宮廷食材・ネットワーク・王権 イエメン・ラスール朝と13世紀の世界

著者名
馬場多聞
価格
定価 5,500円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0200-7
仕様
A5判 上製 340頁 C3022
発行年
2017年3月
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内容紹介

アッバース朝とオスマン朝という2つの世界帝国の狭間にあって、13世紀のイスラーム世界では多様な王朝が勃興していた。その1つであるラスール朝は、紅海とインド洋を結ぶアラビア半島南西部のイエメンを、200年を超えて統治したことで知られる。

本書では、近年になってイエメンで発見された13世紀のラスール朝行政文書集『知識の光』記載の宮廷食材に着目し、その種類や広範囲にわたる供給元、食材の手配や調理、宴席に携わった人々と機関などの宮廷食材をめぐる様々な側面を、『大旅行記』をはじめとした同時代のイスラーム世界の歴史史料との比較・検討をもとに明らかにする。

以上の考察を通して、世界帝国の間をつなぐようにして存続したラスール朝という地方王朝の前半期の姿が、ネットワークと王権が交錯するところに描き出されよう。

目次

 凡 例
 
序 章
 
 1 本書の視座
  (1) 一三世紀の世界と問題の所在
  (2) ラスール朝史研究と問題の所在
  (3) 本書の目的ならびに構成
 2 ラスール朝史概要
  (1) ラスール朝成立以前
  (2) 一三世紀のラスール朝
 3 史 料
  (1) 主史料『知識の光』
  (2) ラスール朝行政文書集が有する史料上の問題
  (3) ラスール朝史料
 
   第1部 食材・料理・宴席
 
第1章 食 材
 
 はじめに
 1 「宮廷への食材供給記録」と宮廷食材の傾向
  (1)「宮廷への食材供給記録」
  (2) 宮廷食材の傾向
  (3) 宮廷食材の機会差
 2 宮廷食材とインド洋交易
  (1) 三種類のアデン港課税品目録の検討
  (2) インド洋交易を通じて獲得された産物
 おわりに
 
第2章 料理・宴席
 
 はじめに
 1 宮廷料理の傾向
  (1)『知識の光』に見る料理
  (2) 宮廷料理の実際
 2 宮廷料理の特徴
  (1) 二つの料理書との比較
  (2) 宮廷料理とイエメン
 3 宴 席
  (1) 宴席の規則
  (2) 宴席の様子
 おわりに
 
   第2部 地域内ネットワーク
 
第3章 宮廷への食材供給元
 
 はじめに
 1 「宮廷への食材供給記録」と供給元別宮廷食材
  (1)「宮廷への食材供給記録」
  (2) 供給元別宮廷食材や雑貨類、用具類
 2 供給元と供給先の分析
  (1) 供給元の分析
  (2) 供給先の分析
 3 宮廷への食材供給元の検討
  (1) ティハーマ
  (2) 南部山岳地域
  (3) アデンとその周辺
  (4) 北部山岳地域(上地域)
       ラスール朝下に見られる地理認識との関連において  
 おわりに
 
第4章 地理認識
 
 はじめに
 1 史料と距離単位
  (1) 史 料
  (2) 距離単位
 2 南西アラビアの交通路
  (1) マッカ巡礼道とイエメン
  (2) ラスール朝下の交通路  ザビードとタイッズ、アデンを中心に  
 3 ラスール朝の地理認識
  (1) 分 析
  (2) イエメン模式図の検討
 おわりに
 
   第3部 王 権
 
第5章 宮廷組織と食材分配
 
 はじめに
 1 宮廷組織の検討  ハーナを中心に  
  (1) ハーナ
  (2) 食材分配に携わった機関  必要品館・厨房・飲料館  
 2 食材分配の実態
  (1) 宴席や祭事において
  (2) 手当てとして
 おわりに
 
第6章 家内奴隷
 
 はじめに
 1 東アフリカから流入する人々
  (1) アデン港課税品目に記載される人々
       アブド・ハーディム・ジャーリヤ  
  (2) タワーシー
 2 東アフリカ以外から流入する人々
  (1) 北方から流入する人々
  (2) グラーム
 3 財の被分配者として 
  (1) スルタンの御前に仕えた人々
  (2) ラスール家に仕えた人々
 おわりに
 
結 論
 
 史料解題 
 あとがき
 注
 文献目録
 索 引

著者紹介

馬場多聞(ばば たもん)
 
九州大学大学院人文科学府博士後期課程修了。博士(文学)。
現在、九州大学大学院人文科学研究院助教。
主な論文に、「ラスール朝史料における東アフリカ」(『史淵』154、2017年)、
「中世イスラーム世界における乳香」(『嗜好品文化研究』2、2017年)など。

学術図書刊行助成

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