内容紹介
著者のインタナショナル(国際社会主義)史研究は、1919年3月コミンテルン創立大会への西欧からの数少ない出席者のひとりとして知られるオランダ社会主義者兼土木技師S.J. リュトヘルスの国際的活動への一国史的な枠組みを超えた追跡調査を手がかりに、『リュトヘルスとインタナショナル史研究』より始まった。4冊目の著作となる本書によって、ようやくコミンテルン創設という本テーマのクライマックスにまで辿り着いた。第1次世界大戦勃発によって第2インタナショナルが事実上「崩壊」したあと起こった国際反戦社会主義運動であるツィンメルヴァルト運動を主たる契機としてめざされた「インタナショナルの再建」は、果たしてロシア10月革命を背景としたコミンテルン創設によって実質的に実現したのであろうか? その帰趨を見極め、なぜ、どのようにしてそうならなかったか、を旧ソ連の文書館史料公開によって新たに発見した第1次史料等を駆使し、実証的に解明する。
かくして、ツィンメルヴァルト運動からコミンテルン創設直後までの国際社会主義運動の一大再編過程である過渡期のインタナショナル史研究を縦糸にし、「世界を股にかけて旅する人」に因んだ偽名を一時使ったリュトヘルスにスポットライトをあてた「下から」のインタナショナルな「関係史」のケイス・スタディを横糸にして織りこまれた研究となっている。半世紀にわたるインタナショナル史研究が、本書をもって戦争と平和、そして革命の時代におけるインタナショナルの史的研究4部作として完結する。
山内昭人 インタナショナル史研究四部作
『リュトヘルスとインタナショナル史研究』(1996、ミネルヴァ書房)
『初期コミンテルンと在外日本人社会主義者』(2009、ミネルヴァ書房)
『戦争と平和、そして革命の時代のインタナショナル』(2016、九州大学出版会)
『第3インタナショナルへの道』(2021、九州大学出版会)