ブルゴーニュ国家の形成と変容 権力・制度・文化

著者名
藤井美男 編/ブルゴーニュ公国史研究会
価格
定価 6,600円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0180-2
仕様
A5判 上製 390頁 C3022
発行年
2016年3月
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内容紹介

ブルゴーニュ公国史研究会の10年にわたる研究成果を問う本書は,「領邦と中間権力」「都市と市民」「宮廷と政治文化」の三部から成る。中世後期に広大な地政学的空間を現出した「ブルゴーニュ国家」に,政治史・経済史・都市史・文化史など多様な側面から接近を試みることで,ヨーロッパ歴史像の一断章を浮かび上がらせる。

目次

 
  第I部 領邦と中間権力
 
第1章 ブルゴーニュ公国形成期における都市と領邦君主
      ヴァランシエンヌとモンス  
 
 はじめに
 I.13・14世紀におけるエノー伯とヴァランシエンヌ/モンス
  (1) ヴァランシエンヌの「平和規約」
   (a)女伯マルグリートとロマンス語訳(1275年)/(b)アヴェーヌ家とヴァランシエンヌ
  (2) モンスの特権
   (a)エノー伯とモンスの双務的関係/(b)モンスの慣習法文書(1295年)
 II.エノー伯の集権主義と都市の自立主義
  (1) エノー伯領の行政機構と都市の農村支配
   (a)伯の行政組織/(b)首邑慣習法文書と周辺農村支配
  (2) 首邑の上訴裁判権係争と伯の制定法
   (a)上訴裁判権をめぐるヴァランシエンヌの抗争/(b)中世後期におけるエノー伯の制定法
 結 論
 
第2章 15世紀中葉フィリップ=ル=ボンの対都市政策
      ブラバント都市ブリュッセルの事例を中心に  
 
 はじめに
 I.ブラバント公の統治組織
  (1)アンマン
  (2)ブラバント顧問院
  (3)上級統治官
   (a)ドロッサール/(b)森林長官
  (4)領域管轄官
 II.ブリュッセルの特権
  (1)市外市民
  (2)参事会証書
 III.フィリップ=ル=ボンの対都市政策とその変遷
  (1)公権による都市抑制策  1440年代  
   (a)端緒  モルクマン事件  /(b)公権の対応  「告発状」(1445年)  
  (2)参事会証書をめぐる公権と都市  1450~1460年代  
   (a)発端  レウヴェン参事会証書への査問  /(b)1460~61年の公令  参事会証書の濫用抑制  /(c)1465~66年の公令  都市抑制策の後退  
  (3)ヴァン=アゥトフェン事件  再論  
   (a)契機と経緯/(b)結果と解釈
 結 論
 
第3章 15世紀後半のリエージュ紛争と北西ヨーロッパ都市
 
 はじめに
 I.リエージュ紛争概観
 II.司教領の諸都市と紛争
  (1)親リエージュ派都市ディナンの動向
  (2)親司教派都市ウイの動向
 III.ドイツ都市と紛争のインパクト
  (1)リエージュとケルンの政治的コミュニケーション
  (2)苦境に陥るケルンとドイツ都市
 IV.公国諸都市における紛争の意味と重要性
  (1)イープルとブルゴーニュ公
  (2)ブルッヘとペロン
  (3)ヘントの反乱とリエージュ紛争
 結 論
 
第4章 ブルゴーニュ・ハプスブルク期のネーデルラント貴族
      フランスとの境界をめぐる問題とハプスブルクの平和条約での役割  
 
 はじめに
 I.ネーデルラント貴族の動向
 II.ハプスブルクか?フランスか?  主従関係の選択  
  (1)1477年からカンブレ平和条約にかけての貴族の動向
  (2)リュクサンブール家の動向
 III.カール5世の帝国支配とネーデルラント貴族
 IV.カンブレ平和条約におけるネーデルラント貴族の態度
 結 論
 
