将来世代学の構想 幸福概念の再検討を軸として

著者名
高橋隆雄 編
価格
定価 3,080円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0080-5
仕様
A5判 並製 336頁 C3010
発行年
2012年3月
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内容紹介

本書は,哲学・倫理学,政治哲学,法社会学,経済学,医学,看護学,政策学,紛争解決学などの幅広い分野から「将来世代学」という新しい学問分野を構想するものである。各々の学問の現在の課題を将来世代への責任と人間の幸福という観点から検討・統括することにより,社会の総体に関わるパラダイムの再検討を迫る。

目次

 はしがき
 
序章 鍵概念としての将来世代への責任と幸福概念
  はじめに
  1 将来世代への責任
  2 幸福概念の再検討
  おわりに  将来世代学の構想
 
   第I部 近代パラダイムとコミュニティ
 
第1章 脱近代パラダイム転換  私史としての同時代史研究から
  はじめに
  1 同時代史としてのパラダイム転換の研究
  2 パラダイム転換の諸相  近代を超えて
  おわりに
 
第2章 近代化と帰属の変容
  はじめに
  1 安保闘争期における「地域」の位置づけ
  2 「村」としての地域
  3 石牟礼道子の世界
  4 「場所」への帰属と公共空間
  むすびにかえて
 
第3章 コミュニティの持続可能性と人間の幸福  ソーシャル・キャピタルの視点で
  はじめに
  1 コミュニティの持続可能性の危機
  2 二一世紀型コミュニティの特徴
  3 コミュニティの創成
  むすびにかえて
 
第4章 理想都市から創造都市へ  二一世紀の幸福を支える都市の条件
  はじめに
  1 理想都市から新たな都市の構想へ
  2 創造都市とは何か
  3 創造都市の条件を考える
  おわりに
  追記:震災復興に寄せて
 
   第II部 震災・紛争解決・合意形成
 
第5章 「共災」の時代へ向けて  大震災への思想的応答の試み
  はじめに
  1 清水幾太郎の憤り
  2 関東大震災と天譴観念
  3 共災の時代
  4 犠牲者の生とその意義  レクイエムとして
  おわりに
 
第6章 震災対応と再生にかかる紛争解決学からの提言
  はじめに  紛争解決学とは何か
  1 震災や原発災害をめぐって起こっている人間関係の崩壊や葛藤
  2 なぜ、震災後や環境災害後に人が傷つけあったり対立したりすることになるのか
  3 紛争解決学からの提言  震災後の紛争予防と解決そして平和構築
  4 被災者の対話支援から見えてきたこと  幸福概念と民主主義の再検討
  おわりに
 
第7章 新しい紛争解決援助システムの可能性  対話による交渉と対話促進型調停をめぐって
  はじめに
  1 紛争解決過程における対話による交渉
  2 公正な第三者への役割期待とその変容
  3 将来における対話促進型調停の可能性
  おわりに  これからの課題
 
第8章 納得と合意形成の経済学序説  市場メカニズムから信頼メカニズムへ
  はじめに  問題の所在
  1 経済パラダイムの変遷と「経済取引」としての個人・社会
  2 近代市場メカニズムは「世代」の問題をどうあつかってきたか
  3 こうした近代経済社会の特質は、社会のリスクをどう増幅させてきたか
  4 将来世代との共生への方策
  5 社会連携の構築は可能か
  6 環境適応型(合意形成型)将来世代の設計  震災復興と社会デザイン
  おわりに:個人優先社会を超えて  納得と信頼が将来世代学にもたらすもの
 
第9章 政策形成における知識と回路
  1 問題の所在
  2 三つの知識
  3 知識の生成
  4 知識の回路
  まとめ
 
   第III部 将来世代と医療
 
第10章 脳神経科学の現在と将来
  はじめに
  1 形而上学的人間観と、素朴心理学的人間観
  2 心身二元論(素朴心理学)に基づく、自然科学の発展
  3 神経科学の発展と、意識の神経相関物研究
  4 脳神経科学の広がり
  5 脳神経科学者による人間観の再構築と、形而上学的・存在論的問題
  6 哲学・形而上学と脳神経科学・認知科学の融合的発展と脳神経科学倫理
  7 脳神経科学の発展と社会的影響
  8 将来展望
  補遺:自然科学者の社会に対する責務
  おわりに
 
第11章 医療における世代間問題  「未来に手渡したい医療」
  はじめに
  1 過去を振り返る
  2 現在の医療を見詰め直す
  3 未来を想像する
  4 未来に手渡したい医療を実現するために
 
第12章 二一世紀に必要とされる看護ケア
  1 大震災と看護
  2 現在の医療・看護の状況と人々のQOL
  3 看護の歴史とQOLとの関係
  4 看護ケア・看護学における自然科学と臨床の知
  5 医療における疾病モデルと生活支援・体験支援モデル
  6 二一世紀に必要とされる看護ケア

著者紹介

高橋隆雄(たかはし たかお)熊本大学大学院社会文化科学研究科教授(はしがき,序章,第5章)
 
岩岡中正(いわおか なかまさ)熊本大学法学部教授(第1章)
 
伊藤洋典(いとう ひろのり)熊本大学法学部教授(第2章)
 
上野眞也(うえの しんや)熊本大学政策創造研究教育センター教授(第3章)
 
渡部 薫(わたなべ かおる)熊本大学大学院社会文化科学研究科教授(第4章)
 
石原明子(いしはら あきこ)熊本大学大学院社会文化科学研究科准教授(第6章)
 
岩淵 泰(いわぶち やすし)岡山大学地域総合研究センター助教(第6章)
 
廣水乃生(ひろみず のりお)熊本大学大学院社会文化科学研究科・博士後期課程(第6章)
 
吉田 勇(よしだ いさむ)熊本大学名誉教授(第7章)
 
安川文朗(やすかわ ふみあき)熊本大学大学院社会文化科学研究科教授(第8章)
 
秋吉貴雄(あきよし たかお)熊本大学大学院社会文化科学研究科教授(第9章)
 
粂 和彦(くめ かずひこ)熊本大学発生医学研究所准教授(第10章)
 
浅井 篤(あさい あつし)熊本大学大学院生命科学研究部教授(第11章)
 
宇佐美しおり(うさみ しおり)熊本大学大学院生命科学研究部教授(第12章)

学術図書刊行助成

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