遠藤周作とキリシタン 〈母なるもの〉の探究

著者名
下野孝文
価格
定価 6,380円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0361-5
仕様
A5判 上製 406頁 C3095
発行年
2023年11月
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内容紹介

遠藤周作は、自作について書き、また語ることの多い作家であった。それは、創作意図、主題等へも及び、その言説が倣うべき一つの権威となり、研究へも作用する側面のあったことは否めない。本書は、そうした状況にとらわれない、作品と資料との関係を実証的に検討した成果を収める。

第一章から第六章までは、長崎を舞台とした切支丹物を主に、参考資料等からの作品への反映状況を検討した論考により構成した。それは、キリシタン時代から近現代までを背景に、創作活動の中核をなす期間に描かれた最初の切支丹物「最後の殉教者」(1959)から最後となる『女の一生 二部・サチ子の場合』(1982)までを主な論題とする。そして各章における論究を通して把握されたのは、その創作が〈日本人に合ったイエス像〉を描くという課題に取り組んだ段階的な所産であったという点である。さらにその課題が、青年期から抱えていたトマス・アクィナス、アウグスティヌスそれぞれの思想への躊躇と信頼とにつながっていると検証されたことから、二人に関連した形而上的な問題を考察する第七章を結びとした。

それはまた、アウグスティヌスの思想を後ろ盾にした許す神、母の宗教という本質を託した〈母なるもの〉の形成過程の探究でもあった。このように本書は、作品に関係した資料の受容状況の照査、また日本人に合ったイエス像を形作っていくプロセスの追究、さらにその背景にあった形而上的な問題の解明という各考察を関連付けた組み立てとなっている。

目次

 凡 例
 

 
第一章 切支丹物のはじまり  長崎、そして〈浦上四番崩れ〉  
 
 第一節 「最後の殉教者」論  その役割と原拠について  
 第二節 明治政府と〈浦上四番崩れ〉  「最後の殉教者」と『女の一生 一部・キクの場合』  
 
第二章 『哀歌』  『沈黙』の前奏曲としての役割   
 
 第一節 「札の辻」論  江戸の大殉教との関係から  
 第二節 「雲仙」論  参考資料との関係を中心に  
 第三節 『哀歌』から『沈黙』へ  〈踏絵〉というドラマについて  
 
第三章 『沈黙』  資料のなかの登場人物  
 
 第一節 概論、諸資料との関わりから
 第二節 フェレイラ、そして沢野忠庵
 第三節 キャラ、そして岡本三右衛門
 第四節 長與善郎『切支丹屋敷』との関係を中心に
 第五節 芥川龍之介「神神の微笑」を視座として
 
第四章 「母なるもの」と周辺作品  日本人と〈母の宗教〉  
 
 第一節 「母なるもの」論  カクレキリシタンを創る  
 第二節 『哀歌』から「母なるもの」へ  描かれた父像を中心に  
 第三節 『哀歌』論  〈母なるもの〉の形成と行方  
 
第五章 『女の一生 一部・キクの場合』  キクの献身、清吉の帰還  
 
 第一節 「キク」の時間、長崎の風物を中心に
 第二節 〈浦上四番崩れ〉を巡って
 第三節 津和野配流以後
 
第六章 『女の一生 二部・サチ子の場合』  コルベ神父と修平、それぞれの殉難  
 
 第一節 コルベ神父の長崎時代
 第二節 アウシュヴィッツのコルベ神父
 第三節 コルベ神父から修平へ
 
第七章 〈合わない洋服〉  トミズム(Thomism)と「日本的感性」  
 
 第一節 トマス・アクィナス受容の歴史を軸に
 第二節 トマス・アクィナスとアウグスティヌス  その躊躇と信頼  
 第三節 補論、拠り所としてのアウグスティヌス
 
 主要参考文献
 あとがき
 初出一覧

著者紹介

下野孝文(しもの たかふみ)

九州大学大学院文学研究科修士課程修了。
現在、長崎県立大学シーボルト校国際社会学部教授。
博士(学術、九州大学)。

学術図書刊行助成

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