日本における地政学の受容と展開

著者名
高木彰彦
価格
定価 3,700 円 (税別)
ISBN
978-4-7985-0280-9
仕様
A5判 並製 346頁 C3025
発行年
2020年3月
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内容紹介

地政学とは、一般に対外政策において地理的条件を重視する考え方のことを指し、20世紀初頭に国家と領土に関する学問としてスウェーデンの国家学者チェレーンによって提唱された。本書では、20世紀初頭における地政学の成立から第一次世界大戦後のドイツにおける興隆、英米における展開を辿ったのち、1920年代の日本における地政学の受容とその後の展開、さらには戦後の反省について検討した。1920年代の日本の地理学においては、新興学問としての地政学を地理学の一部として認めるか否かが議論され、概ね、地政学は地理学の一部ではなく、応用的性格の強い政策指向的な分野として認識されていた。

ところが、日中戦争以降の戦時期になると、地政学は日本の生存圏拡大を方向づけるイデオロギーとしての性格を帯び、軍人・官僚エリートによる国策遂行のための運動・実践として位置づけられるようになっていく。この時期の地政学は国土計画を遂行するためのイデオロギーとして、皇道主義に依拠する思想戦の方法として展開された。また、教学の統制強化により地理的分野の教科書は地政学的内容を帯びるようになり、日本の生存圏拡大に伴う地理的知識の拡大に伴う地理・地誌的需要の高まりから、地政学は「ジャーナリズムの寵児」と形容されたのであった。

戦時下において脚光を浴びた地政学は、日本の敗戦とともに、国策遂行のための悪しき学問ないしは「似非科学」としてタブー視されることとなった。本書では、地理学者による反省と地政学に対する批判を検討するとともに、欧米において1980年代以降に活性化した新しい地政学についても紹介する。

目次

序 章
 
 第一節 地政学の定義と本書の目的
 第二節 これまでの研究の概観
 第三節 本書の分析枠組と構成
 
第一章 地政学の成立と展開
 
 第一節 地政学の成立とその背景
 第二節 戦間期ドイツにおける地政学の展開
 第三節 英米系地政学の特徴
  (一)マッキンダー
  (二)マハン
  (三)スパイクマン
  (四)ドイツ系地政学から英米系地政学へ
 
第二章 日本における地政学の受容
 
 第一節 一九二〇年代の地理学における地政学の受容
  (一)小川琢治による地政学への着目
  (二)移民に着目した飯本信之の地政学論
  (三)地理学における地政学受容の特色
 第二節 政治学・法学における地政学の受容
  (一)小野塚喜平次と神川彦松によるチェレーンへの着目
  (二)藤澤親雄によるチェレーンへの着目
  (三)政治学・法学における地政学受容の特徴
 第三節 その後の地政学の展開と地政学批判
  (一)地政学の展開──阿部市五郎を中心に
  (二)地政学に対する批判
  (三)一九三〇年代の地政学の特徴
 
第三章 戦時期における地政学の展開
 
 第一節 地政学興隆の背景
  (一)対外関係の変化と総動員体制の強化
  (二)国家総動員体制と戦時統制機関の成立
  (三)企画院・昭和研究会と地政学
 第二節 戦時下日本における国土計画と地政学
  (一)これまでの国土計画研究
  (二)国土計画の定義と起源
  (三)ドイツにおける国土計画の概要
  (四)日本における国土計画の受容と展開
  (五)国土計画と地政学
  (六)戦時下の国土計画と地政学の特徴
 第三節 京都学派の「日本地政学」──エリートによる、思想戦としての上からの地政学運動
  (一)京都学派地政学の特徴とこれまでの研究
  (二)『日本地政学宣言』に見る思想戦としての日本地政学
  (三)地政学による新たな地誌の提示
  (四)エリートによる大衆啓蒙の地政学
 第四節 日本地政学協会と機関誌『地政学』──地理教師による下からの地政学運動
  (一)『地理歴史研究』から『地政学』へ
  (二)文検雑誌と地理教師
  (三)日本地政学協会の目的・構成・活動
  (四)『地政学』に掲載された論文・記事の特徴
  (五)「論説・資料」に見る『地政学』の内容
 第五節 「ジャーナリズムの寵児」となった地政学
  (一)総合雑誌『改造』と地政学
  (二)地理的世界観の拡大に伴う地誌の活性化
  (三)地理的世界観の拡大と教科書・文検雑誌の変質
 第六節 戦時下における地政学と地理学・地理教育
 
第四章 戦後における地政学の停滞と地政学批判
 
 第一節 敗戦直後の「反省」と地政学批判
  (一)地理学者たちの「反省」
  (二)飯塚浩二による地政学批判
  (三)飯塚浩二と小原敬士の地政学批判の特徴
 第二節 日本政治地理学会の設立と政治地理学(地政学)の一時的復活
 第三節 高度経済成長期における地政学批判
 第四節 地政学批判の本格的開始
 第五節 地政学ブームの到来と地政学批判
 
第五章 地政学の新たな展開と日本の例外主義
 
 第一節 英米における地政学の復活
 第二節 欧米における批判地政学の展開
  (一)外交政策と地理的イメージ
  (二)地政学の復活と批判地政学
  (三)欧米中心主義的な地政的想像力
  (四)他者の表象とメディアの影響
  (五)地政学概念の脱構築
 第三節 欧米地政学の最近の展開と日本における例外主義
  (一)地政学書物の刊行動向の特色
  (二)コーリン・フリント著『現代地政学』の紹介
  (三)地政学のゆくえ──「例外主義」の克服をめざして
 
終 章
 
 第一節 本書の成果
 第二節 今後の課題
 
文 献
あとがき
索 引

著者紹介

高木彰彦(たかぎ あきひこ)
 
名古屋大学文学部卒。同大学院を期間満了退学後、名古屋大学文学部助手、茨城大学教養部助教授、
人文学部助教授・教授を経て、現在、九州大学大学院人文科学研究院教授。博士(学術、東京大学)。
専門は人文地理学、政治地理学。
 
編著:『現代地政学事典』(丸善出版、2020年)、『日本の政治地理学』(古今書院、2002年)
編著・監訳:『アジア太平洋と国際関係の変動──その地政学的展望』(デニス・ラムリー、
  千葉立也、福嶋依子と共著・共訳、古今書院、1998年)、
編訳書:コーリン・フリント著『現代地政学──グローバル時代の新しいアプローチ』(原書房、
  2014年)など。

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