内容紹介
九州大学文学部の教授陣が,東アジアの社会と文化の成り立ちを平易に解説する。そこでは「交流と変容」を共通のキーワードとして,歴史学・考古学・地理学・文学・美学・哲学・言語学など様々な観点から,多様なトピックスをとりあげる。これを通じて,東アジア各地の社会と文化の多様性が,不断の相互交流を通じて歴史的に形成されてきたものであり,いまなお変容し続けていることが示される。複雑な東アジア情勢の過去と現在を理解し,そして未来を見通すには,そうした社会と文化の流動性と多様性を柔軟に感じとる感性と,多角的に物事を考える知性とが求められる。本書はそうした東アジア理解の多様な「のぞき窓」を提供する手引き書である。
目次
東アジア この多様なる世界へのいざない ・・・・・ 森平雅彦
第I部 地域性から考える 自己/他者認識の原基
1 東アジア地域社会の形成と古代国家の誕生 ・・・・・ 宮本一夫
2 漢唐間の中国と日本 日本文明の特質との関連から見た ・・・・・ 川本芳昭
3 朝鮮古代(新羅)の「近中華」意識の形成 ・・・・・ 濱田耕策
4 朝鮮中世の国家姿勢と対外関係 ・・・・・ 森平雅彦
第II部 ヒトのつながりから考える 越境するネットワーク
5 日本中世に居住した外国人 ・・・・・ 佐伯弘次
6 ルーベンスの描いた朝鮮人 十六・十七世紀における東アジア人のディアスポラ ・・・・・ 中島楽章
7 初期コミンテルンと東アジア もう一つの日本共産党創立史 ・・・・・ 山内昭人
8 国境地域における交流と変容 対馬を事例に ・・・・・ 高木彰彦
第III部 モノから考える 移動する文物
9 近世の中国・朝鮮・日本に伝播した『孔子聖蹟図』 ・・・・・ 竹村則行
10 大名蔵書の中の国際交流 平戸藩楽歳堂の蔵書目録から ・・・・・ 岩崎義則
11 高麗仏画研究から学ぶこと ・・・・・ 井手誠之輔
第IV部 コトバから考える 交錯する言語
12 日本における『説文解字』 ・・・・・ 南澤良彦
13 漢字で日本語を書く 万葉仮名の世界 ・・・・・ 高山倫明
14 満洲語 話しことば・書きことばとその使い手 ・・・・・ 久保智之