内容紹介
東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、障害者の表現活動に注目が集まっている。また、こうした活動に対する国や地方自治体などによる支援も手厚くなりつつある。この動向が少なくとも2020年までは継続し、さらにその先にも続いていくことを多くの現場の人々は望んでいるようだ。
しかしこのような急速な振興は、障害者の社会での立ち位置を向上させることに、本当に寄与していると言えるだろうか? むしろ、誰かに対して「障害者」であると名付けて、そこに「感動」や「純粋」といった言説を付け加えることで、「健常者」にとって消費しやすい障害者像ばかりが振興されているのではないだろうか?
本書は、このような問題意識から行った、障害のある人の舞台表現活動へのフィールドワークから得られた知見をまとめたものである。そこには、「障害者」だからこその表現ではなく、様々な立場の人が共にせめぎ合いながら表現を生み出していく「共犯性」と呼べるような関係が生まれていた。表現そのものだけでなく、表現が生まれるプロセスにいったいどのようなことが起こっているのか。障害とアート、福祉とアート、表現の現場に携わる人々には必見の一書。