内容紹介
郭沫若は日本と深い関わりを持つ現代中国の文学者であった。彼は大正3年から12年までの間日本に留学していた。この十年間,彼は西洋医学を勉強しながら文学者への道を歩み,日本という異文化の中で同時代中国の新詩の流れを変えてしまうほどの文学巨人に成長した。もともと医学生の彼は何故詩人になったのか,異文化の狭間にいる彼は日本でどんな思想に接し,精神的にどんな滋養を吸収していたのか。青天の霹靂のように中国新詩壇を震撼させた彼の処女詩集『女神』を育んだ創作環境と詩人の精神風土は未だに解明されていない。
本書はこのような問題意識で彼の留学事情及び文学創作環境の事実検証を主軸に,彼が日本で書いた文学作品を論じ,そして彼の日本留学の足跡を追いながら,哲学,文学思想の受容関係を探り,現代中国の代表的な文学者にまで成長した過程と,若き詩人郭沫若のより真実な人間像を突き止めることを目指している。