知覚・言語・存在 メルロ=ポンティ哲学との対話

著者名
円谷裕二
価格
定価 5,940円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985‐0141‐3
仕様
A5判 上製 420頁 C3010
発行年
2014年12月
その他
第5回 九州大学出版会・学術図書刊行助成 対象作
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内容紹介

20世紀フランスの代表的哲学者メルロ=ポンティは、世界とは何か、自己やその生とは何か、あるいは世界と自己の原初的で根源的な関係はどのようになっているのかなど、古代ギリシア以来現在に至るまで侃々諤々の議論が絶えない哲学の根本諸問題に対して、透徹した洞察力と事象そのものに促された両義性という両立しがたい観点から他に類を見ない一貫した表現力によって接近している。本書は、存在、知覚、身体、言語、歴史、芸術、倫理などのテーマを手がかりに、彼の哲学との対話と対決の中から紡ぎ出されたものであり、テーマの多様性にもかかわらず全体的な統一性を維持しているが、それというのも全体を視野に入れながらの個別の表現こそが、哲学を科学から区別する根本的理由だからである。自然と文化、自由と必然、内在と超越、精神と物体という近代の二元論的思考への批判とその克服を企てる本書は、近現代のさまざまな哲学者との対峙においてそのことを遂行している。

目次

 凡 例
 
序 論
 
    第一部 知覚・身体・空間
 
第一章 知覚の弁証法と偶然性の問題
 
  はじめに
  第一節 具体的運動と抽象的運動
  第二節 形式と内容の弁証法
  第三節 弁証法の内的構造
  第四節 偶然性の問題
  第五節 弁証法的偶然性
 
第二章 身体と生きられる空間
 
  はじめに
  第一節 生きられる空間と客観的空間
  第二節 生活空間―その一、身体と空間経験
  第三節 生活空間―その二、奥行経験と動機づけ
  第四節 客観的空間の優位説
  第五節 生活空間の優位説
  第六節 生きられる空間の根源的諸相
 
    第二部 言語・真理・歴史
 
第三章 真理と表現
 
  はじめに
  第一節 パースペクティヴ主義と世界概念
  第二節 時間性と真理
  第三節 起源への遡行から真理の表現へ
  第四節 表現論を看過した意味論や真理論への批判
  第五節 「真理の実現」としての表現
  おわりに
 
第四章 言語と身体―『知覚の現象学』の言語論
 
  はじめに
  第一節 身体所作とは何か
  第二節 言葉は所作であり、その意味は世界である
  第三節 所作とは異なる言語の固有性
  第四節 言語の全体像
  おわりに
 
第五章 言語のダイナミズム―ウィトゲンシュタイン、ハイデッガー、メルロ= ポンティ
 
  はじめに
  第一節 伝統的な言語観への批判
  第二節 言語と行為
  第三節 規則に従う共同行為
  第四節 言語の開在性と創造性
  第五節 言語と歴史
  おわりに
 
第六章 言語・構造・歴史―中期の言語哲学
 
  はじめに
  第一節 身体論的言語論から構造論的言語論へ
  第二節 ラングの構造転換
  第三節 〈制度化し− 制度化される〉無意図的な語る主体の共同体
  おわりに
 
第七章 意味と歴史―言語から歴史へ
 
  はじめに
  第一節 従来の歴史観への批判
  第二節 マックス・ヴェーバーの歴史哲学
  第三節 歴史の不条理性と偶然性
  第四節 歴史の意味とその了解
  おわりに
 
    第三部 存在論としての後期哲学
 
第八章 間接的方法としての内部存在論―後期哲学の方法論
 
  はじめに
  第一節 近代哲学の批判と内部存在論
   第一項 科学主義への批判
   第二項 反省哲学への批判と超反省
   第三項 否定性の哲学への批判と超弁証法
   第四項 直観主義への批判と地平の思考
  第二節 間接的方法としての内部存在論
   第一項 循環的思考
   第二項 反省という媒介
   第三項 反省と〈存在〉の相互関係
   第四項 否定性と超反省
   第五項 反省の事後性の両義性
  おわりに
 
第九章 知覚の存在論―『見えるものと見えないもの』に即して
 
  はじめに
  第一節 経験論と主知主義
  第二節 〈見えないもの〉としての〈存在〉
  第三節 肉としての〈見えるもの〉
  第四節 赤の知覚の存在論
  第五節 構造的変様と概念なき感覚的理念
  第六節 〈存在〉の暴露と隠蔽―間接的存在論
 
第十章 身体と肉―再帰性・可逆性・隔たり
 
  はじめに
  第一節 知覚主体とは何か―身体から肉へ
  第二節 身体の再帰性と肉の概念
  第三節 可逆性と隔たり
  おわりに
 
    第四部 芸 術 論
 
第十一章 存在論としての芸術論
 
  はじめに―芸術論の一般的特徴
  第一節 〈見えるもの〉と〈見えないもの〉の可逆性としての肉
  第二節 〈可視性〉とは何か
  第三節 次元としての色とその構造転換
  第四節 芸術における感覚的理念
  おわりに
 
第十二章 絵画と真理 ―〈見えるもの〉と〈見えないもの〉
 
  はじめに―伝統的な絵画論への批判
  第一節 具象と抽象
  第二節 作品と生
  第三節 美と芸術
  第四節 存在の真理の実現
 
    第五部 生と死と倫理
 
第十三章 生と死―ハイデッガーとメルロ= ポンティをめぐって
 
  はじめに
  第一節 生の哲学―生の根源的偶然性
  第二節 死の哲学―ハイデッガーの実存論的な死の概念
  第三節 生と死の弁証法―死を超える高次の生
  第四節 宗教と歴史
 
第十四章 倫理の存在論的可能性―カント倫理学の現象学的解釈の試み
 
  はじめに
  第一節 カント倫理学における問題の所在
  第二節 感性的存在としての意志
  第三節 悟性界の成員としての意志
  第四節 〈あいだの存在〉としての意志
  第五節 理性の事実
 
 初出一覧
 あとがき
 人名索引

著者紹介

円谷裕二(つぶらや ゆうじ)
 
1952年福島県いわき市生まれ。東京大学理科Ⅲ類入学,同文学部卒業,同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。信州大学助教授および九州大学助教授を経て,1998年九州大学哲学哲学史講座教授,現在,同大学院人文科学研究院哲学講座教授。
 
主要業績
著書『経験と存在―カントの超越論的哲学の帰趨』(東京大学出版会,2002)
『近代哲学の射程―有限と無限のあいだ』(放送大学教育振興会,2003)など
編著『現代カント研究 5 社会哲学の領野』(晃洋書房,1994)

学術図書刊行助成

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