内容紹介
近代日本のなかで主要な政治勢力の一翼を担った帝国陸海軍は、太平洋戦争の敗戦とともに「解体」を余儀なくされ、政治・社会の表舞台から姿を消した。しかし、このことは旧軍の政治的・社会的な一掃を意味せず、対日占領を挟む戦後史のなかで、一部の組織や制度は「再編」されて存続した。こうした過程を〈帝国陸海軍の戦後史〉としてとらえた場合、旧軍エリート(概ね終戦時に佐官級以上であった職業軍人)の政治的な言動は、どのように位置付けることができるのであろうか。
本書では、かかる問いに対して、三つの視点 ? GHQの対日占領を下支えした復員組織職員の動向と役割の解明(第一章・第二章)、?「経済的非武装化」としての軍人恩給廃止の衝撃とその反動(第三章・第四章)、? 対日再軍備過程における旧軍エリートの認識・活動とその影響(第五章) から考察を進めていく。復員・恩給・再軍備をめぐる旧軍エリートの動向を通じて、アクターとしての特質や、彼らの行動を支えた構造的な背景や要因、さらには政策への影響等も含めて、その実態を広く解明する。こうした試みは、占領史・戦後史研究で等閑視されてきた、旧軍エリートの「政治性」を浮き彫りにする契機となろう。