内容紹介
「楽園」とも「秘境」とも称されるパプアニューギニア。そこに暮らす人びとは、自らのよりよき生の実現を求めて、ダイナミックに動き続ける人びとだった。本書は、辺境の村から都市のスラムまで、40年間フィールドワークを続けてきた著者が渾身の力を込めて描く、リアルでダイナミックな「場所」と人びとの物語である。
「フィールドワーク」とは、わたしの世界とわたしのものではない世界をつなぐ実践であり、グローバル化時代に、遠く離れた他者を共感的に理解し、同時代を共に生きるものとして甦らせる地理的想像力を与えるのが、「動態地誌」の役割にほかならない。調査研究対象と協働して「場所」を再構築するフィールドワークが、あるべき開発実践につながるという著者の主張は、ポストコロニアリズムやポスト開発論の袋小路から調査研究を解き放ち、北の世界と南の世界の社会経済的格差・知の格差を乗り越えるための方向性を示唆している。