日本社会と継承語教育 多文化・多言語環境に育つ子どもたち
内容紹介
本書のねらいは、継承語や母語・母文化が当事者やその家族、民族にとってのみならず、日本社会にとっても重要かつ必要な文化資源・言語資源であることを様々な事例をもとにひも解いていくことである。このため、本書では、継承語と継承語教育について、法制度・政策、文学・心理学、言語習得・学習動機、異文化コミュニケーション、継承語教育理論、教育実践、人権といった様々な領域から切り込んでいく。
序では、日本の法制度において多文化・多言語環境で育つ子どもに対する平等性・公平性をもった学習権保障が抜け落ちている点を指摘し、日本にも行政介入型の支援の仕組み、条件整備の議論を進めるべきことを提言した先行研究をもとに日本型モデルの開発につき検討した。
第1章では、「日本語文学」の書き手という側面から、日本文学研究と継承語概念との関係に切り込み、従来の言語習得研究の観点からは見えなかった文学作品における継承語の位置づけを提示している。近年注目をあびているトランスランゲージ文学を継承語の観点から捉えようとしている点も、本書の読者に、継承語とは何かを知るための道案内をする役割も果たしている。
第2章から第5章(第1部)では、「継承語から見えてくる親の意識・子どもの自己形成・アイデンティティの変容」について報告する。
第2章では、中国人母親へのインタビュー調査のデータを元に、継承語の教育と継続的学習において適切な目標を設定することや学校や地域社会からの明示的なサポートが不可欠な役割を果たすことが示唆されている。この事例により継承語教育が家庭内だけで完結できる性質のものではなく、社会との関係においてこそ展開されるものであることが問いかけられている。
第3章では、親子中国語母語教室への参加による親の意識変容、特に中国人の母親と日本人の父親の違いに焦点を当て、中国人の母親が当初抱いていた家族間の異文化コミュニケーションの不安や葛藤は、母語教室での活動や家族、周囲の理解を通して緩和され、自身の言語的・文化的資産価値に対する再認識がなされていくことがインタビュー調査の分析により示されている。一方で、日本人の父親と母親の間での不安や葛藤の共有が進んでいない可能性も示唆されている。
第4章では、中国にルーツを持つ大学生のライフストーリーからアイデンティティの形成要因を探っている。その結果からは、成長過程で自身のルーツを個性と捉え、ありのままの自分を受け入れてくれる家族や仲間の存在がアイデンティティ形成にプラスに働くことがわかった。一方、社会的・文化的要因がアイデンティティのネガティブな形成要因として直接的に子どもの成長を左右していることが示されている。
第5章では、中国朝鮮族の5人の中学生を対象にインタビュー調査を行い、中国朝鮮族の中学生は高い民族意識を抱えながら、生活場面や相手との関係に応じて柔軟に言語を使い分け、複雑な社会環境に適応していることが示された。また、中国語と朝鮮語の両言語の使用により、異文化理解力と適応能力が自然に高まり、継承語が果たす新たな役割ともいえる二文化併存的なアイデンティティが形成されていることが示されている。
以上から示唆されることは、継承語・母語・母文化の継承は、保護者の確固とした意志や家庭教育が軸となりながら、それだけで完結するものではなく、親族や友人等周囲の環境、学校教育や行政、地域の社会的・文化的な影響を強く受けながら成り立っていくものであるということである。また、複数の言語・文化の習得は、言語や文化への適応力や異文化理解力を自ずと高めることが具体的に示されている。
後半の第6章から第9章(第2部)では包括テーマを「継承語により照射される日本の社会・文化・教育の諸相」とし、実践例や事例等をもとに報告している。
