内容紹介
本書の目的は工学系の学部教育や企業における能力開発において自己決定学習が果たす役割と効果を理論的および実証的に明らかにすることにある。自己決定学習とは学習者が学習内容の決定に関わる学習である。米国の工学教育の改革の歴史とそれによってもたらされた教育のイノベーションに照らせば、わが国の大学のエンジニア育成は学習に対する学生の自立と責任の意識の涵養とそれによる学習の個別化を重視してきたとは言い難い。この課題を克服するためのすぐれた学習方法が自己決定学習である。
本書では筆者の長年の研究に基づき学部教育における自己決定学習の事例とそれを導入するためのヒントを紹介する。また、未来への適応力を高めるためのカリキュラムについて考える。カリキュラム改革のポイントは、社会人が仕事でおこなう課題解決と能力開発の実態から学習内容を逆算し、仕事に必要なコンピテンシーを大学教育の目標に設定することにある。それによって、この人材育成方法は工学分野や大学教育に限らず社会のあらゆる場面に応用可能となる。