噴火のこだま[新装版]ピナトゥボ・アエタの被災と新生をめぐる文化・開発・NGO

著者名
清水 展
価格
定価 4,800 円 (税別)
ISBN
978-4-7985-0312-7
仕様
A5判 並製 392頁 C3039
発行年
2021年7月
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内容紹介

1991年6月のフィリピン・ピナトゥボ山の大噴火は、20世紀最大級の規模であった。もっとも深刻な被害を受けたのは、ピナトゥボ山麓一帯で移動焼畑農耕を生業として暮らしていた先住民アエタであった。本書は、1970年代後半から現地でフィールドワーク調査を始め、アエタ社会に関する研究を続けてきた著者が、噴火後10年の時点において、被災者たちの生活再建の歩みと、彼らを支援しようとしたNGOの関与についての記録をまとめたものである。

とりわけ研究の視点を、噴火を契機とする、アエタの人々が先住民としての自覚を強め、民族として新生していった過程に置いた点に本書の特徴がある。新装版に際しては、噴火後30年に当たり、生活再建に取り組んだアエタ社会の最新の状況を増補する。

ピナトゥボ火山の大噴火の後、阪神淡路大震災や東日本大震災をはじめとする巨大な自然災害を経験し、さらに巨大な震災の発生が近づいている今日の日本において、被災者の視点に立った真の復興となる「創造的復興」を考えるうえで読み継がれるべき書。

目次

第1章 序  論
 
第2章 ピナトゥボ大噴火とアエタ民族の危機  運動の言説をめぐる内省  
 
  1 噴火の意味づけ
  2  「民族存亡の危機」を言う背景
  3  「民族の存亡」とは何か
  4 文化の保持のための支援
 
第3章 他者を表象すること
       フィールドワーク・民族誌・コミットメント  
 
  1 未開のユートピアの捏造?
  2 文化批判の隘路
  3 均質な文化という問題
  4 民族誌あるいは文化を書くこと
  5  「伝統の創造」論の陥穽あるいは反駁するネイティブ
 
第4章 噴火と想起  彼らの語りに耳を傾ける  
 
  1 山に戻って噴火で死んだ老人
  2 避難の下山を拒み、洞窟で焼け死んだ103人の村人
  3 洞窟で生き残った男
  4 噴火の原因と避難生活
  5 噴火とアエタの自覚
  6 アエタと結婚した平地民女性の想い出と被災体験
  7 アエタの歴史意識
 
第5章 開発介入の理念と歴史  人類学そしてピナトゥボの現場から  
 
  1 開発主義の歴史と現在
  2 人類学と開発
  3 開発への巻き込まれ・抵抗と先住民の主体形成
  4  「石器時代人」タサダイのジレンマ
  5 ピナトゥボ・アエタにおける開発の受容
 
第6章 被災の苦難を超えて  生存戦略と民族の新生  
 
  1 彼(女)らの選択
  2 マニラで物乞いをするアエタたち
  3 南西麓アエタの再生と自立への模索
  4 西麓における組織化の推進
  5  「文化」の自覚とエンパワーメント
 
第7章 自立の模索・先住民の自覚  リーダーたちの声  
 
  1 アエタ開発協会(ADA)委員長の生い立ちと想起
  2 アエタの自覚と自立への歩み
  3 村に留まり自主再建したアエタ・グループ
  4 ジャングル生存訓練教官のアエタ意識と誇り
  5 中部ルソン・アエタ連盟の設立とエンパワーメント
  6 鉱山法(1995)と先住民権利法(1997)、そして脱植民地化の闘い
 
第8章 結  論  民族の新生と文化・開発・NGO  
 
 文 献
 
 あとがき
 
 新装版あとがき
 噴火から30年  再び、変化と持続をめぐって  
  1 NGOワーカーから同伴レポーターへ
  2 変化と持続、そして創造的復興
  3 産みの苦しみとしての自然災害
  4 アエタ社会のレジリエンス
 
 索 引

著者紹介

清水 展(しみず ひろむ)   
1974年 東京大学教養学部教養学科卒業  
1979年 東京大学大学院社会学研究科博士課程中退
1979年 東京大学助手(教養学部・東洋文化研究所)
1985年 九州大学助教授(教養部)
1994年 九州大学教授(大学院比較社会文化研究院)
2006年 京都大学教授(東南アジア研究所)
2010年4月〜2014年3月 同研究所長
2017年〜 関西大学政策創造学部特任教授
2017年 第107回学士院賞受賞
専門:文化人類学、東南アジア研究
社会学博士(東京大学)

学術図書刊行助成

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