第6章では、ネット社会で成長する北京、香港、台北在住の言語形成期後半の子どもたちを事例として、子どもたちがテレビやインターネット、漫画、本などのメディアを通して日本語や日本文化に触れる仮想空間と、実際のインタラクションが行われる現実空間を行き来し、それぞれの言語資源を有効に活用しながら言語空間を広げていく様子を縦断的・横断的な調査と量的・質的分析から明らかにしている。
第7章では、日本スリランカ子ども会とスリランカにルーツを持つ子どもたちを対象に行われている仏教をベースにした道徳教育およびシンハラ語の継承語教育を含む活動についての実践報告を行っている。本実践で取り入れている道徳教育・継承語教育には日本社会が抱える様々な社会問題解決を補う視点と同時に、より広い世界や複雑な社会に通じるグローバルな視点から子どもの育成を目指す保護者の意向や姿勢がうかがえる。この点において、継承語教育の国際社会に対する役割を広げる視点を提示している。
第8章では、福岡のベトナム語教室設立の経緯と、その後、子ども食堂に併設したベトナム語・英語・ネパール語の教室へと活動が展開された経緯について事例が報告され、日本における継承語教室の持続可能な運営という観点からの考察がなされている。継承語教室の持続可能な運営には、様々な要素が必要とされるが、持続可能性の最速の解決策となる学校教育における制度的保障は最もハードルが高い。このため、持続可能な継承語教室の形として、子ども食堂の運営に継承語教室を組み込むやり方を提案している。
第9章は、社会にとっての課題と継承語教育の役割との接点を検討し、継承語教育が日本社会をモノリンガルからマルチリンガル、すなわち多様性を許容し尊重する環境へと変える可能性について、継承語教育の国際比較と大学院での教育実践を元に提言している。なぜなら、複数の言語や文化を理解し、異なる言語・文化の仲介ができる多文化・多言語環境で育つ子どもには、多文化多言語社会としての日本の社会づくりを担うグローバル人材、マルチリンガル人材としての活躍が期待されるためである。
以上、後半の4つの論考からは、継承語を通して、日本の社会・文化・教育といった諸相が抱える課題があぶりだされるとともに、継承語と社会との接点の中から新たな継承語の役割が照射されている。つまり、ひとつは異なる言語・文化に対して決して寛容とは言えず、人への畏敬の念が薄れている日本社会の姿とともに、日本の学校教育に抜け落ちている心の平穏さや豊かさを育む教育を担うという役割である。そして、もうひとつは、そうした継承語教育を通して涵養される寛容度が高く、多様性を容認する姿勢は、個々人のウェルビーイングを高め、それがひいては、住みやすい地域づくりへと波及する役割を果たす。結語では、国際化とインクルーシブ教育の観点から日本社会と継承語教育について、現状の課題を共有し、継承語教育の今後を見渡し、全体のまとめとしている。
以上のように、本書では、継承語が日本社会にとって重要かつ必要な文化資源・言語資源であることを、具体的事例をもとに示しつつ、日本の社会的文脈の中に継承語教育を位置づけることをめざす。また、多文化・多言語環境で育つ子どもへの平等性・公平性をもった学習権保障を行うための法整備や日本型支援モデルをめざすとすれば、地域の住みやすさ、経済活性化と直結するウェルビーイングの指標をもとに、継承語教育を通したグローバル人材、マルチリンガル人材の育成をしていくことが、ひいては地方の経済活性化や住みやすい地域づくりに貢献できると考えるのが本書の立場である。
目次
序 日本社会と継承語教育 平等性・公平性の観点から
はじめに
日本の法制度において抜け落ちている平等性・公平性をもった学習権保障
経済格差から生じる教育格差に在留外国人散在地域はどう向き合うか
鍵は官民協働・長期戦略で取り組むウェルビーイングへの挑戦
本書のねらいと構成
