内容紹介
1936年の日独防共協定締結から1945年の敗戦に至るまで、日本とナチ・ドイツのあいだでは軍事協力や経済協力とともに、「文化協力」を深めていくことが目指されていた。この両国間の「文化協力」を象徴するものが、1938年11月25日、日独防共協定締結二周年にあわせて結ばれた日独文化協定(「文化的協力ニ関スル日本国独逸国間協定」)である。
従来、この協定はあらゆる文化領域における両国の協力関係の構築を目指したものとして位置づけられてきた。しかし実は、この文化協定は、ナチズムの中核的なイデオロギーである人種主義をめぐる日独間の文化摩擦を引き起こすものでもあった。
本書では、日独文化協定の成立過程および執行過程に着目して、日独交渉のなかで争点となった諸問題について考察を展開する。そして、文化面における友好・協力関係のみならず対立・摩擦の関係を描くとともに、そうした両面的な関係性をもたらした諸要因について分析し、ここから戦時日独関係における「文化協力」の内実を明らかにする。