内容紹介
貿易都市長崎の仕組みは複雑であり,その実態は未解明な点が多い。本書は,新史料を含めた長崎の特徴ある史料を利用して貿易都市長崎の構造やその実態を明らかにしている。
序章および第一章は,まず貿易都市長崎の基本構造の概要を示し,長崎の町とその住民である丸山遊女や貿易商人,祭礼である長崎くんちといった各方面の構造・様相について論じたもので,長崎の国際貿易都市としての特徴が鮮やかに描き出されている。また,長崎近世史研究の入門編としても活用できよう。第二章は,蘭学の発達史をオランダ通詞の視点から捉え直そうとしたものである。オランダ貿易の担い手であるとともに,蘭学者としての側面を併せ持っていたオランダ通詞の業績に対し再評価を促している。第三章は,ドンケル=クルチウスやグラバー,デ=レーケといった幕末・明治期に長崎で活躍した外国人の活動について検討し,国際都市の多様な側面を明らかにしている。最後に第四章は,重要文化財に指定された「長崎奉行所関係資料」について,その概要と指定の意義を論じ,さらに奉行所文書を使用して長崎キリスト教史にも言及している。