第1章 ケイショウゴから考える 日本語文学研究と継承語
はじめに 「継承語」と文学
1.日本/日本語との距離
2.ナラティブ/物語の可能性
おわりに
第1部 継承語から見えてくる親の意識・子どもの自己形成・アイデンティティの変容
第2章 日本における継承語としての中国語教育
中国人母親へのインタビュー調査から見えてきたこと
はじめに
1.継承語とは
2.継承語教育の意義
3.日本における継承語教育の課題
4.インタビュー調査の概要
4.1 調査方法と調査対象者
4.2 調査の実施
4.3 調査対象者の家族構成と家庭内における言語の使用状況
5.インタビュー調査から見えてきたこと
5.1 継承中国語教育に対する親の態度と理由
5.2 家庭での教育方針と教育実践
5.3 子どもたちの中国語能力
5.4 学校からのサポート
6.おわりに まとめと考察
第3章 親子中国語母語教室への参加による親の意識変容
中国出身の母親と日本人の父親との比較を中心に
はじめに
1.母語と継承語
2.問題の所在
3.研究の内容と実施
3.1 親子中国語母語教室の実施
3.2 調査協力者と調査方法
4.テキストマイニングによる分析結果
5.結果
5.1 母親(中国人)の意識変容
5.1.1 父親(日本人)の協力姿勢による意識変容
5.1.2 子どもの中国語学習に対する教育意欲の向上
5.1.3 日本人の家族の理解と協力による意識変容
5.1.4 中国人の家族からのプレッシャーが軽減したことによる意識変容
5.1.5 言語資源・文化資本の価値に対する再認識
5.1.6 地域社会の言語的・文化的理解による孤立感の緩和
5.1.7 変化がなかった日本人夫に対する失望感
5.2 母親(中国人)の葛藤
5.2.1 子どもに複数言語を同時に教えることの不安
5.2.2 子どもの母語拒否に対する悩み
5.2.3 母語使用時に感じる周囲からの視線
5.2.4 日本文化と母文化の板挟みの辛さ
5.3 父親(日本人)の意識変容
5.3.1 妻の母語に対する教育的理解と協力
5.3.2 母語・継承語教育についての日本人の家族の理解促進
5.3.3 妻と子どもが持つ言語資源・文化資本の価値への理解と尊重
5.3.4 子どもの成長による母語・継承語教育の意欲向上
6.考察
6.1 母親(中国人)の調査結果の考察
6.2 父親(日本人)の調査結果の考察
おわりに
第4章 中国にルーツを持つ大学生のアイデンティティ形成要因
葛藤から自己受容へのライフストーリー
はじめに
1.問題の所在
2.調査概要
2.1 ライフストーリー・インタビュー
2.2 調査協力者
2.3 調査方法
3.Aのライフストーリー
3.1 保育園時代:他人との違いを嫌がる
3.2 小学校時代:中国にルーツを持つことに対する意識と葛藤の出現
3.3 中学校時代:中国にルーツを持つことに対する葛藤の顕在化
3.4 高校時代:アイデンティティの問題に目を背ける
3.5 大学時代:アイデンティティの確立と自己受容の形成
4.考察
4.1 アイデンティティの形成にネガティブな影響を与えた葛藤の要因
4.1.1 同調圧力が強い日本文化の影響
4.1.2 メディアによる中国のマイナスイメージの報道
4.1.3 異文化摩擦や差別発言に対する教師の経験不足
4.1.4 日本と中国における異文化理解の不足
4.2 アイデンティティの形成にポジティブな影響を与えた自己受容の要因
4.2.1 ありのままの自分を受け入れてくれる家庭環境
4.2.2 ルーツを個性として理解してくれる仲間の存在
4.2.3 自分と同じ境遇の子どもたちとの出会い
おわりに
第5章 中国延辺朝鮮族自治州の朝鮮族中学生の継承語に関する意識
アイデンティティ形成の視点から
はじめ
1.朝鮮族における継承語教育
1.1 朝鮮語は母語? それとも継承語?
