ノヴァーリスにおける統合的感官としての「眼」 「自己感覚」から「心情」へ

シリーズ名
九州大学人文学叢書 22
著者名
大澤遼可
価格
定価 4,400円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0347-9
仕様
A5判 上製 220頁 C3398
発行年
2023年3月
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内容紹介

ドイツ初期ロマン派の詩人ノヴァーリスによれば、世界は本来「精神の啓示」である。そのような世界とは静的かつ固定的な事物の寄せ集めではなく、本来的に「精神」と呼ぶほかない不可視の根源的な力と連関のうちにある。しかし現状においてその連関を認識することができないわれわれは、「精神の啓示」を読み取ることもまたできない。ノヴァーリスはそのような状況を「世界の意味」の喪失と呼ぶ。

彼の詩学において一貫して目指されているのは、この失われた「世界の意味」の回復であり、それは世界と「精神」との根源的連関の回復によって果たされる。この連関において、超感覚的な「世界の意味」は感覚可能なものとして認識される。その限りで世界とは読解可能な一冊の書物に他ならない。ノヴァーリスは、自らの詩学的使命を「一冊の書物に宇宙を見出すこと」だと言明している。この命題には、人間による世界認識の過程  「世界の書物化」  、ならびに記述を通じた世界創造の過程  「書物の世界化」  という二方向の活動が集約されている。この双方向的活動を、統合的感官だとされる「眼」を起点に論じる。

哲学・自然科学・詩学にまたがる詩人の思考の複雑性を明晰に分析・叙述する、包括的ノヴァーリス研究。

目次


 
   第一部 世界の書物化
 
第一章 「フィヒテ研究」におけるノヴァーリスの認識論
 
 第一節 自我を規定する視覚
 第二節 「素材」と「形式」の相互規定性
 第三節 「黄金時代」の所在
 
第二章 『夜の讃歌』論
 
 第一節 生と死の等価
 第二節 「夜がわれわれのうちに開いた無限の眼」
 第三節 愛と信仰の等価
 
第三章 ノヴァーリスの自然科学研究
 
 第一節 発生において世界を見る
 第二節 石化した自然
 第三節 自然と精神
 
第四章 視覚と身体
 
 第一節 統合的感官としての視覚
 第二節 統合的感官としての身体
 第三節 「質的遠近法」
 
   第二部 書物の世界化
 
第五章 「科学的な聖書」
 
 第一節 有機的な言語
 第二節 百科全書的記述の試み
 第三節 「心情」の描出としての「ポエジー」
 第四節 「ロマン化」
 
第六章 『ハインリヒ・フォン・オフターディンゲン』論
 
 第一節 歴史を記述する寓話
 第二節 自らの内にあるものへの憧憬
 第三節 ハインリヒを中心とした求心的運動
 第四節 ハインリヒを中心とした遠心的運動
 

 
 参考文献
 あとがき
 人名索引
 事項索引

著者紹介

大澤遼可(おおさわ はるか)
 
2016年より1年間、ミュンヘン大学に交換留学。
2022年九州大学人文科学府博士後期課程修了(独文学専攻)。
現在、九州大学助教。 博士(文学、九州大学)。

学術図書刊行助成

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