デモクラシーという作法スロヴァキア村落における体制転換後の民族誌

著者名
神原ゆうこ
価格
定価 4,500 円 (税別)
ISBN
978-4-7985-0169-7
仕様
A5判 上製 368頁 C3036
発行年
2015年11月
その他
第6回 九州大学出版会・学術図書刊行助成 対象作
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内容紹介

1989年に社会主義からの体制転換を経験し、現在はEU加盟国となっているスロヴァキア共和国では、2000年代以降、EUを基準とした地方自治や市民参加のルール作りが進められてきている。体制転換以降、デモクラシーという「作法」に自らを適応させながら行われてきた市民活動は、コミュニティ内のモラリティを活用しつつ、人々の政治的な価値観に静かな変容をもたらしてきた。
本書は、そのような状況下における西部国境地域の村落におけるアソシエーション活動への参与観察と、人々へのライフヒストリーの聞き取りから得られたデータをもとに考察を進め、ローカルなレベルにおける「市民社会」の萌芽の存在と、それに伴うコミュニティの変質に注目したものである。

目次

序 「革命」のあと
 
   第1部 体制転換を取り巻く諸概念の検討
 
第1章 文化人類学が体制転換を扱うことの可能性
 
 1 体制転換後のスロヴァキア社会
 2 ローカルな場における政治的価値観の検討にあたって
 (1)時代の象徴としてのデモクラシー/民主主義
 (2)東欧の体制転換と市民社会についての理解
 (3)ポスト社会主義の人類学における市民社会の位置づけ
 (4)アソシエーションへの注目
 (5)公共性に関する人類学的問い
 (6)複層的な市民社会を支える価値観を考察するために
 3 研究方法
 (1)調査について
 (2)社会主義の経験を分析するということ
 
第2章 現地の人々にとっての市民社会とアソシエーション
 
 1 スロヴァキアにおける市民社会論の所在
 (1)体制転換時に出現した「市民社会」についての理解
 (2)「輝かしい過去の市民社会」を支えたアソシエーション活動について
 (3)アソシエーションの再編を経て
 2 社会主義時代における市民社会の存在可能性
 3 アソシエーション活動に託す希望
 (1)体制転換後のスロヴァキアのアソシエーションを取り巻く状況
 (2)オルタナティブな市民社会の理解をめざして
 
   第2部 国境地域の村落の人々の生活変化とデモクラシーの自覚
 
第3章 スロヴァキア西部国境地域における人々の生活の変容
 
 1 スロヴァキア西部国境地域の概観
 2 調査地について
 (1)現在の状況
 (2)歴史的背景
 3 「断絶」の時代の記憶
 (1)越境の制限と監視の経験
 (2)アソシエーションの再編
 4 有刺鉄線の撤去後
 (1)体制転換後の国境地域
 (2)越境移動の再開
 (3)移動しない人々の存在
 5 ヨーロッパ地域統合時代の国境地域
 (1)EU時代における労働移動
 (2)国境地域協力の可能性
 (3)越境のありかたの変容
 
第4章 自覚されるデモクラシーとつながりの再生  パヴォル村を事例として  
 
 1 「革命」の時代が生んだ価値観
 (1)村落の「革命」
 (2)村落における実践者の立場
 (3)村における「革命」の記憶
 2 新しい隣人との交流とその共有
 (1)橋がつなぐ対話と交流
 (2)活動の継続性と意味の転換
 (3)協力の経験とその共有
 3 時代を担う経験
 (1)自由選挙後
 (2)デモクラシーの不安定なかたち
 (3)「革命」の到達点
 
第5章 国境の開放としたたかな熱狂  リエカ村を事例として  
 
 1 国境の開放と「革命」のずれ
 (1)「革命」と社会主義への憧憬
 (2)国境の開放の文脈と「革命」の文脈の切り離し
 2 アソシエーションの連携の契機としての地域交流
 (1)橋の存在と交流
 (2)リエカ村民族舞踊団
 (3)連携を支える現場
 3 ボランタリーな活動のポテンシャル
 
   第3部 「自治」の時代の人々にとってのデモクラシー
 
第6章 ネオリベラリズムの時代の自治/「自治」
 
 1 地方分権化と「自治」
 (1)地方分権の時代へ
 (2)二つの自治/「自治」
 2 「自治」の模索
 (1)スロヴァキアの地方分権化プロセスと新たな「自治」のはじまり
 (2)求められる「自治」とは
 (3)自助努力と「自治」の相違
 3 リエカ村の「自治」と自治の間の可能性
 (1)「自治」への反発の局面
 (2)「自治」と資本主義的な思考
 (3)村落における「自治」がもたらす市民社会への経路
 
