ファミリー・ソーシャルワークの理論と技法社会構成主義的観点から

著者名
大下由美・小川全夫・加茂 陽 編
価格
定価 4,200 円 (税別)
ISBN
978-4-7985-0143-7
仕様
B5判 並製 296頁 C3036
発行年
2014年10月
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内容紹介

本書は,人と社会が差異の相互循環過程で生成するという生成的社会論を支援論の基礎理論とし,体系的な差異の生成技法とその効果の測定法を示すことを通して,新たなファミリー・ソーシャルワーク・モデルを提唱するものである。
児童・高齢者福祉,看護などの家族支援が重要視される諸分野において,洗練された実践とその効果測定法が示され,本モデルの有用性が明らかにされる。
ソーシャルワーク関連の研究者・臨床家のみならず,家族支援に携わるすべての人々が,本書から新しい次元の実践的知識を得られるだろう。

目次

はじめに
 
   第1部 理 論 編
 
第1章 新しいファミリー・ソーシャルワーク論の構築を目指して   「私」とケアの概念を軸に  
 
 はじめに
 I. 「私」と世界の生成論
 II. 人とものとが社会的物「として」生成する四肢構造
 III. 支援論としてのケア論の可能性
 IV. 新たなファミリー・ソーシャルワーク論の基本的枠組み
 ま と め
 
第2章 「私」によるソーシャルワーク論考
 
 はじめに
 I. 私について
 II. 「私」が立ち上がる過程と支援者の質問技法
 ま と め
 
第3章 社会の構造と力学
 
 I. ソーシャルワークにおけるシステムズ理論
 II. システム的社会理論による支援理論の構築
 III. 規則と世界構成実践の生成メカニズムの分析
 ま と め
 
第4章 差異生成論とソーシャルワーク
 
 はじめに
 I. 自己生成論と差異
 II. 社会の生成論
 III. 生成論的ソーシャルワークの基礎理論
 ま と め
 
第5章 日本における地域福祉の脱構築と再構築
 
 はじめに
 I. 従来の「地域」福祉研究法の吟味
 II. 農村における「限界集落」論と地域福祉
 III. 地域支援論の再考
 IV. 地域の社会問題の脱構築と再構築
 ま と め
 
   第2部 技法・測定論編
 
第6章 「私」によるケアと技法論
 
 はじめに
 I. 「私」によるケアの基礎理論
 II. ケアの相互生成過程
 III. 技法体系と変容手順
 ま と め
 
第7章 問題解決過程の効果測定論
 
 はじめに
 I. SRM における変容論と技法論の概略
 II. 変容手順と測定論
 ま と め
 
第8章 問題解決過程の効果測定の実際
 
 はじめに
 I. 事例の評定と変容計画
 II. 変容過程
 III. 支援の効果測定
 ま と め
 
第9章 支援モデルの展開   逆説的因果論から社会構成主義的生成論へ  
 
 はじめに
 I. 議論の方向性
 II. 逆説的支援法の基礎理論への批判的吟味
 III. 生成論的支援モデルの概略
 ま と め
 
   第3部 事 例 編
 
第10章 ファミリー・ソーシャルワーカーの役割と里親家族支援論
 
 はじめに
 I. 支援論の基本的枠組み
 II. 変 容 論
 III. 変容技法
 IV. 事例分析
 ま と め
 
第11章 被虐待児童と里親家族への支援論   家族構造変容論の視点から  
 
 はじめに
 I. 理論の概略
 II. 事例分析
 ま と め
 
第12章 家族エンパワーメントと退院支援
 
 はじめに
 I. ニーズと資源の相互生成とエンパワーメント
 II. ディスエンパワーメントと排除の力学
 III. エンパワーメントの方法論:問題維持の社会システムの変容論
 IV. 事例分析
 ま と め
 
