植民地朝鮮の学校教員 初等教員集団と植民地支配

著者名
山下達也
価格
定価 7,700円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0065-2
仕様
A5判 上製 366頁 C3037
発行年
2011年12月
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内容紹介

本書は,植民地朝鮮における初等学校教員の姿に,従来の研究とは異なる視点から迫ったものである。教員社会における「民族」の可視化と隠蔽,修学旅行や視察での「内地」経験,養成プロセスに応じた序列化,性別による「適材適所」論とその解体などについて詳述し,教員の多様性と政略の連関を明らかにする。また,教員の思想問題や「質」の低下,招聘事業の停頓といった実態の解明を通じ,従来の教員の位置付けに一石を投ずる。

目次

 凡例
 朝鮮地図
 
序章
  第一節 研究の視座
  第二節 先行研究の検討と課題の設定
  第三節 本書の構成
 
第一章 教員社会における「民族」の可視化と隠蔽
  はじめに
  第一節 教員の「内鮮」混在状況
  第二節 「内地人」教員のポジションと役割
  第三節 「民族」格差とそれに起因する教員間の軋轢
  第四節 差異化と「同化」に潜在した政略
  小括
 
第二章 植民地教員の「内地」経験
  はじめに
  第一節 初等学校における「内地」学習
  第二節 養成段階における教員の「内地」経験
  第三節 教員の「内地」視察
  第四節 「内地」からの招聘教員の特徴とその存在意義
  小括
 
第三章 養成プロセスに起因する教員の序列化
  はじめに
  第一節 朝鮮における教員養成制度の構築とその変遷
  第二節 京城師範学校の特異性
  第三節 各地方における師範学校の位置づけと実態
  第四節 教員試験による教員の確保と資格の向上
  小括
 
第四章 性差に応じた「適材適所」論と植民地教員の実態
  はじめに
  第一節 教員社会における性差の顕在化過程
  第二節 性差に応じた「適材適所」論と女性教員のディレンマ
  第三節 女性教員養成の意義と「特長」
  第四節 性差と「民族」差の重なりに見る植民地教員の存在様態
  小括
 
第五章 教員集団の実態と植民地政策  教員の位置づけ再考  
  はじめに
  第一節 属性の顕在化と植民地政策との関連
  第二節 教員集団の実態に見る植民地政策の停滞と綻び
  第三節 植民地朝鮮における教員の位置づけ再考
  小括
 
終章
  第一節 本論のまとめと結論
  第二節 今後の課題と展望
 
 史料・参考文献
 あとがき
 初出一覧
 索引

図表等目次
 
第一章
図1-1 初等学校の制度「統一」を報じた記事
表1-1 普通学校教員の「民族」内訳
表1-2 「内地人」教員を対象とした講習会の科目および講師(1912年)
表1-3 教員による「社会教化」の内容(於:馬山公立普通学校)
表1-4 永同公立普通学校における「社会教化」活動(1922年)
グラフ1-1 「民族」別普通学校教員数の推移
 
第二章
図2-1 「親切」の課の挿絵
図2-2 「天皇陛下」の課の挿絵
図2-3 普通学校教科書の「国旗」の課
図2-4 修身教科書の「靖国神社」の写真
図2-5 普通学校教科書の「奈良」の課
図2-6 普通学校教科書の「京都」の課
表2-1 「内地」の師範学校を卒業した招聘教員(校長)数(地域別)とその出身校
表2-2  『朝鮮に赴任する国民学校教員の為に』の内容構成
写真2-1 京城師範学校の修学旅行(鎌倉大仏前)
写真2-2 京城師範学校の修学旅行(伊勢参拝)
 
第三章
図3-1 師範学校官立化についての記事
図3-2 京城師範学校の「難関」を報じる記事
図3-3 『朝鮮の教育研究』創刊号の表紙
表3-1 植民地期初期の教員養成制度(1911年)
表3-2 新設師範学校制度の特徴(1922年)
表3-3 「朝鮮初等教育研究会」主催研究大会の実施状況
表3-4 「主催者研究発表」の発表者および題目(1925年大会)
表3-5 奉天普通学校の教員とその出身校(1928年)
表3-6 公立師範学校の状況(1925年度)
表3-7 1929年以降に設立された官立師範学校
表3-8 大邱師範学校尋常科入学者数
表3-9 初等学校の増加状況(1910~1917年)
表3-10 教員試験の試験科目および内容(1916年)
写真3-1 京城高等普通学校附設臨時教員養成所
写真3-2 京城師範学校
写真3-3 京城師範学校の生徒(1936年)
写真3-4 第11回研究大会での会員集合写真
写真3-5 第13回研究大会の様子(1933年)
写真3-6 第18回研究大会の様子(1938年)
写真3-7 慶尚北道公立師範学校
 
第四章
表4-1 初等学校教員の男女混在状況(1912~1943年)
表4-2 師範学校各学科における科目(「師範学校規程」、1938年)
表4-3 師範学校普通科における各科目の時数
表4-4 師範学校演習科における各科目の時数
表4-5 師範学校尋常科における各科目の時数
表4-6 女性教員が特徴を発揮すべき方面およびその細目
表4-7 公立普通学校女性教員の「民族」内訳
表4-8 京城女子師範学校生徒の「民族」内訳(1935年)
グラフ4-1 初等学校教員数の推移
 
第五章
表5-1 初等学校の同盟休校件数(1921~1928年)
表5-2 「治安維持法」違反で検挙された教員数
表5-3 1941年(1~9月)における初等学校教員の思想事件

著者紹介

山下達也(やました たつや)
1981年,長崎県佐世保市生まれ。2010年,九州大学大学院人間環境学府博士後期課程修了,博士(教育学)。韓国国際交流財団(Korea Foundation)Fellow,日本学術振興会特別研究員,北九州市立大学非常勤講師を経て,現在,長崎総合科学大学専任講師。
主要論文:
「植民地朝鮮の師範学校における「内地人」生徒―官立大邱師範学校を中心に―」,『歴史学研究』No.819,2006年
「植民地朝鮮における「内地人」教員の多様性―招聘教員と朝鮮で養成された教員の特徴とその関係―」,『日本の教育史学』第50集,2007年
「歴史教育における近代化論の展望―「植民地近代」論からの示唆―」,『歴史地理教育』No.725,2008年
「植民地朝鮮における教員の位置づけ再考」,『植民地教科書と国定教科書』,2009年
「植民地朝鮮における教員の思想問題」,『アジア教育』第3号,2009年 ほか

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