内容紹介
今日、家族の問題解決力は著しく衰退し、地域(コミュニティ)の存続が困難になってきている。本書では、そのような現状への有効な方法としてのコミュニティづくりのモデルが提示される。
まず基礎理論として、生成的コミュニティ論が示される。それは、従来の社会資源導入法に見られる実在的なコミュニティの定義を批判的に吟味したうえで、ハイデガーのケアの概念を基礎にして、ベイトソンの情報還流モデルと廣松渉の四肢構造論を結合させ、ケア実践を通して人とものが「~として」相互に生成される力学を理論化する枠組みである。
さらにこの基礎的理論枠は、日常の生活場面の説明のため社会的相互作用の概念に変換される。つまり、コミュニティの生成に不可欠なケア実践は、システムの構成員間の行為の交換、そしてそれらの連結機能を有する期待という要素に変換され、それらのなかで特に期待の差異化を軸にしてコミュニティの生成力学が論じられる。
さらに変容技法論の体系化が試みられる。北米ミラノ学派の循環的質問法を、人とものの構成軸と期待の変数を入れて再構成される。そして再構成された循環的期待の差異化により生じた、コミュニティの生成力学の効果測定も論じられる。
これらの変容の基礎及び社会理論、技法論、および効果測定法から構成されるコミュニティ支援法の有用性が、具体的な臨床事例を用いて提示される。