古代ローマ人の危機管理

著者名
堀 賀貴 編
価格
定価 1,800円(税別)
ISBN
978-4-7985-0301-1
仕様
四六判 並製 242頁 C1052
発行年
2021年5月
その他
姉妹編『古代ローマ人の都市管理
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内容紹介

「人類の歴史の中でもっとも平和な時代はいつか?」という問いに答えるのはとても難しい。時代だけでなく、場所も限定して考えなければならないが、前1世紀から後3世紀にかけて栄華を誇り、パクス・ロマーナと呼ばれる平和を実現した古代ローマ帝国は、その有力な候補と言えよう。本書では、その古代ローマ帝国の「平和な時代」を、「戦争のない時代」ではなく、「危機管理に成功した時代」であったと捉える。古代ローマの歴史家、ウェッレイウス・パテルクルスは、アウグストゥス帝が帝国の隅々までもたらした平和によって、人々は追いはぎ、山賊の恐怖から解放されたと書き記しているが、だからといって無防備で郊外を歩くことができたわけではなく、様々な制度によって、あるいは皇帝の威光によって、犯罪の抑止が可能になったと考えるべきであろう。強盗、泥棒などの犯罪、あるいは水害や火災に対してもリスクマネジメントが効いていた時代なのである。

本書では、古代ローマを代表する3つの遺跡  後79年のウェスウィウス火山の噴火によって滅んだポンペイ、ポンペイと同時に火砕流によって生命を奪われたのちに泥流の下に沈んだ海岸に広がる街ヘルクラネウム、ティベリス川河口の要塞から発展した古代ローマの外港で後3世紀に最盛期を迎えたオスティア  での長年にわたる現地調査にもとづき、現代にも通ずる盗難・火災・洪水・疫病といった危機に直面した古代ローマ人が、それらにどのように対処したのか、そして文明の象徴でもあった都市・建築をどのように守ったのかについて、リスクマネジメントの観点から読み解く。また、各リスクに関連して、古代ローマの扉と鍵、窓と窓ガラス、建設現場について、トピックとして取り上げる。

文献や遺物から歴史を組み立てる歴史家、考古学者とは異なり、都市や建築、とくに実際に残っている遺跡から、危機管理を読み解いていくのが本書のアプローチである。レーザースキャニングや写真測量といった最新の計測技術を使って得られた実測データをもとにした水没シミュレーション、浴場の断面図、火災の痕跡写真など、多数の写真・図版を掲載し、ビジュアルから古代都市の実像に迫る。本書で取り上げた古代ローマ人が残した事例には、もちろん成功例だけでなく失敗例もあるが、彼らの「知恵」と「工夫」は、現代の我々にとっても示唆的である。

目次

 略号一覧
 地図
 
 はじめに
 
第一のリスク 盗難
 
 ポンペイの都市住宅
 ポンペイ住宅の敷居と鍵
 ポンペイ住宅の動線計画
 店舗付き住宅とニュースタイル住宅の登場
 安全か快適か まだらな都市景観
 
トピック1 古代ローマの扉と鍵
 
 鍵を復元する 考古学的な証拠から
 扉の規格 基本的なシャッター戸の形式
 石製敷居 生き残った証拠
 扉の鍵、金属製付属品、およびその他の防犯装置
 店舗の鍵
 邸宅を守る
 
トピック2 古代ローマの窓と窓ガラス
 
 窓と防犯
 透明板の登場
 窓ガラスの技法、製造地、流通、価格
 防犯が必要な現代の窓ガラスを生んだ古代ローマ
 
第二のリスク 火災
 
 古代ローマの建築規制と文献に見る都市住宅
 古代ローマ建築の実際
 火災に対するリスクマネジメント
 石のように硬いローマ
 
トピック3 古代ローマの建設現場
 
 古代の「建設現場」
 建設資材の生産と輸送
 建設現場での事故
 危機の最小化
 財産=都市の所有者を守るために
 
第三のリスク 洪水
 
 オスティアを構成する建物群
 オスティアにおけるかさ上げ
 洪水に対するクライシスマネジメント
 安全基準としての神殿
 
第四のリスク 疫病
 
 古代ローマを襲った疫病
 リスクとしての人口
 庶民生活における密接、密集、密閉
 古代ローマ浴場の真実、浴場は清潔か不潔か?
 新しい浴場の登場
 健康的「共同浴場」としてのテルマエ
 テルマエへの大量給水
 
 おわりに マネジメントの臨界点
 
 エピローグ

著者紹介

堀 賀貴(ほり よしき)第一、第二、第三、第四のリスク
京都大学博士(工学)、MPhil(マンチェスター大学)
京都大学大学院工学研究科建築学専攻博士後期課程単位習得の上退学、山口大学講師、
准教授を経て、2003年より九州大学大学院人間環境学研究院都市・建築学部門教授。

エヴァン・プラウドフット(Evan Proudfoot)トピック1
DPhil(オックスフォード大学)
ミシガン大学卒業後、オックスフォード大学リンカーン・カレッジ修士、博士課程で
古代ローマ考古学を学ぶ。

藤井慈子(ふじい やすこ)トピック2
博士(史学、上智大学)
上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了、日本学術振興会特別研究員、
イタリア政府奨学生を経て、現在イタリアを拠点に活動するローマ・ガラス史家。

ジャネット・ディレーン(Janet Delaine)トピック3
Ph.D.(アデレード大学)
レディング大学講師、上級講師を経て、2005年よりオックスフォード大学ウォルフ
ソン・カレッジ准教授。2019年より同カレッジの古代世界研究クラスターのディレ
クターを務める。

その他

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