内容紹介
一大空白地帯となっていた近代中国法史に確固たる研究基盤を構築すべく、清末から中華民国期にかけて展開した法典編纂・習慣調査・法学につき、文献学的・人物学的方法を縦横に駆使して中国・日本・西洋におけるそれぞれの展開過程を整理する。
第一部では法典編纂を担った諸機関の経緯が整理され、並行して展開した習慣調査、特に中国史研究の基本資料である『民商事習慣調査報告録』の成立過程が克明に描写される。また民国期の諸立法の欧米諸語への翻訳とその流布の様相が紹介され、次いで中華民国民法に至る立法過程における中国人たちの議論、またフランス人法律顧問 Jean Escarra の議論の特徴が提示される。
第二部では大正期を中心とした日本における中国法学の展開、さらには中華民国法制研究会の活動経過が詳細に分析され、また当時活躍した法律顧問や中国各地で近代法制を教授した講師陣に関する人物研究が展開される。第三部では旧オランダ領東インドにおける「中国」法学と、それを受けて戦前戦後に活躍した van der Valk の業績が回顧される。
いずれも中国近代法史研究を遂行するに当たって必要となる史料批判に必要不可欠な前提を提供するとともに、改めて基礎研究の重要性についても問いかける画期的労作。