内容紹介
本書は,天保から明治維新直前の慶応までの佐賀藩の藩政史を明らかにした『幕末期佐賀藩の藩政史研究』(九州大学出版会,平成九年刊)の続編である。
文久二年から翌年にかけて前佐賀藩主鍋島閑叟は,長州藩・薩摩藩やその他の藩と同じように「公武周旋」を行ったが,十分な成果を挙げることができなかった。大名や志士たちの大きな期待を受けながらも,鍋島閑叟を中心とする佐賀藩は以後ほとんど政治的な動きを起こすことはなかった。しかし徳川幕府が倒れて後は新政府のもとで,藩体制の集権化を実現した力を背景に,蓄えた近代的な軍事力によって戊辰内乱で活躍し,西南雄藩の一つとして新政府内で重きをなすに至った。
本書ではこうした佐賀藩の政治的経緯を明らかにするとともに,雄藩としての佐賀藩の明治初年から同四年の廃藩置県までの藩政改革の実態について分析を行う。前著で明らかにした幕末期の佐賀藩の藩政改革と関連させながら,行政機構の改編,家臣団体制の解体,財政構造の変質,「物産仕組」の展開などの具体的内容とその性格づけについて論及する。そして維新期の多久私領地の動きも踏まえて,佐賀藩の明治維新史上の意義づけについての考察を目的としている。