内容紹介
2013年12月、南スーダンの首都ジュバで生じた政治家同士の対立がもととなった武力衝突は、瞬く間に南スーダン全土を巻き込む内戦と化した。一民族をターゲットとした「ジュバ虐殺」の後、人々は国家から押し付けられた「民族対立」の中を生きている。今なお200万人以上の南スーダン人が、国内外で難民としての生活を余儀なくされている。
「ジュバ虐殺」から10年 虐殺を生き延びた南スーダン、ヌエル社会の人々は、隣国ウガンダで難民としての新たな生を営み始めた。難民とは、果たして私たちがイメージするように、脆弱で支援を求める受動的な犠牲者に過ぎないのだろうか。本書では、太古より遊牧の歴史を歩んできたヌエルの人々が、避難先で新たな秩序をどのように創り出し、他者と生きる方法をどう編み出してゆくのかを報告する。タマリンドの木は、南スーダン各地に伝わる起源神話において、人類の「故郷」や「母」を意味する。難民となったヌエルの人々は、避難先に新たな「タマリンドの木」を見つけ、その木の下で悩み、世界に対する問いを発していた。「難民の世紀」において、私たちは彼らから何を学ぶことができるだろうか。本書では、南スーダンの紛争後社会を生きる人々が持つ、既存の秩序と向き合い、自らの生を生き直す技法を、南スーダンの避難民キャンプとウガンダの難民居住区でのフィールドワークから明らかにする。南スーダン難民の生活や文化・政治活動などを捉えた写真多数収録。