1.2 朝鮮族の若者が置かれる異文化の形態
1.3 本章の着眼点
2.面接調査
2.1 調査協力者
2.2 調査方法
3.結果
3.1 朝鮮族中学生の言語選択への意識
3.2 複数言語使用の朝鮮族文化と民族意識への影響
3.3 朝鮮族中学生の異文化理解力と適応力への意識
3.4 朝鮮族中学生の朝鮮語や朝鮮文化への誇り
3.5 朝鮮族中学生の継承語使用に対する不安
4.考察
4.1 朝鮮語の習得と使用の実態および位置づけ
4.2 朝鮮族中学生における継承語の習得と使用およびアイデンティティ
4.3 多様な場で行われる朝鮮族若者の継承語習得と使用
おわりに
第2部 継承語により照射される日本の社会・文化・教育の諸相
第6章 中華圏における日本語の継承とトランスナショナル空間
仮想世界と現実世界をつなぐ言語資源
はじめに
1.先行研究
2.調査方法と調査対象
2.1 北京における縦断調査
2.2 北京・台北・香港における横断調査
3.調査結果 子どもの言語習得状況
3.1 北京における縦断調査
3.2 北京・台北・香港における横断調査
4.分析
4.1 北京縦断調査データの量的分析
4.2 北京・台北・香港の横断調査データの量的分析
4.3 北京縦断調査データの質的分析
4.3.1 仮想世界の言語資源
4.3.2 現実世界の言語資源
4.4 北京・台北・香港横断調査データの質的分析
5.考察
おわりに
第7章 シンハラ語継承語教育と道徳教育を基盤とした国際人材育成教室
保護者と子どもへのインタビューから見えてくること
はじめに
1.本教室の概要
1.1 本教室の目的と構成
1.2 本教室におけるスケジュール及び活動
1.3 本教室におけるこれまでの活動
1.4 本教室における課題と今後の展開
2.子どもと保護者へのインタビュー調査
2.1 調査目的
2.2 調査対象者
2.3 調査方法
2.4 調査結果と考察
2.4.1 子どもたちが本教室に通う目的についての考察
2.4.2 保護者が本教室に子どもたちを通わせる目的についての検討
おわりに まとめと今後の課題
第8章 日本における継承語教室の持続的な運営
福岡におけるベトナムルーツを持つ子ども向け継承語教室の事例から
はじめに
1.先行実践報告
2.継承語教室の持続可能性についての分析枠組み
3.福岡におけるベトナムルーツを持つ子ども向け継承語教室設立と増加の背景
4.福岡におけるベトナムルーツを持つ子ども向け継承語教育の実情
4.1 日本の団体が支援するベトナム語教室
4.1.1 ベトナムフェスティバル福岡実行委員会のベトナム語教室
4.1.2 福岡国際子ども食堂&居場所の体験活動としてのベトナム語教室
4.2 ベトナム政府が支援するベトナム語教室
おわりに 福岡におけるベトナムルーツを持つ子ども向け継承語教室の増加と今後の展望
第9章 継承語教育が日本社会を変える
多様性を尊重する環境への転換をめざして
はじめに
1.継承語と継承語教育
1.1 多文化・多言語を背景とする児童生徒へのまなざしの不在
1.2 将来を切り拓くことができない子どもの存在
2.子どもの将来を支える継承語教育
2.1 子どもの思考力の発達を支える継承語
2.2 母語・継承語支援・教育の現状
3.母語・継承語支援・教育の国際比較
3.1 米国における継承語教育
3.2 カナダの多文化主義と継承語教育
3.3 欧州連合(EU)の複言語主義と継承語教育
3.4 継承語教育の国際比較から示唆されること
4.大学院での教育実践から継承語教育を考える
4.1 PBL(Project Based Learning)型授業を通して考える地球的諸課題
4.2 教育実践を通してみえてきた継承語教育の課題
おわりに 社会にとっての課題と継承語教育の役割との接点
結語 日本社会と継承語教育
