コメニウスの旅 <生ける印刷術>の四世紀

著者名
相馬伸一
価格
定価 8,580円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0237-3
仕様
A5判 上製 404頁 C3022
発行年
2018年8月
その他
第9回 九州大学出版会・学術図書刊行助成 対象作
令和元年度 佛教大学学術賞受賞
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内容紹介

世界初の絵入り教科書『世界図絵』を著した17世紀チェコの思想家コメニウスは、「近代教育学の祖」と見なされている。しかし、彼には宗教者・哲学者・言語学者・民族主義者・政治行動者といった多様な側面がある。彼の限定されたイメージは、とくに啓蒙主義と民族主義が興隆した19世紀における言説によるところが大きい。

コメニウスは、人間がテクストの世界に生き、ある刻印をされると同時にその印象を表現する存在であり、刻印と表現が無限に続くプロセスを<生ける印刷術>と呼んだ。本書では、この歴史的な洞察を彼自身にあてはめて、四世紀にわたるコメニウスをめぐる言説の歴史を描こうとするメタヒストリーの試みである。日本、チェコ地域、ドイツの史料を駆使して彼のイメージを見直すことで、四世紀の時代相を照らし出す。

巻末には、コメニウス研究に役立つ情報も整理して掲載。日本では初収録のものを含む約130点の図版は、コメニウスのイメージの広がりを直観させてくれるだろう。

目次

 はじめに
 凡 例
 
第一章 漆黒の一七世紀より  生ける印刷術  
 
 一 一七世紀の時代相をめぐって
 二 光の思想家コメニウス
 三 論点としてのコメニウス
 
第二章 伏流する一八世紀  啓蒙主義の光と  
 
 一 啓蒙主義のコメニウス批判
 二 避難所としてのドイツ
 三 暗黒としてのチェコ
 四 仲介者ヘルダー
 むすび
 
第三章 湧出する一九世紀  近代の光と  
 
 一 チェコ民族再生運動のなかで
 二 「近代教育学の祖」の誕生
 三 日本における受容
 四 照らしあい広がる言説
 むすび
 
第四章 眩惑する二〇世紀  イデオロギーの光と  
 
 一 二つの戦争の時代
 二 東西冷戦のなかで
 三 戦後日本の教育学のなかで
 四 プラハの春前後
 むすび
 
第五章 模索する二一世紀へ  思想史問題としてのコメニウス  
 
 一 冷戦終結と近代の再考
 二 歴史記述をめぐる課題
 三 歴史の意味の恢復に向けて
 むすび
 
付録一 コメニウス研究ガイド
 
付録二 コメニウスゆかりの地
 
 文献一覧
 あとがき
 索 引

著者紹介

相馬伸一(そうま しんいち)
 
筑波大学大学院博士課程教育学研究科単位取得退学。博士 (教育学、筑波大学)。
広島修道大学人文学部専任講師、助教授、教授 (1994-2018年)、英国ウォリック
大学教育研究所客員研究員 (1998‐99年)、チェコ共和国科学アカデミー哲学研究所
客員研究員 (2014‐15年) を経て、現在、佛教大学教育学部教授。
 
主要著書
 『ヨハネス・コメニウス  汎知学の光』(講談社選書メチエ、2017年)
 『教育的思考のトレーニング』(東信堂、2008年)
 『教育思想とデカルト哲学  ハートリブ・サークル 知の連関』(ミネルヴァ書房、2001年)
 
主要訳書
 パトチカ『ヤン・パトチカのコメニウス研究  世界を教育の相のもとに』(編訳、九州大学出版会、2014年)
 コメニウス『地上の迷宮と心の楽園』(監修、東信堂、2006年)

書評

日本教育学会『教育学研究第86巻第3号 pp.398-400 評者:井ノ口淳三(追手門学院大学名誉教授)
 
学術図書刊行助成

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