第13章 介護実践におけるポジティブ・リフレーミングの有用性
 
 はじめに
 I. 介護支援における基礎理論
 II. 介護実践事例の考察
 III. 考  察
 ま と め
 
第14章 高齢者とその家族への支援論   コミュニケーション理論の視点から  
 
 はじめに
 I. 高齢者家族支援論の課題
 II. 基本的概念整備
 III. 高齢者と家族への支援モデルの枠組み
 IV. 事例分析
 ま と め
 
第15章 高齢者支援論の再考   存在論的視点から  
 
 はじめに
 I. 基礎理論
 II. 「気遣い」(ケア)の支援技法
 III. 事例分析
 ま と め
 
用語解説
 
人物解説
 
索  引

著者紹介

<編 者>
大下由美(おおした ゆみ)
県立広島大学保健福祉学部人間福祉学科 准教授
専門:家族支援論
業績:短期の現実構成法の効果測定,2013『家族心理学研究』(共著)
A New Intervention Skills and Measurement Methods for Clinical Social Work Practice, 2014, JJSW(共著),
Reconstructing Meaningful Life Worlds : A New Approach to Social Work Practice, 2011, iUniverse( 共編著),
『サポート・ネットワークの臨床論』2010,世界思想社(単著),
『支援論の現在― 保健福祉領域の視座から― 』2008,世界思想社(単著), 他多数。
 
小川全夫(おがわ たけお)
特定非営利活動法人アジアン・エイジング・ビジネスセンター理事長
熊本学園大学社会福祉研究所特別研究員
公益財団法人福岡アジア都市研究所特別研究員
業績:『老いる東アジアへの取り組み:相互理解と連携の拠点形成を』,2010,九州大学出版会(編著),
「超高齢社会にむけた地域生活基盤構築:産学公民協働に対する中間支援の必要性」2013,『都市政策
研究』第15 号,31-41,
『2030 年代の機能統合型コミュニティ形成の中間支援機能』,2013,福岡アジア都市研究,他多数。
 
加茂 陽(かも きよし)
県立広島大学名誉教授
専門:家族臨床社会学
業績:Reconstructing Meaningful Life Worlds:A New Approach to Social Work Practice, 2011, iUniverse(共編著),
Multiple-reflection Model of Social Work Practice, 2104, JJSW(共著),
A New Intervention Skills and Measurement Methods for Clinical Social Work Practice, 2014, JJSW(共著),
他多数。

<執 筆 者>
岡本晴美(おかもと はるみ)
広島国際大学 医療福祉学部 医療福祉学科 准教授
専門:ソーシャルワーク実践理論,社会福祉専門職の人材育成
業績:Multiple-reflection Model of Social Work Practice, 2014, JJSW(共著),
「“ 資源生成論” に基づくソーシャルワーク実践?資源論の新たな枠組みの提案?」 2014,『社会福祉士』21,
『ソーシャルワーカー論?「かかわり続ける専門職」のアイデンティティ? 』,2012,ミネルヴァ書房(共著)
 
神成成子(かんなり しげこ)
医療法人 翠星会松田病院 看護師
専門:精神科病院における家族看護
 
執行良子(しぎょう りょうこ)
医療法人社団更生会草津病院 看護師
専門:精神科病院における家族看護
 
田高寛士(ただか ひろし)
医療法人比治山病院 地域生活支援センターふれあい 精神保健福祉士
専門:精神科ソーシャルワーク
 
中尾恵子(なかお けいこ)
社会福祉法人メインストリーム 特別養護老人ホーム エバーグリーンホーム
生活相談員兼介護支援専門員
専門:高齢者ケア論
 
西田知世(にしだ ともよ)
社会福祉法人 広島市社会福祉協議会 
専門:高齢者支援論
 
藤原恵美(ふじわら えみ)
株式会社広島福祉サービス広島市南居宅介護支援事業所 主任介護支援専門員
専門:高齢者支援論
 
前田佳代(まえだ かよ)
児童養護施設 広島修道院きずなの家 主任児童指導員
専門:児童養護(援助方法論)
業績:「児童養護施設における処遇計画の展開」2001,『日本の福祉』16,
「児童養護施設における対応が困難な事例への対処法の構築:事例分析」2001,『社会福祉学』(共著),
『日常性とソーシャルワーク』2003,世界思想社(共著),
『被虐待児童への支援論を学ぶ人のために』2006,世界思想社(共著),
「家族を支える力をつくりだす」2011,『子どもと福祉』Vol.4,他多数。
 
山岸文惠(やまぎし ふみえ)
中国地方更生保護委員会 委員
業績:A New Perspective on Helping Principles. In Y. Oshita and K. Kamo (eds.). Reconstructing Meaningful Life Worlds: A New Approach to Social Work Practice. 2011, iUniverse
 
