呂太后期の権力構造 前漢初期「諸呂の乱」を手がかりに

著者名
郭 茵
価格
定価 3,960円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0123-9
仕様
A5判 上製 244頁 C3022
発行年
2014年3月
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内容紹介

前195年,中国史の礎を築いた漢王朝の劉邦没す。その後に生じた皇帝未亡人呂太后とその一族と,劉氏一族・家臣団の間に生じた権力闘争とその結末として起きた「諸呂の乱」の真相とその背景を,史書を徹底的に読み込むことで解明する。書き換えられた漢帝国初期の歴史がいま甦る。

目次

序章 本書の目的と先行研究
 
 第一節 本書の目的
 第二節 先行研究
 第三節 本書の構成と概要
 
第一章 呂太后の権力基盤について
 
 はじめに
 第一節 楚漢戦争中の呂太后の行方
 第二節 戚姫と趙王如意
   一 戚姫の要望
   二 趙王如意の年齢
 第三節 太子の廃立と周呂侯呂沢
   一 太子を立てた時期
   二 廃太子騒ぎと周呂侯呂沢の関係
   三 呂太后が皇后になった経緯
 第四節 漢帝国樹立後の呂太后
   一 劉邦の動向と呂太后の帝国経営
   二 韓信・彭越の死と呂太后の権力
 第五節 呂太后の権力基盤
   一 功臣たちとの関係
   二 廃太子騒ぎからみた呂太后の権力基盤
   三 呂氏勢力に対する劉邦の警戒
 
第二章 漢初の南北軍
 
 はじめに
 第一節 南北軍に関する基本史料
 第二節 先行研究における南北軍
   一 説1  南軍を衛尉と郎中令の軍、北軍を中尉の軍とする説
   二 説2  南軍を衛尉の軍、北軍を中尉の軍とする説
   三 説3  南軍を未央宮衛尉の軍、北軍を長楽宮衛尉の軍とする説
   四 説4  南軍を長安城南部の軍、北軍を長安城北部の軍とする説
   五 説5  南北軍を野戦軍とする説
 第三節 諸説共通の問題点
 第四節 究明すべきいくつかの事実
   一 長安城の構成と両宮の重要性
   二 長安の城壁と南北軍
   三 南北軍の位置
 第五節 「諸呂の乱」の再現
 第六節 前漢初期の長安における軍事力について
   一 郎中令と中尉について
   二 相国と上将軍について
   三 南北軍の指揮者及び南北軍と衛尉の関係
 おわりに
 
第三章 劉邦期における官僚任用政策
 
 はじめに
 第一節 軍功と封侯
   一 最初に封ぜられた二十九侯
   二 二十九侯の構成と功について
   三 軍功の概念と劉邦の封侯基準
 第二節 漢五年の三公九卿について
   一 三公九卿と軍功
   二 三公九卿の任用原則
 第三節 文武の対立と劉邦の統治理念
   一 蕭何の封侯をめぐって
   二 劉邦の統治理念
   三 劉邦の「知人善任」
   四 地方官僚の任用
 おわりに
 
第四章 呂太后の権力基盤の衰退と官僚任用政策の変化
 
 はじめに
 第一節 「怏怏」派の存在と曹参の任用
   一 「怏怏」派の存在
   二 劉邦の遺言について
   三 曹参の起用
   四 曹参の強権
 第二節 丞相権の分割と太尉の復活
   一 王陵について
   二 陳平について
   三 周勃について
   四 王陵、陳平、周勃の関係
 第三節 呂太后の不安と側近の任用
   一 恵帝の死
   二 審食其の任用
   三 任敖と曹窋の任用
 第四節 呂氏一族の任用
 第五節 九卿の任用について
 おわりに
 
第五章 「諸呂の乱」における大臣と斉王兄弟
 
 はじめに
 第一節 「諸呂の乱」について
   一 史料記載の混乱
   二 呂氏一族の「野心」と敵対勢力
   三 「諸呂の乱」の参加者と情報の出所
   四 先行研究から見た「乱」の理由
 第二節 少帝弘をめぐる中央の情勢
   一 中央における呂氏専権
   二 「諸呂の乱」の原因
 第三節 斉王兄弟と大臣の目的及び少帝弘の身元について
   一 斉王兄弟の狙い
   二 大臣の立場
   三 少帝弘の身元
 第四節 「諸呂の乱」における大臣と斉王兄弟
   一 少帝弘の交代
   二 大臣と斉王兄弟
   三 呂氏一族の死と劉章
   四 「諸呂の乱」における大臣同士の関係と地方諸侯王
 第五節 「諸呂の乱」をめぐる動き
   一 「諸呂の乱」の経緯
   二 「諸呂の乱」が正当化された理由
 第六節 「諸呂の乱」の影響  文帝の対応策を中心に  
   一 周勃の失脚と陳平の選択
   二 斉王劉襄と淮南王劉長
 おわりに
 
終章 本研究の結論と前漢史研究における意義
 
 第一節 本研究の要約
   一 呂太后の権力基盤と統治方法
   二 官僚任用原則と権力の配分
   三 「諸呂の乱」の真相
   四 呂太后期の権力構造
 第二節 前漢史研究における本研究の意義
   一 呂太后と劉氏の関係
   二 呂太后と大臣の関係
   三 文帝期の研究について
   四 前漢史の区分について
   五 劉邦集団について
   六 「三権並立」の考え方について
   七 任侠精神について
   八 史料の問題について
   九 呂太后に対する認識
 
参考文献
 
あとがき
 
巻末資料
 
劉邦・呂太后家系略図
秦末漢初略図
劉邦年表
呂太后期年表
人名索引
事項索引

著者紹介

郭 茵(かく いん,Guo Yin)
北京大学歴史学部(中国史専攻)卒業,東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了,
2003年東京都立大学大学院人文科学研究科より博士(史学)学位取得。
その後,九州大学高等教育推進センター准教授,関西学院大学言語教育研究センター常勤講師を経て,現在,立命館大学言語教育センター嘱託講師。

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