第7章 「自治」の時代の自律性を支えるモラリティの存在
 
 1 「自治」を支えるアソシエーションのシステムと村落
 2 「自治」と自律性  パヴォル村における新しい動向  
 (1)パヴォル村におけるアソシエーション活動の状況
 (2)自律的な活動のジレンマ
 3 村のための「自治」と村のためのモラリティ
 (1)市民的な自発性とモラリティの境界
 (2)「村のため」という言葉の含意の差
 (3)作法とモラリティ
 
結論 デモクラシーという作法
 
 あとがき
 
 注
 
 文献一覧
 
 年  表
 
 地  図
 
 索  引
 
<コラム>
 
1 社会主義時代までのスロヴァキア略史
2 中欧を移動する人々
3 チェコスロヴァキアの分離とその後
4 民族舞踊団と村の年中行事:メイポールとヤンの焚火
5 キリスト教と村の年中行事
6 読書案内

図表目次
 
 
図1 スロヴァキアおよび周辺諸国の失業率
図2 市民社会論の視点
図3 NGO活動内容の比較
図4 NGO財源の比較
図5 VPNの分裂
 
地図
 
地図1 戦前のスロヴァキア―オーストリア国境を越える主な経路
 
 
表1 スロヴァキア国民戦線(Národný Front SSR)を構成するアソシエーション一覧
表2 サードセクターを支えるアソシエーションの活動内容
表3 ザーホリエ地域の職業別人口割合
表4 パヴォル村の人口と年齢構成
表5 リエカ村の人口と年齢構成
表6 リエカ村の主な産業と各会社の従業員数
表7 リエカ村の労働者の構成
表8 リエカ村以外で働く人々の行先
表9 パヴォル村における第一共和国以前のアソシエーション
表10 リエカ村における第一共和国以前のアソシエーション
表11 社会主義時代のパヴォル村の主な就業機会
表12 パヴォル村における活動中の主なアソシエーション
表13 1990年6月スロヴァキア総選挙政党別得票率
表14 パヴォル村の村議会議員選挙結果
表15 リエカ村の村議会議員選挙結果
表16 リエカ村民族舞踊団の年間スケジュール
表17 リエカ村における活動中の主なアソシエーション
表18 スロヴァキアの自治体の規模と人口割合
表19 権限移譲の計画
表20 公共サービスの管轄
表21 調査地への主な経済的支援(EU関連)
 
写真
 
写真1 スロヴァキアの体制転換推進派政党「暴力に反対する公衆(VPN)」発行の新聞(新聞記事1)
写真2 スロヴァキア・ザーホリエ地方新聞(新聞記事2)
写真3 かつてのモラヴァ川の渡し船
写真4 かつてのリエカ村の橋と国境検問
写真5 1994年から2008年まで使用された国境検問所
写真6 現在のパヴォル村の国境の橋
写真7 現在のニジナー村の国境の可動の浮橋
写真8 オーストリア国境通過のための許可証
写真9 スロボダ氏が村役場そばに貼ったプラカード
写真10 モラヴァ川に向かって国境警備地域を歩く人々の列
写真11 ノイドルフ村との合同イベント「昔のスロヴァキア―オーストリアの結婚式」のポスター
写真12 EUからの支援を得て建設されたパヴォル村の橋
写真13 EUからの支援を受けたことを示す石板
写真14 パヴォル村の上水道工事がEUの支援を受けたことを示す石板
写真15 EUからの支援を受けて改装されたリエカ村の文化センター「文化の家」
写真16 EUからの支援を示す表示
 
巻末資料
 
別図1 中央ヨーロッパ地図
別図2 調査地周辺拡大図
 
別表1 スロヴァキアと周辺諸国の年表
別表2 パヴォル村とチェコスロヴァキアの体制転換期(1989年11月~1990年11月)詳細年表
 
見返し
 
スロヴァキア歴史地図

著者紹介

神原ゆうこ(かんばら ゆうこ) 北九州市立大学基盤教育センター准教授
 
筑波大学第一学群人文学類卒業,九州大学大学院比較社会文化学府修士課程修了,
スロヴァキア政府奨学金生としてコメニウス大学留学を経て,
2011年3月に東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。
北九州市立大学基盤教育センター講師を経て,2013年4月より現職。
専門は文化人類学,中東欧地域研究。
 
主な論文に,
「スロヴァキアにおける文化人類学と社会主義:政治的イデオロギーの作用に関連して」
 (『ポスト社会主義人類学の射程(国立民族学博物館調査報告78)』高倉浩樹・佐々木史郎 編,
  pp. 165-194,国立民族学博物館,2008年),
「『共生』のポリシーが支える生活世界:スロヴァキアの民族混住地域における言語ゲームを手がかりとして」
 (『年報人類学研究』5:45-71,2015年)
などがある。

学術図書刊行助成

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