観光経済学の基礎講義

著者名
中平千彦・薮田雅弘 編
価格
定価 3,190円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0204-5
仕様
A5判 並製 352頁 C3033
発行年
2017年7月
その他
2017年 日本応用経済学会著作賞受賞
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内容紹介

今、日本経済の復活と地域の活性化の切り札として観光の意義と将来性が問われている。しかし観光にできることを直観的に理解し、その影響力を予測することは実際には難しい。観光とはそもそも発展可能なのか、また発展させうるとすればどのような方策を取ればよいのか。加えて観光に対する国民の意識や政策課題など、観光を考えるうえで必須の要因を、ミクロ経済学やマクロ経済学の最新の知見や、「世界遺産」や「爆買い」など観光を巡るさまざまなトピックをもとに分析する。「観光の経済」も「観光と経済」も経済学の観点から見て初めて正しく理解できるものであり、本書とともに観光経済学を学ぶ航海を成し遂げた読者は、観光について自ら語ることができるようになるであろう。

目次

 はじめに
 
第1章 観光の現状と課題
 
  1.1 はじめに
  1.2 観光をどうとらえるか
  1.3 観光の目的はなにか
  1.4 観光のもたらす課題はなにか
 
 第1部 マクロ経済学と観光
 
第2章 SNAと観光統計
 
  2.1 はじめに SNAの概念と観光統計 
  2.2 SNAの基本構造
  2.3 SNA推計の現代的トピック
  2.4 サテライト勘定の意義と分類
  2.5 旅行・観光サテライト勘定と観光分析
  2.6 旅行・観光統計および関連情報の入手
  2.7 おわりに
 
第3章 消費理論と観光
 
  3.1 はじめに 消費と消費関数 
  3.2 可処分所得と租税を考慮した消費関数
  3.3 消費関数における短期と長期
  3.4 消費決定の仮説
  3.5 観光消費の性質
  3.6 おわりに
 
第4章 投資理論と観光
 
  4.1 はじめに 投資と投資の決定要因 
  4.2 限界効率と投資判断
  4.3 投資の限界効率表と投資量の決定
  4.4 加速度原理
  4.5 ストック調整原理
  4.6 ジョルゲンソン型投資関数
  4.7 投資の調整費用モデル
  4.8 トービンのq理論
  4.9 おわりに 観光投資の性質 
 
第5章 産業連関表と観光
 
  5.1 はじめに
  5.2 世界の観光
  5.3 観光のマクロ経済効果と産業連関分析
  5.4 観光の経済効果分析の事例
  5.5 旅行・観光サテライト勘定(TSA)
  5.6 おわりに
  トピックス:観光の効果を実際に計算する
 
 第2部 ミクロ経済学と観光
 
第6章 消費者行動と観光
 
  6.1 はじめに
  6.2 消費者行動の把握 需要曲線の導出 
  6.3 観光サービスの対象と観光サービスの選択
  6.4 観光需要と弾力性
  6.5 おわりに
  トピックス:わが国におけるインバウンドの急増
 
第7章 観光需要
 
  7.1 はじめに
  7.2 観光需要の実際
  7.3 観光需要の弾力性
  7.4 日本および世界の観光動向
  7.5 おわりに
  トピックス:九州の観光列車
 
第8章 観光サービスの供給
 
  8.1 はじめに
  8.2 企業の生産行動
  8.3 観光サービスの供給
  8.4 観光市場の構造
  8.5 おわりに
  トピックス:ホテル・旅館の倒産
 
第9章 観光市場の機能
 
  9.1 はじめに
  9.2 市場需要曲線と市場供給曲線
  9.3 市場均衡と市場調整
  9.4 観光市場の価格変動
  9.5 観光財・サービスの価格決定メカニズム
  9.6 おわりに
  トピックス:フリーパス料金制
 
第10章 観光市場の失敗
 
  10.1 はじめに
  10.2 市場の失敗と観光
  10.3 公共財
  10.4 コモンプール財と資源の過剰利用
  10.5 おわりに
  トピックス:世界遺産の価値
 
 第3部 経済学の応用と観光
 
第11章 開放経済と観光
 
  11.1 はじめに
  11.2 開放経済の道具立て
  11.3 観光の乗数分析
  11.4 開放経済とIS-LM体系
  11.5 マンデル・フレミングモデル
  11.6 おわりに インバウンド観光 
  トピックス:市中免税店とICT活用最前線
 
第12章 経済成長と観光
 
  12.1 はじめに
  12.2 新古典派の経済成長モデル
  12.3 観光の成長とテクノロジーの進歩
  12.4 日本のインバウンド市場と対策
  12.5 宿泊などの予約サービスにおける「口コミ」の重要性
  12.6 日本における観光発展の将来
      技術とホスピタリティ 
  トピックス:日本観光とホスピタリティ
 
第13章 貧困と観光
 
  13.1 はじめに
  13.2 プロプアー・ツーリズムとは
  13.3 貧困と市場経済
  13.4 持続可能な国・地域づくりに向けて
  13.5 おわりに
  トピックス:国民幸福度について
 