  第II部 都市と市民
 
第5章 12・13世紀ブリュッセルにおける魚・肉業者
 
 はじめに  研究史と本論の課題  
 I.都市における魚・肉業者
  (1)ブラバン公による魚市場用地譲渡文書
  (2)ブリュッセルにおける魚の販売
 II.周辺未耕地における淡水魚の生産と供給
  (1)修道院所領とブラバン公領
  (2)都市民による周辺未耕地への浸透:アッスとアランの事例
 III.魚・肉業者家系の形成
  (1)Atrio-Nossegem-Saint Géry-Bole家の事例
  (2)Vriendeken 家,Bote家の事例
 結 論
 
第6章 ピエール・ダランティエールの陰謀
      15世紀前半トロワにおけるブルゴーニュ派とアルマニャック派との対立の一幕  
 
 はじめに
 I.ピエール・ダランティエールと1417~1420年のトロワ
  (1)ピエール・ダランティエールの家系と経歴
  (2)1417~1418年におけるトロワの社会状況と王国臨時政府の設置
  (3)モントロー事件とイングランドとの同盟
  (4)1420年5月21日 トロワ条約
  (5)王太子シャルルとジャンヌ・ダルクのトロワ入市
 II.陰謀発覚と前後の状況
  (1)ピエール・ダランティエールの立場
  (2)1430年の陰謀
  (3)財産没収
 III.ピエール処刑後のトロワ社会
 結 論
 
第7章 15世紀フランドルのシャテルニーと市外市民
      1429-30年ブルフセ・フレイエと都市ブルッヘの協定を中心に  
 
 はじめに
 I.シャテルニーにおけるブルッヘ市外市民
  (1)当初の規定:「17点(XVII pointen)」第3点(1318年)
  (2)シャテルニー財政と市外市民
 II.市外市民をめぐる都市とシャテルニーの協議
  (1)見解の対立
  (2)1429年協定
  (3)1430年修正協定
   (a)支払期間の延長/(b)援助金の割当の免除
 結 論
 
  第II
I部 宮廷と政治文化
 
第8章 御用金と借入金
      1430年代ブルゴーニュ公領の事例  
 
 はじめに
 I.御用金徴収の概況
 II.徴収の実務
  (1)1433年御用金4万フランの徴収
  (2)1435年の御用金徴収
  (3)管区の負担
 III.借入金の「徴収」
  (1)御用金の代替・補塡として
  (2)御用金の繫ぎとして
  (3)還付の事実
 結 論
 
第9章 15世紀後半ブルゴーニュ公国における都市・宮廷・政治文化
      シャルル・ル・テメレール期を中心に  
 
 はじめに
 I.シャルル・ル・テメレール以前のブルゴーニュ公のネーデルラント統治
 II.シャルル・ル・テメレールの統治とネーデルラント都市
 III.シャルルの統治イデオロギーと宮廷人脈
  (1)ギョーム・ユゴネ(Guillaume Hugonet)
  (2)アントワーヌ・アヌロン(Antoine Hanelon)
  (3)ヴァスコ・ドゥ・ルセナ(Vasco de Lucena)
 IV.君主儀礼としての冠婚葬祭と都市
  (1)フィリップ・ル・ボンの葬儀
  (2)シャルルとヨークのマーガレットの婚姻
  (3)シャルルの都市入市式
 おわりに
 
第10章 ヴァロワ家ブルゴーニュ公の遺言
       伝来する3遺言書の比較分析より  
 
 序
 I.菩提教会シャンモル修道院
  (1)フランス諸侯の墓所形成
  (2)カルトジオ会とシャンモル修道院
 II.遺言書の分析持続的側面
  (1)3遺言書の概要
  (2)墓所の選択
  (3)定期金設定(カルトジオ会)
  (4)定期金設定(ブルゴーニュ周辺有力修道院)
  (5)家政役人に対する慰労金
 III.遺言書の分析変化
  (1)10司教区,13公・伯領における祈り
  (2)金羊毛騎士団とドル大学
  (3)相続
  (4)嫡出子および非嫡出子に対する財産分与
  (5)遺言執行人
 結 び
 
