世界遺産 キリシタンの里 長崎・天草の信仰史をたずねる

シリーズ名
KUP選書 2
著者名
本馬貞夫
価格
定価 1,980円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0294-6
仕様
四六判 並製 256頁 C1321
発行年
2021年1月
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内容紹介

本書は「長崎県長崎学アドバイザー」である著者が長崎・天草の潜伏キリシタンの里を訪ね、史料をもとにその魅力と知られざる歴史を分かりやすく解説する、世界文化遺産「長崎と天草の潜伏キリシタン関連遺産」初の網羅的入門書です。

縦軸としてキリスト教伝来から繁栄、禁教・弾圧、潜伏、復活の歴史を述べるとともに、横軸として長崎、浦上、平戸、外海(そとめ)、五島列島など現地をたずね、著者が直接学んだことを中心に展開しています。それぞれの地域の研究者から受けた教えはもちろん、住民の皆さんとの交流も大変貴重なもので、それらは今現在を生きる人々が住まう「キリシタンの里」を表わしています。100点以上のカラー写真のなかには、かつての潜伏集落を伝える教会や史跡などの写真も豊富に含まれています。とくに「浦上一番崩れ」に関しては、新たな資史料の発見と考察により新知見がわかりやすく紹介されており、一般読者から専門研究者まで幅広い読者層に有益な一書になるでしょう。

さらに本書には、長崎歴史文化博物館はじめ、日本二十六聖人記念館など長崎・天草各地の博物館・資料館所蔵の貴重な資料写真や、現地の絵図、地図が数多く掲載されています。「学びの観光」に欠かせない専門ガイド養成のテキストとしても、キリシタンの里を直接訪ねる際のガイドブックとしても有用で、このコロナ禍においては、現地撮影の写真と併せてバーチャルな世界遺産探訪書にもなりうるでしょう。

なお、本書は中日新聞・東京新聞系列紙に2018年から約2年半連載した『キリシタンの里』を再構成したものです。

目次

 まえがき
 
序 章
 
  世界遺産登録への道のり/新たな形の世界遺産/世界遺産守り伝える
 
第一章 キリスト教の伝来から鎖国体制成立まで
 
  キリスト教の伝来/ザビエルの布教活動/ザビエルのその後/キリシタン大名の誕生/
  南蛮外科医ルイス・デ・アルメイダ/長崎にポルトガル船入港/巡察使ヴァリニャーノ来る/
  長崎がイエズス会領に/天正遣欧使節/肖像画購入余話/使節帰国と秀吉の禁教令/
  二十六聖人殉教/殉教から関ヶ原まで/「日本にては長崎が良摩(ローマ)なり」/
  キリシタン(イエズス会)版/ポルトガル船爆沈事件/幕府の禁教令と教会破壊/
  高山右近と中浦ジュリアン/長崎奉行のキリシタン弾圧/温泉岳地獄送り/イエズス会に衝撃走る/
  出島の造成/有馬氏から松倉氏へ/島原の乱/鎖国体制の完成
 
第二章 「潜伏」から「かくれ」へ  平戸島・生月島を中心に  
 
  平戸藩と大村藩の危機/潜伏キリシタンとは/小説『沈黙』と映画『沈黙  サイレンス  』/
  平戸島の春日集落と安満岳/案内所「かたりな」で学んだこと/生月島の捕鯨産業/
  生月島キリシタンの里/生月島の唄オラショ/サンジュワン様の唄と中江ノ島/
  かくれキリシタンとは/平戸市生月町博物館「島の館」の展示/平戸島・生月島のお札さま/
  世界遺産登録後の平戸
 
第三章 人・モノが行き交う外海地方のキリシタン集落
 
  人とモノが行き交う外海/大村藩領と佐賀藩深堀領が混在/聖画と野中騒動/秘書「天地始之事」/
  外海から希望の海を越えて/外海潜伏キリシタン文化資料館/外海のキリシタンの里/
  ド・ロ神父と出津/出津の帳方/枯松神社祭への期待/世界遺産登録後の外海
 
第四章 天領・浦上村のキリスト教史と天草崩れ
 
  天領・長崎に隣接の浦上村/なぜ浦上に世界遺産がないのか/浦上天主堂保存問題/
  浦上一番崩れの発端/浦上一番崩れと「犯科帳」/浦上一番崩れと長崎奉行/形変候石塔/
  浦上三番崩れ/マリア観音像とは/長崎居留地と大浦天主堂/サンタマリアご像はどこ/
  浦上四番崩れと自葬事件/浦上村の探索と秘密教会/浦上のキリシタン関連史跡/
  浦上四番崩れと維新政府/苛酷な「旅」/帰郷、なお苦難は続く/天草崩れ前史/
  潜伏する天草キリシタン/今富村ほか二村での吟味/天草の潜伏信仰の実態/宗門吟味一件その後/
 
第五章 五島列島と黒島の地勢とキリシタン集落
 
  五島列島 地勢と歴史/頭ケ島集落の成立/頭ケ島天主堂と鉄川与助/〔コラム〕頭ケ島のミナミヤモリ/
  神嶋神社と野崎島/旧野首天主堂と野首・舟森集落跡/小値賀から上五島北魚目へ/
  北魚目のキリシタンの里/江袋教会の火災と復原/〔コラム〕長崎の柑橘類「ゆうこう」/
  五島の古キリシタン/五島崩れ 久賀島の悲惨/久賀島キリシタンの里/五輪集落と旧五輪教会堂/
   「かくれ」とカトリックの島/奈留島の「瞳を閉じて」/異宗徒家族を惨殺/黒島の潜伏信徒/
  潜伏信徒からカトリックへ
 
終 章
 
  南島原のキリシタン墓碑/千々石ミゲル墓所の発掘 副葬品が示す信仰の跡/結びにかえて
 
 参考史料・文献
 謝 辞

著者紹介

本馬貞夫(ほんま さだお)
 
山口大学文理学部国史専攻卒、長崎県立高等学校教諭、県立長崎図書館副館長兼郷土課長、
長崎県参与などを経て、現在、長崎県長崎学アドバイザー。
 
著書など
『貿易都市長崎の研究』(九州大学出版会、2009年)
「長崎遊学者のその後   梅園・玄沢・江漢を中心に   」(『長崎 東西文化交渉史の舞台』勉誠出版、2013年)
「長崎代官末次平蔵四代の系譜」(『長崎学創刊号』、2017年)ほか。

学術図書刊行助成

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