国際化とインクルーシブ教育の観点から
継承語教育の意義
継承語教育の課題と提言
著者紹介
<編 者>
松永典子(まつなが のりこ)序・第9章
九州大学名誉教授。九州大学・博士(比較社会文化)。高校教諭時代の青年海外協力隊(マレーシア・日本語教師)参加が多文化・多様性の豊かさや楽しさを知る原点となり、日本語教育、多文化共生教育に携わる。地域社会との連携活動を通して日本語指導が必要な児童生徒対象の教育研究会に参加する機会を得、子どもの日本語教育、継承語教育について学ぶ。それが縁で、「児童生徒等に対する日本語教師研修」(文化庁・現文部科学省)の運営委員やコーディネーター等、子どもの日本語支援者養成に関わる。日本社会の将来を支える子どもの教育、とりわけ日本社会の包摂性を高めるためには継承語教育が重要であると考える。
郭 俊海(かく しゅんかい)第2章・結語
九州大学留学生センター教授。シンガポール国立大学・Ph.D(応用言語学)。二人の子どもはシンガポール生まれ、家族とともに多様な言語や文化に囲まれた生活を送る中で、多様な言語や文化への関心を深めた。家族と来日後、家庭では母語と日本語のバイリンガル教育を実践しながら、福岡市中国人コミュニテイの週末母語学校の運営にも関わるなど母語・継承語教育の実施に取り組むが、その難しさや重要さを痛感。大学院の授業では、この課題が日本社会全体にとって重要であることを認識し、院生たちとともに多言語教育や継承語教育に関する議論を深めている。
柳瀬千惠美(やなせ ちえみ)第6章
元九州大学大学院比較社会文化研究院特別研究者。九州大学・博士(学術)。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒後、教職等を経て、1992年から20年あまり中国北京市在住。中国人元夫との間に生まれた2人の子どもの育児で国際結婚家庭特有の問題に悩むが、「中国人男性と結婚した日本人女性の会」と出会い、同じ悩みを抱えた人たちとの交流が始まる。そこで子どもに日本語や日本文化を伝えたいという母親が集まり子ども会活動を始め、現在もその活動は健在である。自身の子育てを振り返る中で「継承語」という言葉を知り、継承語に関わる母親たちの経験を役立てたいと考え、九州大学大学院に進学。学位取得後も継承語の研究に専念するため特別研究者として在籍、現在に至る。
<執筆者>
黄 正国(こう せいこく)第5章
九州大学留学生センター准教授。広島大学・博士(心理学)。2003年に私費外国人留学生として来日。日本語学校を経て、2005年に広島大学教育学部に進学。在学中は学生ボランティアとして広島県呉市の外国人子ども向け日本語教室で教育支援活動に携わる。大学院では広島大学大学院教育学研究科附属心理臨床教育研究センターの相談員として、不登校や発達障害の傾向がある外国人児童生徒とその保護者にカウンセリングを提供する経験を積む。現在は、3人の子どもの育児に日々試行錯誤しつつ、広島県および広島市の子どもアドボケイト活動のスーパーバイザーとして、外国人を含むすべての子どもたちの人権擁護にも取り組んでいる。
波潟 剛(なみがた つよし)第1章
九州大学大学院比較社会文化研究院教授。筑波大学・博士(文学)。日本と韓国の国際結婚家庭で三人の子育て真っ最中。大学院のときに韓国に一年留学し、大学教員になってからも、研究のため一年間の韓国滞在経験あり。そのため、夫婦の会話は完全日韓バイリンガル、と言いたいところだが、実際は、私が日本語で話して、それに対して韓国人の妻が韓国語で答えることもしばしば。そんな両親の姿を見ながら子供たちがどのように育つのか、関心を持って観察する毎日。ハン・ガンさんのノーベル文学賞受賞で、K-POPだけでなく、韓国の文学に興味を持つ人が増えたら良いなと思う今日この頃。比較文学・日本近現代文学が専門。