第11章 ブルゴーニュ公国とエラスムスの君主論
       中近世における「君主の鑑」  
 
 はじめに
 I.中世における「君主の鑑」
  (1)「君主の鑑」
  (2)ソールズベリーのヨハネス『ポリクラティクス』
  (3)トマス・アクィナス『君主の統治について』
 II.15・16世紀におけるブルゴーニュ公国とフランスの君主論
  (1)エラスムス著作におけるブルゴーニュ公国史
  (2)シャルル突進公時代の廷臣
  (3)16世紀初頭フランスの君主論
 III.エラスムスの君主論
  (1)文学と統治
  (2)専制批判
  (3)君主・貴族・市民
 結 論

著者紹介

齋藤絅子(さいとう けいこ)…第1章
1942年生まれ。明治大学文学部名誉教授。九州大学大学院博士課程文学研究科単位取得退学。文学博士。
主著・主論文:『西欧中世慣習法文書の研究  「自由と自治」をめぐる都市と農村  』九州大学出版会,1992年。「中世エノー伯領における共同体の「自由」と制定法」『駿台史学』147号,2013年,ほか。

藤井美男(ふじい よしお)…序,第2章
1956年生まれ。九州大学大学院経済学研究院教授。九州大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(経済学)。
主著・主論文:『中世後期南ネーデルラント毛織物工業史の研究  工業構造の転換をめぐる理論と実証  』九州大学出版会,1998年。『ブルゴーニュ国家とブリュッセル  財政をめぐる形成期近代国家と中世都市  』ミネルヴァ書房,2007年。「中世後期南ネーデルラントの商業組織に関する考察  ロンドンのフランドル=ハンザを中心に  」『経済学研究』(九州大学)第79巻第5・6合併号,2013年,ほか。

青谷秀紀(あおたに ひでき)…第3章
1972年生まれ。明治大学文学部准教授。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。博士(文学)。
主著・主論文:『記憶のなかのベルギー中世  歴史叙述にみる領邦アイデンティティの生成  』京都大学学術出版会,2011年。「聖なる権威の在り処をもとめて  15世紀後半のリエージュ紛争とブルゴーニュ公  」服部良久編著『コミュニケーションから読む中近世ヨーロッパ史  紛争と秩序のタペストリー  』ミネルヴァ書房,2015年,ほか。

加来奈奈(かく なな)…第4章
1982年生まれ。日本学術振興会特別研究員(PD)。奈良女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了。博士(文学)。
主著・主論文:「ブルゴーニュ・ハプスブルク期のネーデルランド使節  「カンブレの和」実現に向けての活動を中心に  」『寧楽史苑』第53号,2008年。「ネーデルラントの統一と分裂」大津留厚・水野博子・河野淳・岩崎周一編『ハプスブルク史研究入門  歴史のラビリンスへの招待  』昭和堂,2013年。「16世紀前半ネーデルラントの統一と渉外活動  1529年カンブレ平和条約履行におけるネーデルラント使節ジャン・ド・ル・ソーの機能  」岩本和子・石部尚登編『「ベルギー」とは何か?  アイデンティティの多層性  』松籟社,2013年,ほか。

舟橋倫子(ふなはし みちこ)…第5章
1967年生まれ。慶應義塾大学・中央大学非常勤講師。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(歴史学)。
主著・主論文:「12世紀ベルギーにおける修道院と周辺社会  アッフリゲム修道院とブリュッセル地域  」『エクフラシス』第3号,2013年。「中世ブリュッセルの都市と宗教  ミッシェル・ヴィシュマールの遺言書を素材として  」『ユーラシア・アフリカ大陸における都市と宗教の比較史的研究』中央大学人文科学研究所研究叢書,2014年,ほか。

