明治維新を問い直す 日本とアジアの近現代

シリーズ名
地球社会ライブラリ 1
著者名
マシュー・オーガスティン 編
価格
定価 1,980円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0286-1
仕様
四六判 並製 228頁 C1321
発行年
2020年4月
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内容紹介

令和という新しい時代を迎えた現代において、明治維新を考え直すことには、どのような意味があるのだろうか? 平成の終焉が決まった2018年は、ちょうど明治維新150周年の節目の年であった。この年の前後から、再び明治維新を問い直そうという動きが、日本のみならず世界各地で活発になったが、その一環として、九州大学大学院地球社会統合科学府は、「九州から見た明治維新とアジアの近代化」と題した明治維新150周年記念国際シンポジウムを主催した。

本書は、このシンポジウムに参加した内外の研究者が、明治維新を日本とアジア、および世界との連関のなかに位置づけるとともに、現在に至るまでの150年と関連づけることにより、その意味を再考しようとするものである。第Ⅰ部ではまず、物語としての歴史に着目し、これまで語り継がれてきた明治維新という神話について、日本内外の広く長い時空的視点から問い直す。この神話に描き出された歴史像の変遷をたどり、21世紀における現代的な語りをどう理解すればよいのかが探求される。第Ⅱ部では、明治維新と辛亥革命およびロシア革命との関係性について検討し、中国のみならずチベット、モンゴル、満洲、そしてロシア極東地域を日本の近代史と繋げる議論が展開される。第Ⅲ部では、九州とその周辺地域からナショナル・ヒストリーを捉え直す試みとして、関門海峡から見た幕末日本の国際環境、「琉球併合」を経て帝国に組み込まれた沖縄の近代、日本人女性作家による台湾の文学表象、について検討を行う。

従来とは異なる視点から、多角的・包括的に日本とアジアという地政学的領域を捉え直し、明治維新の歴史的な位置づけを探る、挑戦的な試み。

目次

 はじめに
  明治維新が意味するもの/本書の目的と構成

   第Ⅰ部 明治維新という神話

第1章 単純な物語の危険性  明治維新百五十周年に際して

 はじめに
 一 公共の場における歴史家
 二 単純な物語の危険性
 三 長い維新
 四 明治という近代の形成
 五 地震からの物語
 六 現在における維新

第2章 中国から見た明治維新認識

 はじめに  明治維新百年(1968年)と百五十年
 一 中国における明治維新観の変容
  明治維新=アジアの近代化モデル?/日中近代化比較論と同時代性/
  現在の中国における明治維新評価/清朝末期の明治維新観/
  民国時期の明治維新論──戴季陶の議論/蔣介石の明治維新論/
  「歴史戦」における日本の明治維新像/中国における明治維新像の揺らぎ
 二 近代日中関係史をいかに描くのか
  「日本=近代/清=伝統」を超えて/日清修好条規/日清双方の多様な学びと理解/
  日清間の外交・軍事バランスについて/条約改正をめぐる議論

第3章 明治維新の賞味期限  語りの変遷をめぐって

 はじめに
 一 明治百年と明治百五十年  特別な歴史としての明治維新とその終わり
  明治百五十年の〈理念〉/明治百年との違い
 二 二つの引照基準  明治の終わりと昭和の初め
  明治を共に生きる?/維新を知らない子供たち/原点史観
 三 戦後ナショナリズムと維新観  顚倒の修正
  竹内好における明治維新とナショナリズム/アジアの〈革命〉とナショナリズム/
  藤田省三と「維新の精神」
 おわりに  明治百五十年への視点

   第Ⅱ部 連鎖する革命

第4章 清末中国の政治改革と明治維新

 はじめに
 一 黄遵憲の明治維新観
 二 康有為の明治維新観
 三 梁啓超の明治維新観
 四 明治近代国家の諸施策と戊戌の変法
 おわりに

第5章 日本・チベットの邂逅と辛亥革命  チベット仏教圏の近代と日本仏教界

 はじめに
 一 チベット仏教圏の広がりと清朝
  チベット仏教の成立と展開/モンゴル・満洲への拡大と「ダライ・ラマ」
 二 ダライ・ラマ13世と日本
  日露戦争下での接触/明治日本の仏教界とチベット/寺本婉雅とチベット/
  ダライ・ラマ13世の五台山・北京訪問と寺本婉雅
 三 辛亥革命と日本・チベット関係
 おわりに

第6章 十月革命と明治維新

 はじめに
 一 現代ロシアにおけるロシア革命への評価
 二 大正期日本におけるロシア革命の受容と明治維新の再評価
  二月革命/十月革命/近代化革命としての明治維新とロシア革命
 おわりに

   第Ⅲ部 押し寄せる近代

第7章 接続される海  幕末の九州、瀬戸内海、日本

 はじめに
 一 開港と水路情報
 二 長崎における海軍伝習と測量
 三 接続される九州・瀬戸内海の航路
 四 瀬戸内海封鎖の可能性
 おわりに

第8章 日本帝国と沖縄近代  帝国化の起点と同化主義の問題を中心に

 はじめに
 一 問題意識の敷衍
 二 帝国にして皇国たる日本
 三 帝国化の起点
 四 沖縄の同化、日本帝国の同化主義
 おわりに

第9章 真杉静枝と坂口䙥子の台湾表象  「自伝的小説」に描かれた日台植民地史

 はじめに
 一  「家族史」としての植民地台湾  真杉静枝の「花樟物語」三部作
  「花樟物語」にみる在台日本人像/「花樟」と植民地台湾
 二  「自己表象」と植民地台湾  坂口䙥子の「蟷螂の歌」
  植民地台湾への自己投影/「支配者」と「被支配者」との機微/
  台湾プロレタリア作家  楊逵と葉陶夫婦像
 おわりに

著者紹介

マシュー・オーガスティン(Matthew Augustine)はじめに
九州大学大学院比較社会文化研究院准教授/Ph.D. in History(コロンビア大学)

キャロル・グラック(Carol Gluck)第1章
コロンビア大学ジョージ・サンソム歴史学講座教授/Ph.D.(コロンビア大学)

川島 真(かわしま しん)第2章
東京大学大学院総合文化研究科教授/博士(文学)(東京大学)

有馬 学(ありま まなぶ)第3章
福岡市博物館長/九州大学名誉教授

郭 連友(かく れんゆう)第4章
北京外国語大学教授/博士(文学)(東北大学)

小林亮介(こばやし りょうすけ)第5章
九州大学大学院比較社会文化研究院専任講師/博士(文学)(筑波大学)

タチアナ・リンホエワ(Tatiana Linkhoeva)第6章
ニューヨーク大学教養学部専任講師/Ph.D. in History(カリフォルニア大学バークレー校)

後藤敦史(ごとう あつし)第7章
京都橘大学文学部准教授/博士(文学)(大阪大学)

波平恒男(なみひら つねお)第8章
琉球大学人文社会学部教授

呉 佩珍(ご はいちん)第9章
国立政治大学台湾文学研究所准教授/博士(学術)(筑波大学)

学術図書刊行助成

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