グルントヴィ協会(教育市民運動ネットワーク任意団体)幹事。
著書に『改訂新版生のための学校』(新評論)『共感する心,表現する身体』(新評論),共著に『表現芸術の世界』(萌文書林),編訳書に『コルの「子どもの学校」論』(新評論)など。

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