花田洋一郎(はなだ よういちろう)…第6章
1968年生まれ。西南学院大学経済学部教授。九州大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。
主著・主論文:『フランス中世都市制度と都市住民  シャンパーニュの都市プロヴァンを中心にして  』九州大学出版会,2002年。「14世紀後半フランス王国及びブルゴーニュ公領の財務官僚ニコラ・ド・フォントゥネ  地方役人の社会的上昇の軌跡と富の蓄積  」『社会経済史学』第77巻第2号,2011年。「中世後期フランス都市における都市議事録  トロワ都市評議会議事録(1429-1433年)の分析  」『比較都市史研究』第32巻第1号,2013年,ほか。

畑 奈保美(はた なおみ)…第7章
1969年生まれ。東北学院大学・尚絅学院大学非常勤講師。東北大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。
主著・主論文:「ブルゴーニュ時代フランドルのシャテルニー統治」『史学雑誌』第116編第9号,2007年。「フランドルにおける援助金の交渉と徴収」『社会経済史学』第77巻第2号,2011年。「ブルゴーニュ国家  14・15世紀ヨーロッパにおける「統合」の試み」渡辺昭一編『ヨーロピアン・グローバリゼーションの歴史的位相「自己」と「他者」の関係史』勉誠出版,2013年,ほか。

金尾健美(かなお たけみ)…第8章
1954年生まれ。川村学園女子大学教授。パリ第4大学歴史学研究科博士課程修了。博士(歴史学)。
主著・主論文:「ヴァロワ家ブルゴーニュ公フィリップ・ル・ボンの財政(1)~(7)」『川村学園女子大学研究紀要』第9巻第1号(1998年)~ 第22巻第2号(2011年)。La levée d’argent dans le duché de Bourgogne en 1421 d’après le compte du bailliage d’Auxois, in KANO, O. et LEMAITRE, J.-L. éds. ; Entre texte et histoire. Etudes d'histoire médiévale offertes au professeur Shoichi Sato, Paris, 2015,ほか。

河原 温(かわはら あつし)…第9章
1957年生まれ。首都大学東京都市教養学部教授。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。博士(文学)。
主著・主論文:『中世フランドルの都市と社会  慈善の社会史  』中央大学出版部,2001年。『都市の創造力』岩波書店,2009年。「中世ブルッヘの兄弟団と都市儀礼  15世紀「雪のノートルダム」兄弟団の活動を中心に  』深沢克己・桜井万里子編『友愛と秘密のヨーロッパ社会文化史  古代秘儀宗教からフリーメイソン団まで  』東京大学出版会,2010年,ほか。

中堀博司(なかほり ひろし)…第10章
1968年生まれ。宮崎大学教育文化学部准教授。九州大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。
主著・主論文:「領邦の記憶  ブルゴーニュ公国南部におけるオフィシエ(1386-1435年)  」藤井美男・田北廣道編『ヨーロッパ中世世界の動態像  史料と理論の対話  (森本芳樹先生古稀記念論集)』九州大学出版会,2004年。「あの世に向かって  二人のブルゴーニュ公フィリップの葬送と後継者たちの思惑  」服部良久編著『コミュニケーションから読む中近世ヨーロッパ史  紛争と秩序のタペストリー  』ミネルヴァ書房,2015年。「ブルゴーニュ公国の解体  その歴史的位相  」池田嘉郎・草野佳矢子編『国制史は躍動する  ヨーロッパとロシアの対話  』刀水書房,2015年,ほか。

河野雄一(かわの ゆういち)…第11章
1980年生まれ。慶應義塾大学非常勤講師(2016年4月以降)。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(法学)。
主著・主論文:「中世の継承者としてのエラスムス  1520年代の論争を通して  」『西洋中世研究』第4号,2012年。「エラスムスにおける「寛恕」と限界  時間的猶予における改善可能性」(『法學政治學論究』第100号,2014年。「エラスムス『リングア』における言語と統治  功罪と規律  」『中世思想研究』第57号,2015年,ほか。

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