在明(ありあけ)(わかれ)残月抄(ざんげつしょう)天下の孤本を新しい校訂本文で読み解く

著者名
辛島正雄
価格
定価 6,000円(税別)
ISBN
978-4-7985-0300-4
仕様
A5判 上製 370頁 C3095
発行年
2021年3月
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内容紹介

『在明の別』は平安最末期に成った王朝物語の傑作であるが、長らく散逸したものと見なされ、現存することが分かったのは戦後になってからである。藤原摂関家存亡の危機を救うため、春日の神の加護のもと人間界に降誕したヒロインが、たった一人で嫡男と姫君、男女二人分の役割を果たす奇跡の物語は、性の偽装をモチーフとする『とりかへばや』の流れを汲みつつも、さらに複雑精妙な物語世界を描き出す。しかし従来は、解釈困難な箇所の続出する「天下の孤本」を、十分な校訂が施されないまま読むほかなかった。本書では、そのように難解をもって聞こえる物語本文を、文献学的方法を駆使して鮮やかに読み解くことで、ヴェールの向こうに朧げに見えていた物語世界を、くっきりと浮き上がらせることに成功している。

前編「『在明の別』を読む」では、後編「『在明の別』の本文校訂と読解」の各章でなされた検討結果に基づく新しい「校訂本文」を用いて、この物語の読解のポイントが、詳細かつ丁寧に解き明かされる。そのなかで、登場人物の複雑な絡み合いの中心にいるヒロインが、誰とどのような関係性を築いているかが、表現の微細な対応関係をも押さえながら解きほぐされてゆくさまは、壮大な謎ときを見るかのようである。竹取の翁のもとにかぐや姫がやってくるあの「物語の出で来はじめの親」を、氏の長者・左大臣のもとにヒロインが遣わされるというかたちに、大胆にスケールアップした『在明の別』の真骨頂は、本書によって初めて明らかとなる。

目次

序 『在明の別』への誘い  異性装と隠形の物語  
 
  はじめに
  一 異性装の物語
  二 隠形の物語
  三  『今隠れ蓑』待望論  『無名草子』から
  四 散逸物語としての『在明の別』
  五  『在明の別』の出現
  六 大摑み『在明の別』
  七 求められる新しい校訂本文

     前編  『在明の別』を読む
 
第一章 作中和歌から何が見えるか
 
  はじめに
  一  『在明の別』巻二以降の作中和歌
  二 東宮と女院とによる最後の贈答歌
  三 女院と東宮との関係性
  四 響き合う作中和歌
  五 右大将の死と対の上
  おわりに
 
第二章 左大臣の恋
 
  はじめに
  一 左大臣の恋の原型
  二 中務宮の北の方との出逢いと破局
  三 女院のもとへ
  四 荒れすさぶ中務宮の北の方
  五 再び、女院のもとへ
  六 女院への思いの行き着くところ
  七 左大臣の逍遙と垣間見
  八 持ち帰った紅葉を女院に奉る
  九 粟津の女と契る
  十 粟津の女への恋着と見守る母の思い
  十一 右大臣の大君との結婚とその余波
  十二 粟津の女を都へ迎える用意整う。送り出す母の思い
  十三 左大臣の身の落ち着きと内大臣の夢
  十四 内大臣、三条の女と再会
  十五 内大臣、娘婿として左大臣を歓待
  十六 秘密の通い所から四条の上へ
  十七 中務宮の北の方、ついに物の気となる
  十八 物の気、右大臣の大君を取り殺そうとする
  十九 物の気、今度は四条の上に取り憑く
  二十 中務宮の北の方の死とその後の左大臣
  おわりに
 
第三章 父と娘の旅路
 
  はじめに
  一  〈男装の姫君〉誕生の舞台裏
  二  〈隠れ蓑〉の術を駆使する右大将
  三 右大将の結婚と対の上の出産
  四 右大将の揺れる思いと笛による奇瑞
  五 対の上の受難と、それを歓迎する左大臣家
  六 男装との別れを惜しむ右大将
  七 帝の夢と運命の夜  右大将、死す
  八 左大臣、動く
  九 失われた右大将を求めて
  十 将来に向けて  左大臣の戦略
  十一 左大臣と中宮を支える太政大臣と女院
  十二 旅路の終わり  娘の宿世に満足し、終焉のときを迎える父
  おわりに
 
第四章 右大将は誰に向けて和歌を詠んだか
 
  はじめに
  一 右大将の作中和歌一覧
  二 前後で一変する巻一の和歌
  三 巻二の和歌
  四 巻三の和歌
  五 右大将=女院が和歌を詠むとき
  おわりに
 
第五章 死にゆくふたりを結びつける原点
 
  はじめに
  一 ふたりの恋の原点
  二 内大臣が中務宮の北の方を求めた理由
  おわりに

     後編  『在明の別』の本文校訂と読解
 
第六章 巻一読解考  「この君はかりかにこもり給て」を中心に  
 
  はじめに
  一 損傷した本文の修復
  二 神慮により支えられる物語世界
  三 左大臣の迷い
  四  「春日の神」と物語史
  おわりに
 
第七章 巻一本文校訂・読解考
 
  はじめに
  一  「いとしふぞ。」
  二  「思うとま((れ))給へれ。」
  三  「もてなさるゝを、かくの((み))いみじう」
  四  「御めのとご、こゐ給中納言などは」
  おわりに
 
第八章 巻二本文校訂・読解考
 
  はじめに
  一  「この御かたにやがて御ま((へ))にまいり給へり。」
  二  「あ((せカ))とけしていたくふかれにけるにや。」
  三  「あまりさまかはれる」文
  四  「うらみにはらい((さカ))せ、かならずたすけさせ給へ。」
  五  「おとゞいかゞ((とゞ))御かひを((つ))くり給。」
  六  「をはする日ゞに」「ひまを見す」「かはり給え((ば))
  おわりに
 
第九章 巻三本文校訂・読解考
 
  はじめに
  一 中務宮の北の方、左大臣のふたりの妻に取り憑く
  二 中宮の御産につづく一連の慶賀の場面
  三 内大臣の末路
  四 院の四十の賀と天女降下の奇瑞
  五 太政大臣、大堰に閑居を占める
  六 左大臣、東宮の女御に迫る
  七 入道太政大臣、満足裡に臨終を迎える
  八 左大臣をめぐる最後の場面
  九 謎の歌をめぐって
  おわりに
 
第十章 巻三読解考  中宮出産の場面を中心に  
 
  はじめに
  一 中宮の御産と産養
  二  『在明の別』と『紫式部日記』
  三  『紫式部日記』の自在な摂取
  おわりに
 
 礎稿一覧
 あとがき
 索  引

著者紹介

辛島正雄(からしま まさお)
 
九州大学大学院文学研究科博士後期課程中退。九州大学文学部助手、徳島大学教養部講師、九州大学教養部
助教授などを経て、2021年3月まで、九州大学大学院人文科学研究院教授。博士(文学、九州大学)。
 
主要著書
『御津の浜松一言抄 『浜松中納言物語』を最終巻から読み解く (九州大学人文学叢書8) 』(2015年、九州大学出版会)
『中世王朝物語史論 上巻・下巻』(2001年、笠間書院)
『小夜衣 (中世王朝物語全集9) 』(1997年、笠間書院)
『堤中納言物語・とりかへばや物語 (新日本古典文学大系26) 』(共著、1992年、岩波書店)

学術図書刊行助成

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