城郭の縄張り構造と大名権力

著者名
木島孝之
価格
定価 17,000 円 (税別)
ISBN
978-4-87378-672-8
仕様
A4判 上製函入 720頁 C3021
発行年
2001年5月
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内容紹介

 徳川政権創立期は,戦国期抗争の拠点となった土豪・国人層の多数の城郭が整理・統合され,全国規模での本城・支城の再編が行われた時期である。当期社会が国民全体を軍役システムの体系の中に位置付ける国家であったと認識した場合,大名領国の本城・支城の縄張り(曲輪・堀・土塁・石垣等から造られた城郭の形)の構造にこそ,社会の実像が最も端的に投影されているものと考えられる。それにもかかわらず,戦国・近世史研究で,城郭遺構が史料として正当に扱われることは殆どない。当然ながら,城郭遺構自体は,文字史料のように事象を事細かく記す親切な史料ではない。そのため一見したところ,文字史料に比べて情報量に劣る,採るに足りない史料と思えるのかもしれない。しかしながら,城郭遺構は,当期社会を最も特徴付ける行為(すなわち軍事)の「直接的」産物である。そこには,「状況」証拠である文字史料では決して担えない,「物的」証拠としての質的な重みがある。従って,城郭遺構の分析(すなわち縄張り構造の解明)を切り捨てにしたまま,文字史料偏向型の歴史像の構築を進めていくならば,それがいかに細部にわたって詳細で明快な理論の体裁を整えようとも,戦国・近世社会の「実像」に迫ったことにはならないのではないか。
 そこで本書は,西南地域大名領を事例に,本城・支城の縄張りの構造から大名権力の実像を探る研究を試みた。具体的には,第1に,近世初頭期西南地域の城郭の縄張りを可能な限り視覚的に明らかにすること,第2に,それらの分析で明らかとなった城郭の類型と大名の政治的・軍事的特質との関係を解明すること,を目的とした。
 第1の目的に対しては,西南地域の大名13家(黒田・細川・田中・加藤・寺澤・毛利・鍋島・島津・伊東・相良・松浦・大村・有馬氏)について,本城・支城の遺跡の現地調査と,これに基づく「縄張り図」の作製を行い,各城郭の縄張りを可能な限り視覚的に明らかにした(図版篇参照)。第2の目的に対しては,各「縄張り図」を[主郭への求心性]と[縄張り技術]を指標に分析し,タイプ化を行った後,各大名領の城郭群が如何なるタイプをとるかを比較し,それが大名の政治的・軍事的特質とどのように対応するかを考察した。
 その結果,徳川政権創立期における西南地域大名領の本城・支城体制は,統一政権という言葉のイメージから連想されるような画一性のあるものではなかったこと,すなわち,一般に均質な大名権力の結集体として捉えられがちな徳川初頭期政権が,実は決して画一的な大名権力の結集体ではなく,豊臣政権との親疎関係からみた政治的出自や地理的文化圏・歴史的家系の違いから来る質的差異を多分に内包した多様な大名権力の結集体であったという実像が,城郭の縄張り構造を通して物証的に明らかになった。
 また,本篇で大名権力の政治的・軍事的特質の概括的な見通しを得たことに続いて,付論では,取り扱った城郭すべてにつき,文献史料・城郭の立地条件等の分析成果を勘案した更に詳細な検討を加えた。そして,各大名領の政治的・軍事的内実を具体的に検証した。

目次

[本 篇]
 序 論
 第1章 城郭の縄張りのタイプ化の基準
 第2章 各城郭の縄張りのタイプ化
 第3章 城郭群の類型と大名権力の相関
 結 論

[補註篇](各領における権力状態の概要/支城の概要/本城と各支城の縄張り構造)
 1.黒 田 領
    本城:福岡城/黒崎城/若松城/鷹取城/益富城/麻天良城/松尾城
 2.細 川 領
    本城:小倉城/門司城/香春城(鬼ヶ城)/岩石城/一戸城/中津城/竜王城/
    高田城/木付城
 3.田 中 領
    本城:柳川城/赤司城/久留米城/城島城/榎津城/福島城/猫尾城/江ノ浦城
    /鷹尾城・中島城/松延城
 4.加 藤 領
    本城:熊本城/南関新(鷹原)城/内牧城/愛東寺城/宇土城/麦嶋(前期八代)城
    /佐敷城/水俣城/[補]河尻城
 5.寺 澤 領
    本城:唐津城/岸嶽城/獅子ヶ城/富岡城/才津城/久玉城/栖本城/河内浦城
 6.毛 利 領
    本城:萩城/右田嶽城/三丘嶽城/笠松山城/荒滝山城/高嶺城/長府城/岩国城
 7.鍋 島 領
    本城:佐賀城/梶峰城/武雄(塚崎)城・住吉城/須古城/諫早城/常広城/神代城
    /村田館/俵石(深堀)城/蓮池城
 8.島 津 領
     (A)「三殿」の居城
    鹿児島城(詰城上之山城)/内城(詰城東福寺城)/富隈城/国分新城(詰城隼人城)/
    飯野城/栗野城/帖佐館(詰城平山城)/平松館(詰城岩剣城)/加治木館
     (B) 地頭所の外城
    高岡(天ヶ)城/穆佐城/倉岡城/志布志城/一宇治城/蒲生城/市来鶴丸城/
    頴娃城/伊作城/横川城
    (C)私領の外城(私領主の居城)
    都之城/知覧城/清色城
 9.相良領・伊東領
    相良氏本城:人吉城/大畑城/湯前城/[補]その他の相良領の外城
    伊東氏本城:飫肥城/清武城/酒谷城/曾井城/南郷城/柴波洲崎城
 10. 松 浦 領
    梶谷城/亀尾城/本城:日之嶽(平戸)城
 11. 大村領・有馬領
    大村氏本城:玖島城
    有馬氏本城:原城/日野江城/金山城

[付論] 各藩における本城・支城の縄張り構造と大名権力

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