近代日本洋画史再考「官展アカデミズム」の成立と展開

著者名
高山百合
価格
定価 4,500円(税別)
ISBN
978-4-7985-0317-2
仕様
A5判 上製 226頁 C3071
発行年
2021年11月
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内容紹介

明治40年の文部省美術展覧会開設以降に確立され、その後の美術史や美術運動史のなかで、功罪含めてつねに大きな影響力を持ち続けた主流としての「官展アカデミズム」は、戦後日本の美術批評において、個性を欠いた類型的な作品群としてしばしば否定的に捉えられ、長らく等閑視されてきた。

そのような評価の偏りを踏まえ、本書では、岡田三郎助、中澤弘光、中村研一という「官展アカデミズム」の直系ともいうべき三人の作家による代表的な官展出品作(岡田三郎助《水浴の前》(大正5年、第10回文展)、中澤弘光《かきつばた》(大正7年、第12回文展)、中村研一《弟妹集う》(昭和5年、第11回帝展)、《瀬戸内海》(昭和10年、第二部会展))の分析を通して、「官展アカデミズム」の成立と展開を辿り、その歴史的意義や重要性を俯瞰的な視点から再評価することを試みる。

それにより、官展系作家に共通する大きな課題であり、なおかつ明治期以来の近代日本洋画史に通底する重要な問題であり続けた「理想画」という概念が、どのように解釈され、継承され、作品のなかに表れていたのかということが明らかにされてゆく。また、藤田嗣治と並んで、数多くの戦争画を手掛けたことで知られる中村研一の戦前期の官展出品作品と戦争画、そして戦後期の作品を詳細に比較検討することで、従来は断絶していると考えられてきた戦前と戦後の画業の連続性が見えてくる。

これまで十分に語られてこなかった「官展アカデミズム」を論じることを通して、近代日本美術史の大きな流れを補完する本書は、西洋から受容したモダニズム美術史観に沿って展開されてきたこれまでの美術史とは異なる、もうひとつの近代日本美術史を描こうとするものである。

目次

 凡 例
 
序 章  「官展アカデミズム」をめぐる研究史と諸問題
 
 序
 第一節  「官展アカデミズム」の成立とその意義
 第二節  「官展アカデミズム」に対する評価の変遷
 第三節 本書の目的と論点について
 第四節 本書の内容と構成について
 
第一章 岡田三郎助《水浴の前》  「理想画」における花の象徴性  
 
 序
 第一節 作品概要
  一 作品概要と制作過程
  二 岡田三郎助の制作と「渋谷美術村」
 第二節 「入浴図」から「水浴図」へ
 第三節 《水浴の前》に描かれた花の意義
  一 松虫草の象徴性
  二 美術と植物学の邂逅
  三 花の象徴性と「理想画」
 結
 
第二章 中澤弘光《かきつばた》  謡曲と絵画、大正期における「理想画」の展開  
 
 序
 第一節 《かきつばた》作品概要
 第二節 《かきつばた》と謡曲「杜若」
  一 謡曲「杜若」
  二 近代日本美術における能楽と絵画
 第三節 中澤弘光におけるシャヴァンヌ受容
 結
 
第三章 春台美術展と本郷絵画研究所  昭和期における官展系美術団体の一動向  
 
 序
 第一節 本郷絵画研究所の設立経緯と展開
 第二節 春台美術展
  一 春台美術展の設立経緯と展開
  二 春台美術展と「渋谷美術村」
 第三節 春台美術展の独自性
  一 学芸部と特別展示  岡田三郎助、大隅為三と「工芸」
  二 昭和期洋画壇における位置
   (一) 絵画における「工芸的」趣味  岡田三郎助と中村研一
   (二) 官展系美術団体としての同時代的評価
 結
【資料】 本郷絵画展および春台美術展の開催について
 
第四章 昭和期官展における「現代風俗画」の展開  中村研一《瀬戸内海》を中心に  
 
 序
 第一節 中村研一《瀬戸内海》
  一 作品概要と制作過程
  二  「瀬戸内海」という場
 第二節 モダニズムの探求
  一 モチーフとしての「新しさ」
  二 絵画における「写真的視覚」
 第三節 昭和期官展における「現代風俗画」の展開
  一  「現代風俗」へと向けられる眼差し
  二 近代日本における「水浴図」の展開
 結
 
第五章 戦前と戦後の美術表現における連続性と継承性  中村研一の場合  
 
 序
 第一節 昭和戦前期の官展出品作  帝展でのデビューから《弟妹集う》まで
 第二節  「家族像」の成立  「私的領域」を描くということ
 第三節 大画面作品から戦争画へ  《コタ・バル》を中心に
 第四節 戦争画と「民族服をまとう女性」という主題
 結
 
終 章
 
 引用・参考文献一覧
 初出一覧
 あとがき
 索 引

著者紹介

高山百合(たかやま ゆり)
 
関西学院大学文学部文化歴史学科卒業後、九州大学大学院人文科学府芸術学専修博士前期
課程修了、同博士後期課程修了。博士(文学、九州大学)。
2012年より福岡県立美術館学芸員に着任し、近代日本洋画に関連する展覧会を企画開催。

学術図書刊行助成

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