 第4部 観光経済の事例分析
 
第14章 文化財と観光政策
 
  14.1 はじめに
  14.2 文化財保護制度の現状と課題
  14.3 文化財と観光政策
  14.4 おわりに
  トピックス:日本遺産の認定
 
第15章 世界遺産と観光
 
  15.1 はじめに
  15.2 世界遺産の基礎知識
  15.3 観光資源としての世界遺産
  15.4 世界遺産の旅
  15.5 観光競争力
  15.6 おわりに
  トピックス:見た目の存在感から使い良さへ。「ル・コルビュジエの
    建築作品 近代建築運動への顕著な貢献 」の遺産価値
 
第16章 エコツーリズム
 
  16.1 はじめに
  16.2 エコツーリズムとは何か
  16.3 わが国のエコツーリズムの展開
  16.4 エコツーリズムの事例と課題
  16.5 おわりに
  トピックス:エコツアーガイド
 
第17章 離島の観光
 
  17.1 はじめに
  17.2 離島振興法の成立と展開
  17.3 離島の現状 人口,産業の概観 
  17.4 離島観光の現状と課題
  17.5 おわりに
 
第18章 観光の課題と将来
 
  18.1 はじめに
  18.2 国際観光市場の基本的構造とその動向
  18.3 日本の観光政策の主な目標と枠組み
  18.4 総合保養地域整備法(リゾート法)の失敗
  18.5 新しい観光戦略「ニューツーリズム」
  18.6 おわりに
  トピックス:民泊の課題
 
 おわりに
 
 索  引

著者紹介

<編著者>
中平千彦
(なかひら かずひこ)明海大学経済学部准教授
 
埼玉大学教養学部教養学科卒業。国際基督教大学大学院、東京都立大学大学院の
博士前期課程修了を経て、サザンイリノイ大学大学院経済学研究科博士後期課程
修了、Ph. D.(Economics)。島根県立大学助教授、准教授、諏訪東京理科大学
准教授などを経て2016年より現職。専門は応用マクロ経済学、応用計量経済学、
経済政策学、観光経済学など。主な著作は “A Structural VAR Analysis of the
Monetary Policy Stance in Japan,” International Journal of Economic Policy
Studies
, vol. 4, pp. 77-103, 2010、“The New Keynesian Phillips Curve for
Japan -An Empirical Analysis-,” International Journal of Economic Policy
Studies
, vol.6, pp. 99-119, 2012、“The Hybrid New Keynesian Phillips Curve
and Firm-level Inflation Expectations in Japan,” International Journal of
Economic Behavior and Organization
, vol. 3, issue 2-1, pp. 60-72, 2015 など。
 
薮田雅弘(やぶた まさひろ)中央大学経済学部教授
 
1981年九州大学大学院経済学研究科博士課程単位取得後退学。博士(経済学、
中央大学)。1981〜1989年福岡大学、1989年福岡大学経済学部教授を経て現職。
専門は公共政策、環境経済学、観光政策。主な著作は「コモンプールと環境政策」
『計画行政』(共著、18[4]、1995、日本計画行政学会論文賞受賞)、『コモン
プールの公共政策』(2004、新評論)、『環境と資源の経済学』(共編著、勁草
書房、2007)、“Dynamic Property of a Tourism Destination Network,” Tourism
Analysis
,(共著、16[4]、2011、pp. 493-498)、『ベーシック応用経済学』
(共編著、勁草書房、2015)、「エコツーリズムと環境保全」『グローバル社会は
持続可能か』(亀山康子・森昌寿編、岩波書店、2015、pp. 119-140)など。

<執筆者>(五十音順)
井田貴志(いだ たかのり)……第7章、第9章
熊本県立大学総合管理学部教授(公共経済学)
 
今泉博国(いまいずみ ひろくに)……第13章
福岡大学経済学部教授(環境経済学、厚生経済学)
 
大熊美音子(おおくま みねこ)……第11章、第12章、第18章
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程
 
小澤 卓(おざわ たかし)……第17章
公益財団法人日本離島センター総務・調査係長(公共政策、離島政策)
 
黒木龍三(くろき りゅうぞう)……第11章、第12章、第18章
立教大学経済学部・大学院ビジネスデザイン研究科教授(マクロ経済学、金融経済学)
 
田家邦明(たいえ くにあき)……第14章
公益財団法人日本農業研究所所長(農業経済学、公共経済学)
 
ダフチャン、アンナ(DAVTYAN、Anna)……第11章、第12章、第18章
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程
 
中平千彦(なかひら かずひこ)……第2章、第3章、第4章
 
目黒正武(めぐろ まさたけ)……第15章
特定非営利活動法人世界遺産アカデミー特任研究員(世界遺産学)
 
森 朋也(もり ともや)……第16章
山口大学教育学部専任講師(応用経済学、地域研究)
 
薮田雅弘(やぶた まさひろ)……第1章、第5章、第6章、第8章、第10章

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