老いる経験の民族誌 南島で生きる〈トシヨリ〉の日常実践と物語

著者名
後藤晴子
価格
定価 4,180円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0196-3
仕様
A5判 上製 310頁 C3039
発行年
2017年2月
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内容紹介

人は誰でも老いてゆく   。南島で暮らす人びとの老いるという経験を、衰えゆく身体との対峙、人生の語り方、親しき他人や死者との付き合いのあり様を通して探る。「老い」と「死」の諸相をめぐるエイジング論の新地平。

目次

序  章 老いる経験の人類学のために
 
  1 はじめに
  2 本書の構成
 
第1章 エイジングをめぐる研究史
 
  1 はじめに
  2 高齢化社会とエイジング研究の歩み
   (1) 老年学の歩み
   (2) 社会学とエイジング
  3 文化人類学とフォークロアの視座
   (1) 小規模コミュニティと人類学
   (2) エイジングとの出会い
   (3) ケアと応答性
   (4) フォークロアと老人
  4 問題と課題
   (1) これまでの研究の問題点
   (2) 本研究の位置
 
第2章 経験を考える
 
  1 あなたの経験/わたしの経験
  2 経験を考える
   (1) 現実・経験・表現
   (2) 他者の可能性
   (3) 経験/ある経験
   (4) 個人的経験と感情
   (5) 経験と体験
   (6) 小括
  3 聞き書きの方法論
   (1)『忘れられた日本人』から
   (2) 現実とイメージ
   (3)「聞き書き」の可能性
 
第3章 南島の老いの諸相  調査地概要  
 
  1 はじめに
   (1) 沖縄と高齢化
   (2) 南島で島を考える
  2 つながりの基盤
   (1) 地縁と血縁
   (2)〈小字クンジョー〉
  3 宗教との関わり
   (1) 宗教的環境と〈ウマレダカイ〉人びと
   (2) 島の宗教的職能者
   (3) 家の祭祀と女性
  4 島で暮らすということ
   (1) 島の世間
   (2) 付き合いの作法
 
第4章 〈トシヨリ〉の席
 
  1 はじめに
   (1) おばあちゃんの遺言と軒下の〈オバァ〉
   (2) 近代化と老人
  2 長寿の文脈
   (1) 長寿の島?
   (2) 島の長寿者
   (3)〈トシヨリ〉と〈カジマヤー〉
  3 〈トシヨリ〉の席
   (1)〈オジィ〉と〈オバァ〉
   (2) 祭りと〈トシヨリ〉
   (3)〈トシヨリ〉と子ども
  4 〈トシヨリ〉と〈トシヨリ〉
   (1)「〈トシヨリ〉はいじめたら大変」
   (2)「家と畑しか行かんさ」
 
第5章 衰えゆく身体の処方箋
 
  1 衰えを考える
   (1) 巫女たちの衰え
   (2) “年を取る”ということ
  2 島の処方箋
   (1) 近代医療の導入
   (2) 民間療法と民間薬
   (3)〈ユタ〉半分、医者半分
  3 衰えに対峙する
   (1)「年には勝てん」
   (2)「年がいってから、こそこそしよったとよ」
   (3)「八五歳までは大丈夫」
  4 差し控えの作法
   (1)「年を取ったら病気するのは当たり前」
   (2) 差し控えとそなえ
   (3) 衰えゆく経験
 
第6章 人生の物語
 
  1 はじめに
   (1) 歌わない巫女の物語から
   (2) 問題の所在
   (3) 語りをめぐる問題
  2 人生の物語
   (1) 歌う巫女/歌わない寡婦
   (2) 寝たきりの〈カジマヤー〉
   (3) 島の楽しみ
   (4) 島に通う
  3 選択の基盤
   (1) 情緒的なつながり
   (2) 親密な他者
   (3) 宗教的なるものとの交流
   (4) 島への愛着
  4 人生の岐路を考える
 
第7章 「死にがい」のありか
 
  1 死者の匂い
  2 老いと死
   (1) 墓のある風景
   (2) 死の見える/見えない社会
  3 死をめぐる文化的・社会的装置
   (1) 墓と位牌
   (2) 死者儀礼と祖先祭祀
  4 死者との継続する絆
   (1) 死後の世界〈グソー〉との関わり
   (2) 死者との付き合い方
   (3)「継続する絆」
  5 死にがいと生きがい
   (1) 生きがいと高齢者
   (2)「死にがい付与システム」
 
第8章 次世代のまなざし
 
  1 老いの入口に立つ
   (1) 問題の所在
   (2) 中年と壮年
   (3)「戦無派」の時代
  2 わたしの「これから」
   (1)「子どもも大きくなったし」
   (2)「そういう時期が来ている」
  3 彼らとわたし
   (1)「年は取りたくないわね」
   (2)「帰りそびれて」
   (3)「間違いかどうかわからんさ」
   (4)「恨まれてもイヤさ」
  4 長生きにそなえる
   (1) そなえの定義
   (2) 島とのつながり
   (3) 現世代と比べて
 
第9章 考察  縁と運  
 
  1 印づけられた経験
   (1) 老いる経験の諸相
   (2)「沖縄離島」の老いる思想
   (3) 世代的な経験
  2 縁と運
   (1) 縁
   (2) 運
   (3) 老いる経験とは何だったのか
  3 課 題
 
終  章 補論  北部九州の「老いる経験」  
 
  1 ある日の風景
   (1) 北部九州の事例から
   (2) 問題の所在
  2 「信心深い」人びと   福岡県篠栗町・真言宗寺院  
   (1) 篠栗町と篠栗霊場
   (2) 寺に通う
  3 隠居する人びと  長崎県対馬の村落  
   (1) 対馬と隠居慣行
   (2) 慣習のなかで生きる
  4 老いることの可能性
   (1) 与え手として
   (2) 慣習のなかで生きるということ
   (3) 地域を越えて
 
 あとがき・謝辞
 参考文献
 人名索引
 事項索引

著者紹介

後藤晴子(ごとう はるこ)
 
福岡大学人文学部卒業。九州大学大学院人間環境学府共生社会システム論
博士後期課程単位取得退学。課程博士(人間環境学、九州大学)。
 
主な論文に、
「民俗の思考法  『とわかっている、でもやはり』を端緒に  
 (『日本民俗学』260号、pp. 35-65、2009年)、
「生活実践としての仏教  高齢女性と寺院の親密性に関する一考察  
(『宗教研究』360号、pp. 115-138、2009年)
など。

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