古典インドの議論学 ニヤーヤ学派と仏教徒との論争

シリーズ名
九州大学人文学叢書 20
著者名
須藤龍真
価格
定価 6,300円(税別)
ISBN
978-4-7985-0329-5
仕様
A5判 上製 530頁 C3310
発行年
2022年3月
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内容紹介

中世インドの思想家たちによる自由闊達な議論はインド思想史の発展を促した。インドにおける議論学の歴史は古代ギリシャから続く西洋の議論学の歴史に匹敵する。連綿と続く議論の伝統を下支えしたのは、古くより議論学の体系を有するニヤーヤ学派や仏教徒に他ならない。本書は、インドの知的伝統のダイナミズムを議論学の側面から考察するものである。

主資料として9〜10世紀にカシミールで活躍したニヤーヤ学派の学匠バッタジャヤンタによる哲学巨編『ニヤーヤマンジャリー(論理の花房)』を取り上げ、未だ翻訳研究すら存在しない「議論学章」について、原典写本を用いて解明する。インド議論学史を見通すための俯瞰的な視点を与えてくれる一次文献が限られている中で、博学才穎たるジャヤンタの視点はインド議論学史を見渡す一つの指標となりうる。

第Ⅰ部では、本書を構成する主要素ともいえる〈インド議論学〉〈ニヤーヤ学派〉〈バッタジャヤンタ〉〈『ニヤーヤマンジャリー』〉について概説した上で、関連する先行研究を通覧し、インド議論学研究における本書の位置付けを示す。第Ⅱ部では、仏教などのインド哲学諸派の見解を踏まえて、議論形態や論証の誤謬、討論術等のインド議論学・論理学上の諸概念に関する分析を行う。

具体的には、ニヤーヤ学派の根本経典『ニヤーヤスートラ』に教示される16原理中、〈議論形態及び討論術〉に関する7原理  論議・論諍・論詰・疑似的理由・曲解・詭弁的論駁・敗北の根拠  を順次取り上げ、『ニヤーヤマンジャリー』の記述を軸として、ヴァーツヤーヤナ、ウッディヨータカラ、ウダヤナ等のニヤーヤ学派の諸論師や仏教論理学派のダルマキールティなどの見解をもとに諸概念の変遷を跡付ける。

目次

 緒 言
 凡 例

   第Ⅰ部 序 論
 
第1章 バッタジャヤンタ著『ニヤーヤマンジャリー』概説
 
 1.1 「ニヤーヤ」(nyāya)とは何か
 1.2 ニヤーヤ学派の16原理
 1.3 バッタジャヤンタ(Bhaṭṭajayanta)について
 1.4 『ニヤーヤマンジャリー』(Nyāyamañjarī )の内容構成
 1.5 『ニヤーヤマンジャリー』の資料状況
 
第2章 先行研究概観
 
 2.1 バッタジャヤンタ著『ニヤーヤマンジャリー』研究通覧
 2.2 インド議論学に関する先行研究
 
第3章 本書の位置付け
 
 3.1 問題の所在
 3.2 研究目的及び研究方法

   第Ⅱ部 思想史研究
 
第4章 『ニヤーヤマンジャリー』における議論学の位置付け
 
 4.1 議論学の本質
 4.2 議論学の必要性
 
第5章 3種の議論形態:論議・論諍・論詰
 
 5.1 3種の議論形態に共通する定義的特質
 5.2 論議の特殊性
 5.3 論議において承認される敗北の根拠
 5.4 論議における「浄化」
 5.5 論諍の特殊性
 5.6 議論における曲解・詭弁的論駁・敗北の根拠の意義
 5.7 論詰の特殊性
 
第6章 疑似的理由の構造
 
 6.1 ジャヤンタの推論定義
 6.2 正しい理由の条件と誤った理由の条件
 6.3 ジャヤンタの疑似的理由論の《形式上の整合性》
 6.4 ジャヤンタの疑似的理由論の《内容上の整合性》
 
第7章 第六の疑似的理由とは何か
 
 7.1 「引き起こさない理由」の概要
 7.2 「引き起こさない理由」概念の変遷
 7.3 「引き起こさない理由」と「わきにあるもの」について
 
第8章 レトリックと論証
 
 8.1 ニヤーヤ学派における「曲解」概念の変遷
 8.2 敗北の根拠としての曲解
 
第9章 詭弁的論駁論の諸相
 
 9.1 詭弁的論駁の基本的理解
 9.2 詭弁的論駁の再定義
 9.3 詭弁的論駁の対象の正誤を巡って
 9.4 詭弁的論駁の論証例の正当性
 9.5 種々の詭弁的論駁の区別
 
第10章 議論における勝敗規定
 
 10.1 敗北の根拠の定義を巡る問題
 10.2 敗北の根拠の下位区分について
 10.3 「無理解/無実行」を巡る諸問題
 10.4 「誤った理解」を巡る諸問題
 
終 章
 
 略号及び参考文献
 あとがき
 初出一覧
 索 引

著者紹介

須藤龍真(すどう りゅうしん)
2015年 九州大学文学部卒業
2017年 日本学術振興会特別研究員(DC1)
2020年 九州大学大学院人文科学府博士後期課程修了
2020年より 日本学術振興会特別研究員(PD)
博士(文学、九州大学)

学術図書刊行助成

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