山田修三(やまだ しゅうぞう)
安田女子大学・安田女子短期大学 非常勤講師
専門:児童ソーシャルワーク論,児童家庭福祉学,障害児保育

書評

 日本社会福祉学会「社会福祉学」 第56巻1号 「文献紹介」より    評者:林 浩康(日本女子大学)
 
 本書の執筆動機について著者らは,国内のソーシャルワーク論には,法的手続きに従う資源提供論以外の対抗論が存在しないこと,そうしたソーシャルワークにおける社会理論と技法の不在への問題意識からファミリー・ソーシャルワークの体系化を試みたと述べている.しかしながらこうした根源的な問題を離れ,本書では持論に基づいたファミリー・ソーシャルワーク論の展開に焦点化されている.1970年代以降のシステムズ理論,その後のポストモダニズムの支援論について批判的考察を加え,新たな家族支援モデルを提示している.2011年に出版された編者らによる Reconstructing Meaningful Life Worlds; A New Approach to Social Work Practice で示唆された支援の基礎理論,技法論,測定論についての考察を深め,支援の理論と技法の体系化を本書で試みている.
 本書は,人と社会が差異の相互循環過程で生成するという生成的社会論を支援論の基礎理論とし,体系的な差異の生成技法とその効果の測定法を示すことを通して,新たなファミリー・ソーシャルワーク・モデルを提唱するものである.「単純に外部より,問題解決の理路を示したり,クライアントに資源を導入し適応の処方を提示したりする方法は,『私』の言明としての訴えへの解決力をもたない.クライアントの訴えの解決法は,『私』の宣言であるクライアントの問題定義を,彼/彼女自らが差異化する作業に取り組むことである.……自らの問題定義への差異化作業は,クライアントの『私』のケア実践であり,新たな世界構成の作業である(11頁)」という認識に基づき,子どもや高齢者福祉,看護などの,家族支援が重要視される諸分野において,その実践方法と効果測定法が示され,本モデルの有用性が明らかにされている.
 構成は以下のようになっている.第1部 理論編(新しいファミリー・ソーシャルワーク論の構築を目指して―「私」とケアの概念を軸に;「私」によるソーシャルワーク論考;社会の構造と力学;差異生成論とソーシャルワーク;日本における地域福祉の脱構築と再構築),第2部 技法・測定論編(「私」によるケアと技法論;問題解決過程の効果測定論;問題解決過程の効果測定の実際;支援モデルの展開―逆説的因果論から社会構成主義的生成論へ),第3部 事例編(ファミリー・ソーシャルワーカーの役割と里親家族支援論;被虐待児童と里親家族への支援論―家族構造変容論の視点から;家族エンパワーメントと退院支援;介護実践におけるポジティブ・リフレーミングの有用性;高齢者とその家族への支援論―コミュニケーション理論の視点から;高齢者支援論の再考―存在論的視点ら)から構成されている.
 本書の提示するモデルは,ハイデガーのケア(Sorge)概念,この概念を社会的文脈で再構築した廣松渉の「人とものの四肢的構造論」で補強し,さらにベールズ(Bales, R. E.)やパーソンズ(Persons,T.)の成果を活用し,変容力学の測定論を示したとしている.そうした難解な理論を活用した論理展開が,多少読む者に難解さを感じさせる.ソーシャルワーク関連の研究者・臨床家のみならず,家族支援に携わるすべての人々が,本書から新しい次元の実践的知識は得られるだろうが,読破するには相当な根気を要するように思う.随所に実践のヒントになる内容は散見されるが,実践者に対してはさらなる平易な理論解説を要するように感じる.
 本書における疑問点としては,「ソーシャルワーク」に「ファミリー」を冠した著者らの見解を明確にする必要はないのか,また日本におけるこれまでの実践や理論を否定し,ミクロレベルの理論展開に基づき,発話内容や意識の変容に終始しているようにも感じられ,セラピーの一種として捉えられないか,といったことが挙げられる.家族の位置付けやソーシャルワーク論におけるこうしたミクロ実践の位置付けを論理付ける理論展開が必要なのではないだろうか.
 こうした疑問も感じられるが,本書は新たな理論を提示した挑戦的著作といえ,新たな知見を与えてくれる示唆に富む好著である.一読をお薦めしたい.

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