BUI THI THU SANG(ブイ テイ トウ サンゴ)第8章
一般社団法人福岡国際市民協会・代表理事。九州大学・修士(法学)、専門は行政理論。2007年に来日後、課外活動や社会活動としてベトナム文化紹介・ベトナム人コミュニティ助け合いの活動をしてきた。大学時代、ベトナム語の通訳者として別府市の小学校の授業に派遣されたことがある。2018年から2022年までベトナムフェスティバル福岡実行委員会の共同代表としてベトナムにルーツを持つ子ども向けベトナム語教室を運営し、ベトナム人の保護者向け就学ガイダンスや継承後教育セミナーを行った。同期間、個人的にベトナムにルーツを持つ小中高生の学習をサポートした。2023年に福岡国際市民協会を設立し、在福岡の外国にルーツを持つ保護者と子どもの支援活動に力を入れている。
藤本 悠(ふじもと ゆう)第3章
芸術文化観光専門職大学芸術文化・観光学部准教授。奈良大学文学部文化財学科を卒業し、同大学院文学研究科修士課程を修了。その後、同志社大学大学院文化情報学研究科で博士(文化情報学)を取得した。現在は情報系科目を担当し、地域文化の発展と情報技術の融合に関する研究や教育に取り組んでいる。特に人工知能(AI)やメタバースを活用し、地域文化や観光分野への応用可能性を探っている。また、最近では医療分野にも携わり、病理学や健康に関する情報を活用する方法についても研究を進めている。さらに、ICTを活用して多様な人々に情報を発信し、舞台芸術や観光、医療など幅広い分野で、地域社会との連携を深める活動を推進している。
姚 瑶(よう よう)第3章・第4章
芸術文化観光専門職大学芸術文化・観光学部講師。学生時代に日本語の美しさに魅了されて2004年に来日。福岡教育大学大学院教育学研究科修士課程修了後、九州大学大学院比較社会文化学府(現・地球社会統合科学府)にて博士(比較社会文化)取得。大学院在学中から留学生や外国人住民の日本語教育に携わる。現在は、兵庫県豊岡市多文化共生推進会議副会長、同市多様性推進・ジェンダーギャップ対策検討委員会委員等を務め、外国にルーツを持つ子どもたちや外国人住民の支援活動に関わっている。外国人保護者の相談を受ける中、母語・継承語教育の重要性を痛感。また、自身がバイリンガル子育てをする中でも日々悩みながら研究と実践を進めている。
S.M.D.T. Rambukpitiya(ランブクピティヤ、S. M. D. T.)第7章
久留米大学外国語教育研究所准教授。九州大学・博士(比較社会文化)。多民族国家スリランカ出身で母国の日本語教育に携わり、来日後は日本語教育と多文化共生を学び、母親・扶養者としての経験や熊本地震での外国人被災者の知見を生かし、講演やスリランカにルーツを持つ子供の継承語教育など幅広く活動中。研究対象は、日本と他国の感謝表現や地域の日本語教室における多文化共生、外国人保護者の視点から見た日本の学校文化。『学校と子ども、保護者をめぐる多文化・多様性理解ハンドブック』(金木犀舎)第4章を執筆。現在も子育て中の研究者として活動し、多文化共生社会の構築と母語教育支援に力を注いでいる。
李 娜(り な)第5章
信州大学グローバル化推進センター助教。九州大学・博士(学術)。中国の朝鮮族としてコリアにルーツを持つ自身の背景から、継承語教育や多文化共生の教育に関心を持つ。博士課程在籍中には、福岡市の地域日本語教室でボランティア活動に携わり、外国人と地域住民の交流を促進しつつ、日本語学習を支援する取り組みを経験した。現在は、日本語教育に加え、留学生向けの教員サポートデスクを担当し、学生の学びや生活に関する相談支援を行っている。母語や継承語教育の重要性を深く実感しており、言語を通じて多文化的なアイデンティティの形成を支援する教育活動に力を注いでいきたいと考えている。